認知リソースの重要性|意志のムダ遣いで起きる5つの問題

皆さんは日頃から脳のコンディションに気を使って生活しているでしょうか?
体調や疲労などといった身体のコンディションに比べると、脳のコンディションは軽視されがちです。
というより脳のコンディションに差があること自体そもそも認識してる人が少ないかもしれません。

人間の身体は脳を運ぶための乗り物と言う人もいます。
つまり脳のコンディションが悪いまま活動していることは、積荷も載せずに走ってるトラックや乗客を乗せてないバスと同じということです。
このページでは、脳のパフォーマンスを測る指標、そしてコンディションの低下がもたらす様々な問題について解説します。

脳にも体力がある?

脳には認知リソース・ウィルパワー(意志の力)と呼ばれる体力のようなものがあります。
睡眠をとる主な目的はこの認知リソースを回復することであり、認知リソースが十分に回復した状態が脳のコンディションが良い状態です。

この認知リソースは日常の様々な思考や判断によって消費され、少なくなるとそれらを処理する能力が下がってしまいます。
思考や判断などと言うと、勉強やビジネスなどの重大な決断を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかしもっと些末なこと、例えばランチに何を食べるか、靴下を何色にするかといった思考でも消耗してしまうのです。

認知リソースを消耗する大きさのことを認知負荷と言い、深い思考を要する判断ほど認知負荷が大きくなります。
リソースが尽きかけてから、重大な決断は出来ないということです。
そのためスケジュールの立て方と同じで、優先順位を立てて大きな石から置いていかなければいけません。
無くてもいい小さな石を先に撒いてしまっては大事なシーンで正しい判断を下せなくなってしまいます。

別にそんな重大な決断なんて自分にはないよ~

このように思う人もいるかもしれません。
しかし既に解説したとおり認知リソースは様々な脳の活動に必要なもので、これをムダに使ってしまうことで色んな場面で問題が生じることになります。
大きく分けると以下の5つです。

①お金を失う
②集中力が低下する 
③好ましい習慣が続かなくなる
④感情のコントロールが下手になる
⑤疲れやすくなる

①お金を失う

認知リソースが不足すると正常な思考力が無くなってしまいます。
思考が低下すれば仕事でもミスは増えるし、勉強の内容もなかなか理解できません。
ただ、これらの問題の中でも深刻なのがお金の問題です。

本当にお金を賢く使おうとすると慎重な判断を要します。
グレードと値段を比較したり、最安のショップを探したり、中古やレンタルという手段考えたり、そもそも必要かを問い直したりと様々です。
面倒に感じるかもしれませんが、支出のコントロールを行う上では欠かせません。

そして、これだけの判断を正常に行うためには、認知リソースに十分な余力が必要になります。
しかし多くの人が日常的に認知リソースを浪費してしまった結果、雑な判断を下してしまっているのが現状です。

そしてお金に関しては1回ミスが新たなミスを生んでいきます
それが欠乏マインドのワナと言われるものです。
お金の決断で失敗し、お金が不足するとそのことが頭から離れなくなり、その思考・悩みが常に他の思考を圧迫するようになります。
こうした状態では人間の心理を逆手にとったマーケティングのトリックにも引っ掛かりやすく、さらにお金を失ってしまうのです。

②集中力の低下

勉強や読書に集中できないと悩んでいる人も多いと思います。
人間はもともと何か1つの対象に集中し続けるように出来ていません。
自然界においては目の前の何かに過度に集中することは、危険の察知が遅れて命を落とす危険があったからです。

そのため何かに集中しようとすることには相当な意識を要します。
現代はスマホを中心にして膨大な量の情報が飛び交っていて、認知リソースを消耗しやすい環境です。
つまり現代人の集中力の無さもまた認知リソースのムダ遣いが原因と言えます。

勉強や仕事に集中できないだけなら所詮は本人の問題です。
しかし注意散漫になりやすい人が車を運転して事故を起こすようなことがあれば、本人だけの問題には止まりません。
周囲の建物や対向車、スマホなどのわき見運転が原因で多数の事故が発生しています。

なお認知リソースの重要性については集中力について解説したページでも解説してるので、参考にしてください。

③習慣の継続が困難になる

ダイエットや貯金、禁煙や早起きなど、好ましいと言われる行動習慣を身に付けようとして挫折した経験がある人は多いでしょう。
これにも認知リソースが関係しているのです。

脳は非常に怠け者で出来るだけ認知リソースを消費するのを避けようとします。
普通に生きているだけでも脳が使うエネルギーは基礎代謝の2割を占めているので当然と言えば当然のことです。

あんまり使い過ぎたらエネルギー切れで倒れちゃうかもしれないからね

新しい行動というのは、歯磨きのような習慣と違って自動操縦が出来ないため、非常に多くの認知リソースを消費します。
まさに脳が嫌がることです。
認知リソースに余力があれば認知負荷が多少高くても脳も大目に見てくれますが、認知リソースが枯渇して余裕がなくなった途端に追い出されます
ストレスでキレ食いをしてしまうのはまさにこの典型的な現象です。

以下のページで解説してる習慣化のテクニックを活用することも必要ですが、認知リソースをムダ遣いしないこともまた重要です。

④感情のコントロールが難しくなる

感情、特に不安や怒りといった負の感情は認知負荷が高くなります。
放っておくとネガティブな方向に感情を拡大させやすい性質を持っているからです。
これもまた自然界を生き抜く上では必要な性質でした。
恐怖を感じて警戒心を高められないと敵に襲われる可能性が高くなります。
怒りの感情が強くならないと敵が自分のテリトリーに侵入しても戦えません。
感情とは人間以外の動物にも共通する非常に原始的なシステムですが、危険の少ない現代ではデメリットの方が大きいです。

負の感情が発生すると、膨張していく感情を抑えるために認知リソースが大きく削られます。
このとき認知リソースが不十分だと感情のコントロールが上手くいきません。
そこで大きくなったストレスに反応して分泌されるのが、ストレスホルモンで有名なコルチゾールです。
実はこのコルチゾールに晒され続けると、感情を制御する海馬や前頭葉の脳細胞が萎縮してしまうと言われています。
つまり認知リソースに負荷をかけるほど、感情をコントロールするのに必要な認知リソースの総量が削られてしまうという悪循環になるということです。

⑤疲れる

疲労と言うと身体の疲労を思い浮かべる人が多いと思います。
確かに筋肉などの肉大抵な疲労もあるにはありますが、疲労の多くは脳が感じさせているものです。

すごい気を遣う交渉や、大変なプレゼンが終わった後のことを思い出してもらうと分かりやすいと思います。
特に身体を動かしたわけでもないのに、全身がとんでもなく重く感じたはずです。
このとき実際に負荷がかかっていたのは脳であり、消耗したのは体力ではなく認知リソースです。

また脳は身体が壊れないように本当の限界まで体力を使わせないようにリミッターを設定しています。
「もう全く力が入らない」となるほどハードにトレーニングで追い込んでもらった後、電気で筋肉を刺激するとまだまだ収縮するという現象は有名です。
つまりぼくたちが身体の疲労と認識してるもののほとんどが、実際には脳の疲労だと言えます。

日頃から認知リソースを浪費し、回復が不十分な生活を送ってる人は常に脳に疲労を感じさせられてしまってるということです。
最近は「抜けない疲れの原因は副腎にあり」などとマイナーな臓器の不調が慢性疲労の原因だとする書籍が多くあります。
もちろん現代人の乱れた食事・生活習慣ではその可能性もあるでしょう。
しかし脳の疲労をしっかり取り除けていないことも慢性疲労の原因の1つではないか、というのがぼくの見立てです。

まとめ

認知リソースの重要性と、その不足によって起きる問題について解説しました。
ここで紹介した内容は以下の5点です。

①お金を失う:買い物の失敗により欠乏マインドに支配される悪循環
②集中力の低下:物事に集中するには十分な量の認知リソースが必要
③習慣化の障害になる:認知負荷の大きい新しい行動はリソースが不足するとはじき出される
④感情の制御ができなくなる:感情が認知リソースを圧迫し、脳の萎縮を起こす
⑤疲労の慢性化:疲労は脳が感じさせるもの。認知リソースの不足は疲労感に繋がる

冒頭でも解説したとおり、人間の身体は脳を運ぶ乗り物と言われるほど脳は重要で様々なことを一手に処理しています。
つまりその体力をしっかり回復し、有効にリソースを使ってあげなければ様々なところに不具合が出てくるわけです。
認知リソースを減らさず、有効に活用する方法についてはこちらのページで解説しています。

様々なポイントを紹介してますが、全てを実践する必要はありません。
認知リソースとの付き合い方の大枠を押さえた上で、自分の生活で実践できそうなことからやってみてください。
てなとこで。