体温コントロールと睡眠の質の関係|夜寝る前の工夫と日中の注意点

睡眠の質には実に様々な要素が関わっています。
睡眠の質ってそもそも何?というところから関係する各要素まで、まとめてこちらで解説してるので参考にしてください。

そして睡眠の質を左右する様々な要素の中で、重要度の1、2を争うのが体温のコントロールです。
このページでは睡眠と体温の関係、良質な睡眠のためにできること、そして多くの人がやりがちなミスについて解説します。

1 睡眠と体温の関係

ホルモンや自律神経に比べると、睡眠の質において体温コントロールの重要性はあまり知られておらず、軽視してる人も多いのではないでしょうか?
人間を含めた哺乳類は恒温動物なので、体温は常に一定と思われがちですが、実際には1日の中で変動しています。
そして体温と睡眠の関係は非常に単純明快です。
基本的に体温が上がると覚醒に近付き、体温が下がると眠くなります。

雪山で遭難した時「寝るな!寝たら死ぬぞ!」って言うけど抗うのは結構難しいってこと

因みに体温の変動は日中をピークとする単純な山なりではなく、上下を繰り返しいくつかの山と谷から構成されます。
昼過ぎの眠気が強烈なのは、ランチの消化で副交感神経が優位になってるところに体温の低下が重なることが原因です。
若干脱線しましたが、寝る時間にしっかり眠気を感じてグッスリ眠るためには、夜に向けて体温を下げていくコントロールが必要になります。

2 夜寝る前の体温マネジメント

体温を下げることで眠気を感じると聞くと、身体を冷やせばいいと思う人がいます。
しかし実際にすべきことは反対で、身体を温めることです。
人間には恒常性(ホメオスタシス)という安定化機能が備わっているので、行き過ぎたものを標準値に戻そうとします。
これは体重や体脂肪率、血糖値や心拍数など全身の様々なものに当てはまり、体温も例外ではありません。
つまり下げる方向に力を働かせたかったら、一度大きく体温を上げて反動で落とす方が効果的です。
逆に冷やしてしまうと身体を温めようとしてむしろ体温が上がってしまいます。

ついでに寝る時に靴下を履いて寝る人がいますが、これも睡眠の質の観点ではマイナスです。
体温は手足と頭部から多く放熱されるため、多少寒く感じても寝る時に手足はオープンにして、なるべくなら布団からも出しておくことをオススメします。
就寝前の体温コントロールに大事なポイントは大きく分けて以下の3つです。

①入浴 ②食事 ③運動

以下でそれぞれの注意点とともに紹介していきます。

2-1 入浴

忙しいせいでシャワー浴だけで済ませてしまう人が多いと思います。
しかしシャワーでは体温の大きな低下をもたらすほどの体温上昇は発生しません。
睡眠の質を高めたいなら10分程度の短時間で問題ないので、湯船に浸かるようにしましょう。

ここで体温を高めたいからと言って高温で入浴するのはオススメしません。
あまりに高温だと交感神経を活性化してしまうので逆効果。温度は40°前後のぬるま湯でOKです。

また体温を高める効果が高く、下がるのにも時間がかかるため就寝直前に入浴するとむしろ眠りを妨げてしまいます。
理想は就寝2時間前、遅くとも1時間前には済ませるようにしましょう。

2-2 食事

あまり意識したことがないかもしれませんが、食事をすると体温が上昇します。
これは食事誘発性熱産生(DIT)という消化によるエネルギー消費で熱が発生するからです。
食べるモノによって発生する熱量は異なりますが、体温の上昇幅はそれなりです。

消化にかかる時間、体温の低下にかかる時間を考えると寝る直前の食事はNGですが、適切な時間を空けられるなら夕食は食べた方が良いことが分かります。
遅くとも就寝時間の3時間前くらいには食べ終わるようにしましょう。

また就寝前の時間に温かい飲み物を飲むのも体温コントロールとして有効です。
こちらも体温が下がるまでに時間がかかるので、就寝の30分前くらいを限度にしましょう。
言うまでも無いですがカフェインには覚醒作用と利尿作用があり、いずれも良質な睡眠には逆行します。
コーヒーはもちろん緑茶なども避け、白湯やカモミールティーなどにしましょう。

2-3 運動

夜に運動をすることも体温コントロールにはオススメです。
ここで注意すべきは運動の強度で、ジョギングや筋トレはもちろん、ウォーキングもややハード過ぎます。
これらの運動は就寝直前ではなく、なるべく就寝時間の4~5時間くらい前には終わらせておきましょう。

体温の上昇幅があり過ぎてなかなか下がらないからね

軽いストレッチやフォームローラーなどを使ったマッサージなど汗ばまないくらいの軽さがオススメです。
発汗の調整は交感神経が行うので、汗をかいてしまうとリラックスできなくなってしまいます。
タイミングとしては就寝1時間前くらいまでが良いので、お風呂から上がってそのままストレッチという流れが良いでしょう。

3 日中の落とし穴

就寝前の体温コントロール法については知ってるという人が多かったかもしれません。
しかしどんなに直前に工夫したとしても、日中にやらかしてしまっていると焼け石に水になってしまいます。
ではその重大ミスは何かと言うと、それは帰りの電車での寝落ちです。

昼過ぎの眠気を引きずって電車に乗り、揺られている内に寝落ちしてしまうという人は結構いることでしょう。
電車の揺れの周期は1/Fの揺らぎと言われるリズムで、非常に人間がリラックスしやすいと言います。
つまり眠気や疲れを抱えてる人は簡単に寝落ちしてしまうのです。

帰りの寝落ちの何が問題かというと体温の増減周期を乱してしまうということです。
夕方に眠ってしまうことで、本来落ちるべきでないタイミングで体温が落ちてしまい、その反動で夜に向けて体温が上昇してしまいます。
中途半端に眠気もとれているせいで夜になっても全く眠くならず、無理に寝ようとして睡眠の質を低下させてしまうのです。

この寝落ちを防止するために2つオススメの対策があります。
まず非常にシンプルな対策ですが、帰りの電車では極力座らないようにしましょう。
帰りは疲れている人も多く、隣の人と距離が近い座席では小競り合いなどのムダなトラブルが発生しやすいという理由もあります。

認知リソースが底を突いててみんな自制心が無くなってんだよね

しかし立ったままでも寝落ちしてしまう人もいるでしょう。
そういう人は昼休憩の時に短時間の昼寝をしておくのがオススメです。
たった15分程度でも昼に仮眠を取っておくだけで、午後のパフォーマンスも上がり、帰りの電車でも眠気を感じなくなります。
効果的な昼寝のテクニックについてはこちらのページで解説してるので、参考にしてください。

4 睡眠習慣を急には変えられない理由

睡眠の質からは若干話が逸れますが、睡眠と体温の関係で紹介しておきたいことがあります。
それは寝る時間を急には変えられないということです。

体温が上下する周期は「前日の就寝時間」を起点に始まります。
そして前日の就寝時間から22~24時間経過したところで、寝る前の最後の体温の山が来るのです。
つまり普段の就寝時間の2時間前は体温リズム的に寝付きにくいタイミングであり、ここをフォビドゥンゾーン(禁止領域)と言います。

翌日の旅行の出発が早朝だからといつもより早く寝ようとしてもなかなか寝付けないのは楽しみだけのせいじゃないということです。
前日より早くするにしても30分程度が限界なので、早める場合は計画的に、というより常に早く寝る習慣をつけておきましょう。

この関係で注意しなければいけないのが、前倒しに比べて後ろにズレるのは簡単だということです。
普段寝てる時間を迎えると眠気を感じますが、そのタイミングをやり過ごすと難なく起きていられます。

空腹感も暫く放っておくと治まるのと同じだね

仮に普段より2時間夜更かしすると、そこから体温の周期が始まるので、翌日いつも通りの時間に寝ようとしても体温が高くて眠れません。
一度の夜更かしで生じたズレを取り戻すのに何日も要することになるので、常に規則正しい生活を心掛けましょう。

まとめ

睡眠の質と体温の関係について解説しました。
意外と知られていませんが、体温は1日の中で変動しており、その上下が覚醒や睡眠に関わっています
つまり寝る前の時間に体温がしっかり下がるようマネジメントすることが非常に重要ということです。
23時就寝の場合の寝る前の流れはザックリ以下のような感じになります。

20時:食事 → 21時:入浴 → 21時半:ストレッチ → 22時:カモミールティー → 23時:就寝

帰りの電車で寝落ちしてしまうという大チョンボをかまさないためにも、昼寝などでしっかり対策することも忘れないようにしましょう。

またたった1回の夜更かしが睡眠のリズムに与える影響の大きさも知ってもらえたと思います。
仕事の都合でやむを得ずという場合はさておき、飲み会やネットサーフィンのための夜更かしは正直言って論外です。
睡眠習慣とともに自身の精神も律する意識を持っていきましょう。
てなとこで。