【良質な眠り】睡眠の質とは何か?|様々な要素と高める方法・工夫

睡眠は寝る時間の長さだけでなく、質も大事ということは認識されつつあります。
しかし睡眠の質を睡眠の深さだと勘違いしてる人が多いというのが現実です。
いくら大事と分かってても、それが実践できてなければ知らないのも同然。
せっかく睡眠のために多くの時間をかけても、それで十分な質が確保できてなければ半分近くがムダになってしまいます。
このページでは睡眠の質とは何か、そして質を高めるためにやるべき対策について解説します。

1 「睡眠の質=睡眠の深さ」ではない

冒頭でも解説しましたが、睡眠の質とは睡眠の深さのことではありません。
睡眠の目的は様々ありますが、重要な部分で言うと心身の疲労の回復、記憶の整理・定着などです。
これらの目的を達成するために必要な要素をしっかり押さえられてることが質の高い睡眠と言えます。

1-1 レム睡眠とノンレム睡眠

レム睡眠という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
レムとはRapid Eye Moving の略で、日本語では高速眼球運動と訳されます。
その名の通り、寝てる間に瞼の下で眼球が激しく動いている睡眠のフェーズです。
これに対して全く眼球の運動がない睡眠のフェーズをノンレム睡眠と言います。
レム睡眠は比較的浅い眠りで夢を見たり寝言を言ったりしますが、眠りが深いノンレム睡眠ではこうしたことはほとんど起きません。

寝言に返事するとボケるって言うけどあれは都市伝説かな?

必要な要素の説明が出揃ったところで、睡眠の質とは何か?という問いに対する答えを述べます。
質の高い睡眠、ズバリそれはレム睡眠とノンレム睡眠がバランスよく現れる睡眠のことです。
これはそれぞれの眠りのフェーズが持つ役割、目的が関係しています。

1-2 レム睡眠・ノンレム睡眠の役割とは?

まず比較的深いノンレム睡眠では、言語記憶(陳述記憶)すなわち勉強などの言語化できる知識・記憶の整理・定着が行われます。
ノンレム睡眠は脳内の整理・回復が目的と考えて良いでしょう。

一方の浅いレム睡眠では、非言語記憶(非陳述記憶)すなわち運動や音楽・芸術・工業のような身体の動きを伴う言語化できない技能の定着が行われます。
レム睡眠は身体で覚えたことの整理・回復が目的と考えて良いでしょう。

つまりレム睡眠・ノンレム睡眠の一方に偏った眠りというのはいずれかの記憶の整理・定着が行われず、十分なパフォーマンスを回復できないということです。
それぞれの特徴を以下にまとめておきます。

・レム睡眠:浅い眠り、寝言・寝相、非陳述記憶の整理(運動・技術)
・ノンレム睡眠:深い眠り、身体の動きなし、陳述記憶の整理(知識)

1-3 序盤の深さこそが重要

睡眠の質とは深さが全てではありませんが、重要なのは変わりありません。
正常な睡眠の場合、入眠後すぐにその日の中で最も深い睡眠が現れます。
睡眠の深さという点では、ここさえ押さえられてればOKと言っても過言じゃないくらい重要なポイントです。

それはここで十分に深い眠りに入ることで成長ホルモンの分泌が活性化するからです。
成長ホルモンと言うと、身長を伸ばしたり筋肉の発達を促すホルモンという認識が一般的でしょう。
しかしこれ以外にも体脂肪の代謝作用や皮膚や髪の毛などの細胞を修復する作用があると言われています。
そして最も重要なのが全身の疲労を回復する作用で、睡眠の質を高める目的そのものと言っても過言じゃありません。

因みに最近は筋肉の成長には直接関係ない説が主流っぽいよ

かつては22時から2時が成長ホルモン分泌のゴールデンタイムなどと言われていましたが、これは誤りです。
実際には時間帯は特に関係なく、入眠後2時間の最も深い局面で分泌が起こります。
大事なことは入眠後にしっかり深く眠れるように、寝起きする時間・リズムを守り、後で紹介するポイントに配慮することです。

2 睡眠の質を高める方法

身体は様々なものが、それぞれのリズムを持って変動しています。
睡眠は特にこれらの様々な要素のリズムに影響されているため、そのリズムを把握して従うことが不可欠です。
つまり昔から言われている「規則正しい生活を意識しなさい」というのは、実は睡眠にとって非常に重要なことなのです。

またその他にも幅広い生活習慣が睡眠の質を大きく左右するので、それらもまとめて紹介します。
睡眠の質を左右する要素は以下の5点です。
これらのどこに注意すべきなのか以降で順番に解説していきます。

①ホルモン分泌 ②体温 ③自律神経 ④食事 ⑤カフェイン

2-1 ホルモンの分泌リズム

睡眠に関係する主要なホルモンは以下の3つです。

・セロトニン ・メラトニン ・コルチゾール

まずは相互関係にあるセロトニンとメラトニンの2つから解説します。
セロトニンは朝に分泌され、日中の覚醒に関係するホルモンです。
そして夜が近付くにつれて増えてくるのが、眠りに関係するメラトニンで、これは先述のセロトニンから作られます。
つまりセロトニンを日中にしっかり分泌し、夜間に十分な量のメラトニンを体内で合成することが睡眠の質の向上に繋がるということです。
セロトニンの分泌を促し、夜間にメラトニンを減らさないための具体的な対策については別のページで詳しく解説します。

同時にコルチゾールと呼ばれるホルモンの分泌を抑えなければいけません。
コルチゾールは血圧や血糖値の上昇など、起床時の覚醒に関係するホルモンであり、入眠を阻害してしまいます。

そしてこのコルチゾールの分泌を抑える上で対処しなければいけないのが、ストレスです。
コルチゾールは別名ストレスホルモンとして知られており、ストレスを感じることで分泌が促進されてしまうからです。
ストレスで不眠になってしまう主な原因はこのコルチゾールの分泌にあります。
ストレスの対処法についても詳しくは別のページで解説してるので参考にしてください。

2-2 体温のコントロール

ホルモンと同じくらい睡眠の質を左右する大事な要素が体温です。
人間は恒温動物なので体温は一定と思われがちですが、実は1日を通して緩やかに上下しています。
体温が高い時には活動的になり、体温が下がってくると眠気を感じます。
昼過ぎに眠くなるのは食事の影響と考えられていますが、実際は体温の低下の影響が大きいです。
つまり就寝時間に向かって体温を下げていくことがスムーズな入眠、良質な睡眠に繋がるということです。

寝る前の体温コントロールについては知ってる人が多いと思いますが、実は夜になる前から気を付けていなければ十分な効果は発揮されません
多くの人がやりがちな体温コントロールのミスなども含めて、睡眠の質と体温の関係について解説しています。

2-3 自律神経の切り替え

次に重要になるのが自律神経のスムーズな切り替えです。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つから成り、どちらかが優位になるバランスを保っています。
交感神経は日中の活動や覚醒状態に作用し、副交感神経はリラックス状態や睡眠、消化において優位に働きます。
因みに自律神経のどちらかだけが活動し一方が完全にオフになるような一般的な理解は勘違いで、そんな明確な切り替えは起きません。
あくまでどちらかが優位に働いている状態です。

消化中に覚醒が止まるとしたら、食事の度に失神することになるからね

つまり就寝時間に向かっては自律神経の興奮を抑え、同時に副交感神経が優位になるようリラックスすることが重要になります。
それらを助ける方法なども含めて詳しくは別のページで解説します。
因みに自律神経の活動を抑える意味でも、神経を高ぶらせるストレスに対処することは重要です。

2-4 食事の配慮もけっこう重要

食事はこれまで紹介してきた睡眠の質に関わる大事なホルモンの分泌や体温のコントロール、そして自律神経のバランスと全てに影響します。
まずセロトニンの分泌を促す上では特に朝食で何を食べるかが重要です。
また食事をすることにより身体はエネルギーを使うので、体温も影響を受けます。

食事誘発性熱産生(DIT)ってやつね

そして食事の消化が始まると副交感神経が優位になるので、入眠に向けたリラックスを作る上でも重要です。

ただし食事の仕方に注意しなければ、これらの条件が整うどころか壊してしまうことにもなりかねません。
睡眠のためのサプリも色んな種類があるので、それも併せて食事から睡眠へのアプローチとしてこちらのページで解説しています。

2-5 カフェインとの適切な付き合い方

朝の覚醒や集中力のアップなど多くのビジネスパーソンがカフェインを重宝してることでしょう。
日中しっかり覚醒しておくことが夜間の睡眠の質に繋がるので、覚醒・睡眠のメリハリを作るという意味でも有効です。
しかしその覚醒作用のせいで夜間の睡眠に悪影響を及ぼしてしまうリスクもあります。
カフェインとはまさに諸刃の剣というべき代物です。

多くの人はカフェインがどういうメカニズムで眠気に作用するのかを知らないと思います。
またどれほど絶大な効果があるかも分かっていないため、摂取の方法を間違えて睡眠の質を悪化させてる人も多いです。
こうしたカフェインに関する基本的な事項から眠りを妨げない範囲で効果的に使うための方法までこちらのページで詳しく解説します。

まとめ

睡眠の質について解説しました。
深い睡眠ではなく、レム睡眠とノンレム睡眠のバランスが良い睡眠こそが良質な睡眠です。
そのためには非常に沢山のリズムに配慮し、それらを乱さないマネジメントが必要になります。

文字数が半端ないことになってしまうので、それぞれの要素については個別のページでの解説に譲りました。
知らなかったことや、知ってそうだけど何となくの感覚でやっていたものがあったら、それぞれのページを見てみてください。

多くの要素がありますが、全ての条件を整えようと躍起になる必要はありません
むしろそのような完璧主義的な思考はストレスのもとで、コルチゾールの分泌や交感神経の高まりによって睡眠の質を落としてしまいます。
しっかりコントロールできるところはして、毎回できるわけじゃないことは「出来たらラッキー」くらいのマインドで整えていきましょう。
てなとこで。