カフェインは睡眠の敵?|そのメカニズムと摂取上の注意点

カフェインには非常に多くの作用があり、その恩恵にあずかるために愛用してる人も多いでしょう。
しかし、その効果のメカニズムや付き合い方の注意点をほとんどの人が知らず、上手く活用できていません。
また睡眠の質を高める上でカフェインとの付き合い方は特に重要です。

寝る前はカフェインを取らない方が良いって話でしょ?

こういった認識の人が非常に多いですが、実はこの認識では不十分です。
このページでは、カフェインの効果と有効な活用方法、そして睡眠の質を高めるために重要なことについて解説します。
因みに睡眠の質を総合的に高める方法についてはこちらのページで解説しています。

1 カフェインの効果とそのメカニズム

カフェインの最も代表的な効果は眠気を防止する作用でしょう。
このよく知られた覚醒作用の他にも体脂肪の代謝を促進する作用や集中力を向上する作用などがあります。
そのため仕事や勉強のシーンだけでなく、筋トレでも重宝する人が多い成分です。

また適度なカフェインの摂取は疲労を回復する効果もあります。

ここでは主に覚醒作用について解説しますが、そもそもどういう仕組みでカフェインが眠気を予防するか知っているでしょうか?
まず人間は脳内にアデノシンという老廃物が発生し、それが受容体にくっつくことで眠気を感じます。

受容体はカギ穴みたいなものと考えればOK

そしてカフェインはこのアデノシンと非常に形状が似ているため、アデノシン受容体にくっつくことが出来ます。
つまりカフェインはアデノシンが受容体にくっつくのをブロックすることで眠気を予防しており、眠気を感じてからカフェインを摂ってもあまり意味がないってことです。
カフェインを摂取してから体内に吸収され、作用し始めるまでには10~15分程度かかると言われています。
そのタイムラグも踏まえて早めに摂取しておくようにしましょう。

2 カフェインの摂取量には要注意

コーヒーなどを習慣的に飲んでいて癖になってるビジネスパーソンは多いでしょう。
しかしカフェインの摂取には注意点があります。具体的には以下の2点です。

①継続的に摂取しないこと
②1日当たりの摂取量

2-1カフェイン摂取を休む重要性

カフェインを常用し続けるのは以下の3つの理由からオススメしません。

依存性、過度な疲労感、効き目の低下

一時期、カフェイン切れによる禁断症状が話題になったことがありますが、覚えているでしょうか?
カフェインは覚醒・興奮作用のある刺激物です。
少量なら問題はありませんが、量・頻度が上がると依存性を持ち始め、体内から代謝されてしまうと手の震えなどの禁断症状を覚えることもあります。

またカフェインの摂取を続けている中で、急に大きな疲労感に襲われた経験はないでしょうか?
この現象は、カフェインでブロックされていた多量のアデノシンが一気に作用することが原因です。
カフェインに頼って無理に起きるのではなく、ちゃんと休息・睡眠をとって回復しましょう。

最後に恒常的に摂取していると、徐々にカフェインの効き目が低下してきます。
カフェインはアルコールなどと同じで身体にとっては異物のため、体内では代謝作用により分解の対象です。
「お酒に強くなる」というのは思い込みと捉えられてますが、実際に代謝作用が強まり分解速度が上がっています。
これと同じでカフェインも徐々に体内での分解が速くなり、効きにくくなっていきます。

因みにアルコールの代謝が速い人は薬の効き目も普通の人より弱くなるよ

かつての効き目を取り戻そうと量を増やしてしまいがちですが、これをすると依存することになりかねません。
ここで本当にやるべきは増やすことではなく減らすこと、定期的にカフェイン断ちをして効果を維持し、依存を予防しましょう。

2-2 カフェインの適正な摂取量

定期的に休むのと同時に1日で摂取するカフェインの量にも気を付ける必要があります。
ではカフェインの適正な摂取量とはどれくらいかと言うと、実は明確な基準値は設定されていません

通常、PFCやビタミン・ミネラルなどの栄養素はADI(体重1㎏当たりの摂取量)という基準がありますが、カフェインにはこれがないのです。
そのためあくまで目安にするしかありません。

基本は性別や体重等を基準にしますが、カフェインの場合は関係なく健康な成人であれば1日に300~400㎎程度とされています。
但し妊娠中の場合は、低体重での出生リスクがあることから1日100㎎以内にしましょう。
100ml当たりのカフェイン含有量は以下の通りです。

・ブラックコーヒー 60㎎ 1日に500ml前後
・緑茶・紅茶・烏龍茶など 10~20㎎ 1日に2L弱
・玉露 驚異の160㎎ 1日に200ml程度

もちろん煮だした濃さなどによる上下はありますが、この辺りを基準にしておけばOKでしょう。
カフェインには利尿作用があり、入ってくる水分より出ていく水分が多くなるので水分補給にはなりません。
ミネラルウォーターなどと交互に飲めば、水分補給をしつつカフェインの摂取量も抑えられるのでオススメです。

3 睡眠の質とカフェインの関係

カフェインには覚醒作用があることから、睡眠を妨げるもの、睡眠の観点では摂らない方が良いものと思われがちです。
しかし摂取の仕方さえ気を付けていれば、睡眠の敵にならないどころか味方にもなり得ます
ここでは睡眠とカフェインの関係について解説します。

3-1 寝る前にカフェインを控えるのでは遅い

「寝る前はカフェインを控えるようにしましょう」というのは誰もが聞いたことがあると思います。
しかし睡眠の質を高めるためには、これに気を付けてるだけでは実は不十分です。

摂取したカフェインが体内で代謝されるのには想像以上に時間がかかります。
体内のカフェイン量が半分になるまでの時間を半減期と言いますが、なんと5~6時間もかかるのです。
夕方の5時までカフェインを摂取していて夜の11時に寝るとすると、その時点でまだ体内に半分近くカフェインが残っていることになります。
翌朝に飲酒運転にならないために飲む時間のケツを考える習慣のある人なら、どれだけ代謝に時間がかかるか実感してるでしょう。

つまりしっかり寝るためには最低でも就寝時間の7~8時間前までにはカフェインをストップする必要があるということです。
11時に寝る場合13~14時までになりますが、この時間まで飲めれば昼下がりの眠気に備えられるので十分だと思います。
自分の毎日の就寝時間から逆算してカフェイン摂取期限を設けるようにしましょう。

3-2 日中よく起きる重要性

寝る前にカフェインが作用してしまうのは問題ですが、日中カフェインの効果でしっかり覚醒できることは重要です。
ホルモンや体温、自律神経のバランスは睡眠の質に大きく関係しますが、いずれも日中と夜間のメリハリが重要になります。
つまり日中しっかり起きて活動することで、夜にグッスリ眠れるということです。

休日などが典型ですが、起きてからベッドでウダウダしてスマホを眺めていたり、一度も外に出ずに暗い室内に閉じこもってたりする人も多いでしょう。
そのため日中の活動量が低すぎて夜になっても眠くならないどころか、やっと目が冴えてくるなんてこともあります。
それで夜更かしをして、翌日起きるのが遅くなって、眠くならなくて…と徐々に生活が後ろ倒しになっていきます。
ここで一気に平日のリズムに戻そうとすることでリズムに狂いが生じてブルーマンデー症候群に陥るわけです。

日中の覚醒の重要性を説明する上での分かりやすい例として休日を持ち出しましたが、当然平日でもこれは変わりません。
ダラッとしやすい朝から頭を冴えさせ、日中の覚醒エネルギーを供給する気付薬としての役割から、カフェインは睡眠の質を高める要素にもなるということです。

まとめ

カフェインの作用メカニズムと使用上の注意点、そして睡眠の質との関係について解説しました。
カフェインはあくまで予防策であり、眠気を吹き飛ばしたりエネルギーを作り出すわけではありません。
眠気を感じる前に摂取し、疲れを感じたら脳を騙すのではなくしっかり休みましょう。

またあまり知られていないカフェインが代謝されるまでにかかる時間の長さにも注意が必要です。
ランチのコーヒーを最後にそこからはカフェインの無い飲み物にシフトしましょう。
お茶にもカフェインが含まれているので夜は避け、代わりにルイボスティーやカモミールティーを飲むことをオススメします。

寝る時間にもよりますが、昼過ぎまでは摂取してしっかり覚醒し、そこからは夜に向けて徐々に眠気を感じていきましょう。
てなとこで。