【収入は無関係】お金持ちが貧乏に転落する瞬間|自意識の変化がもたらす不幸

貧乏に転落するお金持ち

皆さんは収入を高くしたいと思ってるでしょうか?思ってますよね?
今のままで良いという人はいても、収入を今より減らしたいと考える人はいないと思います。
ましてや貧乏に転落したいなどと考える人はいないでしょう。

しかし収入を多くするほど生活に困っていくと聞いたらどうでしょうか?
収入が多い方が生活にゆとりがあるはずだろうと考えるのが当然ですが、この考えには1つ盲点があります。
それは収入がどんなに増えても使い道には困らないということ、つまり収入の増加には支出の増加がついてくるということです。

このページでは、収入が増加することで貧乏に転落してしまうメカニズムについて解説します。

1 もっとも貧乏な収入水準

皆さんが考える高収入な水準ってどれくらいでしょうか?
大体年収600万円から800万円くらい貰っていれば高収入の部類に入ると考える人が多いと思います。
しかし高収入だと言われる一方で、年収700万円前後が最も貧乏だと言われているいることは知っていますか?
税金や社会保障費のように収入に連動するコストの負担が増加する影響が大きいですが、高収入であるという自意識の変化にも問題があります。

皆さんは「お金持ち」と聞くとどんな想像をするでしょうか?
広い家に住み、高級車を所有し、贅沢な食事をし、休日は旅行やレジャーになどと充実した幸せな生活を何となく想像するでしょう。
このように「高収入になる=幸せになる」と漠然と思い描いてる人が多いと思います。

しかし幸福という観点では、単に「お金」というザックリとした指標で見るのではなく、もっと詳細に見なければいけません。
具体的には稼ぐ側面と使う側面に分けて考えるということです。

多くの人は稼ぐほど幸せになると考えていますが、実際には収入の増加による幸福度の上昇には上限があると言われています。
国によって多少のばらつきはありますが、日本の場合は700万円から800万円くらいです。
まさに高収入と言われる水準に達した時ということですね。

2 幸せを目指して貧乏になる

世間的に言われるお金持ちの水準に到達した時に多くの人が違和感を感じるはずです。
その違和感は高収入になることで幸せになれるという思い込みとのギャップから生じます。
さらに頑張って年収700万円から800万円、1,000万円と増やしていってもさほど幸福感は上がりません。
それは既に述べた通り、収入から得られる上限に達しているからです。

しかしお金持ちになれば幸福になれると多くの人が信じてるため、「幸福にならないとおかしい」と考え次なる行動に出ます。
それがお金を使うということです。
適切に使えればお金によって幸福を得ることが出来るのですが、多くの人は間違った使い方をしてしまいます。
それがモノを持つということで、これはお金持ちによく見られる考え方です。

物質主義ってやつね

しかしモノの購入によって得られる幸福度は人々が想像してるより高くありません。
しかもさして高くない買った瞬間の幸福度・満足度をピークにして、時間とともに喜びが低下していき長続きしないのです。
そのため幸福度を維持するためには支出を繰り返さなければいけなくなります。

3 軍拡競争でより貧乏に

物質主義の問題は主観的な幸福度が高まらないという点だけではありません。
物質主義に基づく消費というのは基本的に見栄や自慢などといった外からの評価を意識しての消費が多くなります。
つまり他人との比較によって相対的な幸福感を実感しようと考えているわけです。
近所の人より大きな家に住み、良い車に乗って、高級ブランドや高価な宝飾品をつけていれば自分は満たされていると思えるでしょう。

しかしこうした物質的な消費、地位財には落とし穴があります。
それは常に上には上がいるということです。
自分より下の人を探そうと階段に立ってしまったことで、自分も誰かの下であるということを実感してしまうということ。
より良いモノを、と階段を懸命に上りますが、上れども上れども常に自分より上に人がいます。
つまり物質的な充足、地位財で幸福度を測ろうすることは終わりのない軍拡競争であり、永遠に満たされることはありません。

それに気付かず闘い続けることでいつしか増えた収入を支出が上回ってしまいます。
そして幸福を求めてお金を使い続けた結果の収支の悪化が、最悪の循環を生んでしまうのです。

4 欠乏の悪循環

この収支の悪化した状態のことを欠乏状態といいます。
欠乏状態に陥った人は欠乏した対象、この場合はお金のことが頭から離れなくなってしまうのです。

人間の脳の作業領域(ワーキングメモリ)は非常に小さく、同時に扱える情報が一般的な人だと3つ、多くても5つと言われています。
欠乏状態にある人はその数少ないメモリの内の1つを常にお金のことで占拠されてしまうということです。
これでは正常な判断は出来ないので、ミスやど忘れが生じやすくなります。
また買い物のシーンでもよく考えずに高い買い物をしたり、不要なモノを買ったりしてしまいます。

思考のパフォーマンスが下がるだけでなく、時間選好も高まるので長期的な視点に立った合理的な判断もしにくくなります
最も分かりやすい例で言うと金策のためにローンやギャンブルといった手段に出てしまうことです。
貯金や投資などといった理想的な行動などには到底考えが及びません。

また健康よりも安く手に入る有害な加工食品で食卓を埋め、ダイエットや筋トレをしようなどとも思えなくなります。
そもそもワーキングメモリの圧迫で、仕事や家事の作業効率が著しく落ちるので、そもそもそうした時間的な余裕がないかもしれません。

こんなバカなこと自分はしないと思うけどな~

こうした状況は実際になってみないと想像できないモノですが、誰しも陥るリスクがある現象です。
同じ人であっても思考力や行動の合理性が別人のように変わることは研究でも明らかにされています。
これについては欠乏マインドをメインで扱ったこちらのページで解説しています。

まとめ

収入が高くなることで逆に貧乏に陥ってしまうメカニズムについて解説しました。

多くの人は収入が増えるほど幸福度は増すと信じていますが、実際には稼ぎで幸福度が上がることはそんなにありません。
理想と現実のギャップから、今度は「使えば幸せになれるだろう」と考えるようになります。
これが高所得者に物質主義者が多いことの説明です。
実際にはモノを買うことによっても想像してるほど幸せにはなれず、支出を繰り返すことになります。

またモノでの充足は他人との比較によって作り出す相対的な満足です。
自分より下の人しか見ないなら幸せかもしれませんが、世の中には必ず自分より上の人がいます。
そしてどこまで行ってもその闘いに終わりはありません。
完全勝利の前に間違いなく自分のリソースが枯渇してしまうはずです。無茶な背伸びは長続きしません。

そして収入を支出が上回ることでお金の心配が急速にクローズアップしてきます。
その心配が思考力を奪うため、買い物や仕事、金策など人生全体の判断を誤りやすくなります。
そうした失敗がさらに収支を悪化させるようになる。これが欠乏のワナと言われるものです。

「物質主義じゃ幸せにはなれない」と知ったところで、行動や認識を変えられる人はほとんどいないでしょう。
これを脱する確実な方法は収支の改善しかありません。
しかし収入を増やしてもパーキンソンの法則に従って支出が膨張してしまうため、あまり改善効果は望めないでしょう。
やるべき確実な対策は支出のコントロールです。その方法についてはこちらのページで解説しています。

準備中

てなとこで。

参考文献

センディル・ムッライタナン/エルダー・シャフィール(著) 早川書房