頭が悪いのは思考のムダ遣いが原因?|認知リソースを有効活用するテクニックと注意点
普段のビジネスシーンやコミュニケーション、勉強中に「なんか頭がボヤっと霧がかかったような感じがする」「なんとなく頭が重くて働きが鈍い」という経験はないでしょうか?
すぐ度忘れしてしまったり、集中力が続かないなんて悩みなら誰しもあると思います。
またストレスでやけ食いしたりして、ダイエットが続かないなんてのもあるあるです。
このように多様な問題の根底が実はたった1つの原因で説明できます。
それこそが認知リソースという概念です。
認知リソースの重要性と、その不足がもたらす問題点についてはこちらのページで解説しました。
認知リソースは上手く配分しなければいけません。
また身体の体力と同様に脳の体力も適切な方法を用いれば回復することが可能です。
このページでは認知リソースを有効に活用し、生産性・効率性を上げるために出来ること、テクニック、日常の注意点について解説します。
紹介する内容は以下のとおりです。
①認知リソースの多い時間 ②モノタスク ③記憶ではなく記録 ④整理整頓 ⑤判断を減らす ⑥感情のマネジメント ⑦回復する ⑧自動操縦 ⑨増やす
①朝が勝負
認知リソースを回復する一番の方法は身体の体力と同じで睡眠です。
つまり1日の中で最も認知リソースの残量が多いのは起きた直後ということになります。
そして一般的には起きてから4時間以内が最も脳のパフォーマンスが高い時間と言われてるので、この4時間が勝負です。
そんなに認知リソースって持続しないの?
人間は起きた瞬間から多量の情報に晒されるので大小様々な判断や決断、思考で想像以上に認知リソースを消耗しています。
現代は情報化社会などと言われますが、この認知リソースの消耗はSNSやネットで情報を浴びるからではありません。
気温や服装、朝ご飯は何にするか、荷物の準備など日常生活に小さな決断場面が散在してるからです。
もちろん朝からベッドでSNSやメールチェックなどをしてれば、それも認知リソースを削る原因になります。
決断疲れなんて言葉を最近ではよく聞きますが、その最大の原因がこうしたSNSなどでのムダ遣いにあることは確かでしょう。
こうした緊急でも重要でもなりタスクは頭の働きにくい午後に回し、優先順位の高いタスクを午前に行うことが重要です。
もちろん認知リソースの回復も適切な睡眠あってこそです。
睡眠の重要性は認知リソースの回復にとどまらないのでしっかり押さえておきましょう。
②マルチタスク厳禁
マルチタスキングなんて言うといかにもデキるビジネスマンって感じですが、実は真逆です。
デキる人ほどマルチタスクをしません。
それはマルチタスクが頭の働きを効率的に落とす、非常に認知負荷の高い行為だからです。
マルチタスクは「同時に複数の仕事を処理する」と考えられがちですが、実際にはタスクの間を高速で行ったり来たりしています。
処理に使われる脳の領域はワーキングメモリと言われ、これは記憶を貯蔵しておく領域とは異なります。
人間の記憶容量は非常に膨大である一方、ワーキングメモリは非常に小さいようです。
記憶は物流倉庫、ワーキングメモリは小さな作業机って考えると分かりやすいかな
作業机が狭いので同時に複数の仕事の資料を拡げることはできません。
なのでマルチタスクをするためには、一旦机を片付けてからもう1つの仕事を机上に拡げることになります。
マルチタスクとはこうした作業を高速で繰り返すことなので、疲れるのも当然です。
マルチタスクをするとIQがモノタスクの時より10前後低下するという研究もあり、この効果はマリファナ以上だとか。
音楽を聴きながらジョギングなどのように認知負荷(机の使用スペース)が小さいものなら両立できます。
しかしこんな状況でも車が角から急に飛び出して来たら恐らく瞬間的に音楽が聞こえなくなるはずです。
車を見た瞬間に「どっちに避けよう」「止まろうか」「危ないな!」などの判断や思考に認知リソースを奪われるからです。
これは極端な例ですが、同時に1つのことしか処理できないことは間違いありません。
ただ1つ目の前のタスクに集中できるように環境を整えましょう。
③単なる記憶にリソースを使わない
人間の脳には作業領域(ワーキングメモリ)と記憶領域の2つがあると解説しました。
ここで注意しなければいけないのは後者の記憶領域が担うのは長期記憶に移行したものだけということです。
一方で短期記憶は前者のワーキングメモリ上で処理されるので、作業スペースを占拠することになります。
例えば自分の携帯や自宅の電話番号は普段から「覚えておこう!」などと思ってなくても多くの人が空で言えるでしょう。
普段から使う番号は既に長期記憶になってるからです。しかし新しい電話番号を覚えるとなるとほとんどの人が頭の中で暗唱し続けるんじゃないでしょうか?
じゃないと簡単に零れ落ちちゃうからね
これがワーキングメモリを短期記憶が占拠し続ける状態です。そして暗唱し続けてる間は他のことほとんどは考えられませんし、非常に頭を使います。
しかしこんなことに認知リソースを使うのは非常にバカげたことです。
文字や紙などの記録する媒体が無かった時代なら未だしも、今は紙やペンどころかスマホやPCなど手軽にかつほぼ無限に記憶できるテクノロジーが発達しています。
だから思いついたこと、覚えておかなきゃいけないこと等はさっさとメモしてしまえば良いだけです。
メモのメリットは様々ありますが、中でもこの短期記憶という人間がやる必要のないタスクに貴重な認知リソースを割かなくて済むというのは非常に大きいと思います。
④整理整頓
既に軽く触れましたが、脳は非常に些細なことにも無意識のうちに判断や決断をして、認知リソースを消費しています。
それは家に置かれているモノなどに対しても同様です。
散らかった部屋に住んでる人は、多量のモノに認知リソースを消費してるため頭の働きが鈍くなります。
何かに集中したい時に環境を綺麗に整理整頓しておくことは基本ですが、それは視界に入ったモノに注意を奪われてしまうからです。
モノと目の前のタスクの間を意識が行ったり来たりする状態は、まさに2つ前の項でNGだとしたマルチタスクに他なりません。
マルチタスクの対象が同じくらい重要な決断や思考ならまだしも、単なるモノの散らかりなんかに奪われてるとしたら非常にムダです。
オフィスでも机上がスッキリしてる人は思考もスッキリしてることが多いですが、それも思考の浪費をしていないからと言えます。
これは正直なとこニワトリ卵だけどね
最近ミニマリズムが一種のブームのようになっていますが、思考だけでなくお金の観点でもミニマムに暮らすことにはメリットがあります。
この点についてはこちらのページで解説してるので、参考にしてください。
⑤判断・情報を削減する
Facebookのマークザッカーバーグ氏やアップルのスティーブジョブズ氏が毎日おなじ服しか着ないというのは有名な話。
「今日は何を着るか」といった判断はビジネスを重視する人にとっては非常に些末な問題です。
そんなことに貴重なリソースを奪われないように判断を自動化しています。
何を着るか、朝昼晩に何を食べるか(作るか)、次に何をするかなど、にカットできる判断は日常の中に意外とあるものです。
これらは全て事前のスケジュールやリマインダーで解決できます。
その他にも買い物にいつ行くかなどの判断も定期購入などを設定してしまえば削減することが可能でしょう。
意外なことに家事も認知リソースを消費するタスクと言われてるからね。
それが好きな人はさておき、メンドウにしか思ってない人は宅配ミールのような形でアウトソースするのもアリです。
無意識な判断や思考には気付きにくいですが、何か能動的な判断を自覚した時は「これをしない方法はないか」と考える習慣をつけることです。
ムダな判断を削減するための方法について詳しくは以下のページで解説しています。
⑥ストレスをマネジメントする
ストレスというのは認知リソースにとって非常に厄介な存在です。
まずストレスは認知負荷が高く、他の思考や自制心を圧迫します。
このことはダイエットや禁煙などの努力がストレスによって簡単にはじき出されてしまうことからも明らかです。
また偏桃体は発生したストレスを受けてさらにストレスを発生させるため、元の大きさからかなり膨張してしまいます。
そしてそうした暴走するストレス反応にブレーキをかける役割を果たすのが海馬、そして認知リソースを制御する前頭葉です。
ブレーキを繰り返すことでブレーキパッドが摩耗するように、ストレスへの対処が続くと海馬・前頭葉は消耗し、萎縮してしまいます。
ストレスを抑えるブレーキ機能が弱って暴走しやすくなる上に、前頭葉の萎縮によって認知リソースの総量も減ってしまうのです。
このようにストレスは二重の意味で認知リソースに悪影響なので、適切にマネジメント・処理しなければいけません。
ストレスの効果的な対処法については大小さまざま、こちらのページで解説しています。
複数のメソッドを紹介していますが、決して全部やろうとする必要はありません。
やりやすいものから取り入れてみてください。
ストレス対策の徹底でストレスを抱えてたら本末転倒だからね
⑦昼寝で回復
認知リソースは朝がピークでそこからは下り坂だと説明しました。
しかし落ちていく一方なのは仕方がないかと言うと案外そうでもありません。
完全な睡眠ほどの回復力はありませんが、短時間の昼寝を挟むことで思考のクリアさを多少取り戻すことが出来ます。
だから昼寝のことをパワーナップとも言うよ
しかし適切な時間に設定しないと認知リソースが回復しないどころか認知症のリスクを上げる可能性も示唆されているので、正しい方法を知りましょう。
昼寝というと未だに怠け者のような印象が持たれがちですが、午後も高いパフォーマンスを維持できる点で非常に重要です。
現に海外に限らず日本国内でも一部の優良企業では昼寝を推奨するようになっています。
今までは昼休憩の時間もおにぎりやカロリーメイト片手にパソコン作業してる社員が称賛されるような風潮がありました。
しかしこの実態は生産性が低いまま仕事をダラダラと長時間し続けてるだけです。
スマホで漫画やSNSをダラダラ見てるだけで休憩時間を浪費する社員なぞ論外でしょう。
これからは優れた企業ほど、昼はしっかり休んで午後から全力で働くというメリハリを持った働き方が推奨されるようになるはずです。
もちろん昼寝の時間は仕事の日に限らず休みの日にも取ることをオススメします。
⑧習慣と認知負荷
音楽を聴きながらのジョギングのようなマルチタスクは両立すると解説しました。
ジョギングは認知負荷が小さいですが、体重の載せ替えや関節の可動などを瞬時に判断するため実は非常に高度な処理を要します。
では何故ジョギングの認知負荷が小さいかと言うと習慣化された行動だからです。
行動や運動は習慣化されるとほぼ無意識にできるようになるため、認知負荷がかなり小さくなります。
「鍵をかけた記憶がない」と思って家に慌てて戻ると、ちゃんと閉まってるなんて経験は誰しもあるでしょう。
これは習慣化によってあまりに無意識に身体を動かしているせいで起きる現象です。
脳の消費エネルギーは基礎代謝の2割を占めるので、なるべくエネルギーを節約しようとします。
ダイエットなどの認知負荷が高い行動をはじき出そうとするのは正常な働きです。
なので日常的な活動やこれから追加したい新しい行動は習慣化して認知負荷を下げる必要があります。
行動の定着と認知リソースを有効活用するという両面から習慣化は重要ということです。
この方法についてはこちらのページで詳しく解説しています。
⑨認知リソースを増やすことも考える
たぶんオレ認知リソース少ないわ。終わったなー
諦めるのは未だ早い。実は認知リソースは増やせるよ。
有効に活用する方法について解説してきましたが、同時に認知リソースの総量を増やすことも考えましょう。
そのシンプルでよく知られた方法がマインドフルネスです。
マインドフルネスは脳の灰白質を大きくするという驚くべき結果をMRIで観測した研究もあり、あのGoogleが社内研修にも取り入れています。
盲目的な権威主義には反対ですが、この事実だけでもやる価値がありそうですよね。
マインドフルネスというと呼吸に注目する瞑想が有名ですが、実はこれに限りません。
食事や皿洗い、掃除などの日常の活動で目の前のタスクに注意深く取り組み観察することも立派なマインドフルネスです。
つまりマルチタスクを止めることもマインドフルネスということで、認知リソースを節約し、同時に増やすことにも繋がります。
呼吸瞑想が最も自分の注意の特性を自覚でき、メタ認知が上達する方法だと思うので、個人的にはこれがオススメです。
しかしそうした時間を取れないという人はマインドフルに1つのタスクに取り組むことから始めてみましょう。
まとめ
認知リソースの基本から有効活用する方法まで解説しました。
身体と同じく脳にも体力があり、上手く活用しなければ判断や思考のパフォーマンスは簡単に下がってしまいます。
一度この認知リソースの存在を知ると、日ごろどれだけ判断を下しているかを認識できるはずです。
気付いたところからムダを無くすようにしていきましょう。
紹介した内容をサラッとおさらいです。
①頭がクリアな朝を有効に使う
②マルチタスクを止める
③記憶せずすぐメモする
④整理整頓して目に入るモノを減らす
⑤判断を削減・自動化する
⑥負の感情に対処する
⑦適切な昼寝でリソースを回復
⑧習慣化であらゆる行動の認知負荷を下げる
⑨瞑想で認知リソースを鍛える
因みに当たり前のことですが、判断や決断を削減した代わりに何か高度な思考を行わなければいけません。
浮いた思考をゲームや漫画、テレビやSNS、YouTubeなどの受動メディアで浪費していたら単に脳が楽することになるだけで委縮・認知症リスクが高まってしまいます。
時間を買うなどもそうですが、浮いたリソースを何に使うのか。その目的をハッキリさせておくことも重要です。
てなとこで。
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