【何をいつ食べる?】食事と睡眠の意外な関係|眠りの質は朝食から始まる

睡眠の質を高める方法としてはあまり重要視されていませんが、食事は大いに睡眠に関係します。
食事の仕方を間違えると睡眠の質を落とすことはもちろんですが、逆にその方法によって良質な睡眠に繋げることも可能です。
また食事に含めるか微妙なところですが、睡眠に関係する様々なサプリメントも販売されています。
それらの効果や是非も含めて、睡眠と食事の関係について解説していきます。
因みに「そもそも睡眠の質って?」という話についてはこちらをご覧ください

1 就寝直前の食事がNGな3つの理由

これはもう既に常識になりつつありますが、就寝の直前に食事をするのはNGです。
少なくとも就寝の2時間前、可能であれば4時間前までには食事を終わらせるようにしましょう。
その理由は以下の3つです。

①消化不良を起こす
②体温が下がらない
③成長ホルモンが分泌されない

食べ物の消化が済んでいないと、睡眠中も消化器官が動いているので、睡眠の質は低下してしまいます。
しかも活動が不完全になるせいで消化不良を起こしてしまうので、胃腸に負担をかけることになります。
また食べ物の消化には膨大なエネルギーを使うので、消化のプロセスで熱が発生し深部体温が高くなっています。

食事誘発性熱産生(DIT)ってやつね

体温と睡眠の質の関係についてのページで解説したとおり、体温が高い状態は睡眠に向かいにくい状態です。
消化時間だけでなく、体温が下がるのに十分な時間を空ける必要があります。

最後の問題が成長ホルモンの分泌の問題です。
成長ホルモンはキズの修復や疲労回復に作用するホルモンで、睡眠の質の本体とも言えます。
そしてこの成長ホルモンが分泌されるための条件は様々ですが、深い睡眠の局面が十分に現れることは必須です。
また適度な低血糖状態であることも重要で、食事を就寝直前にすることは血中に多量の糖が供給されてしまう点で逆行します。

2 夕食抜きもNG

残業して寝る時間の間近にぐったりして帰宅するというビジネスパーソンも多いでしょう。
就寝直前の食事がNGと言われることから食事をせずそのまま寝てしまう人も多いようです。
しかし食事を全くしないというのも、睡眠の質の観点からはオススメしません。
それは1つ前の項目で解説した、食事による体温の上昇や、低血糖による成長ホルモンの分泌と関係があります。

体温や血糖値といったバイタル指標を下げるには、身体の恒常性(サーカディアンリズム)を利用するのが効果的です。
つまり、一度大きく上げて元に戻そうとする揺り戻しによって下げるということ。
そのため、体温や血糖値を就寝直前に下げるには、それより前に一度上げておく必要があります。
体温は入浴などの他の方法でもコントロールできますが、血糖値はそうはいきません。
むしろ空腹の時間が長過ぎると、脂肪や筋肉を分解して血糖を供給してしまうので結構な問題です。

さらに体内時計の調整という点でも遅くなり過ぎない時間に夕食を摂っておかなければいけません。
この点については次の朝食の項目で解説します。
ガッツリした食事である必要はないので、職場や帰り道で片手間に食べられる軽食くらいは口にしておきましょう。

3 夜の睡眠の質は朝食から始まっている

まずは1日の始まり、朝食に食べるべき食品を紹介します。
睡眠と言うと就寝前の行動や食事にフォーカスされがちですが、朝食は非常に重要です。
ホルモン分泌、体温コントロール、自律神経のバランスは日中からの準備が欠かせませんでした。
そして食事による睡眠の質の向上もこれらと同様です。

就寝前に慌てて対策してもダメってこと

3-1 朝食が睡眠に重要な理由

朝食には人間の体内時計をリセットする役割があるので、欠かさないようにしましょう。
人間の体内時計は地球の時点より少し長く、24時間10分~30分程度の周期で時を刻んでいます。つまりそのままリセットしないでいると、1日10分程度ずつ時差が生じてしまうのです。
光を浴びることでも体内時計は調整されますが、食事は内部から消化管の活動を介してリセットしてくれます。

ただしこれは「朝に食べる食事でリセットされる」という意味ではない点には注意が必要です。
身体は長い空腹の後で食べる食事を体内時計のリセットポイント、すなわち朝食と認識します。
つまり夕食を抜きにして夜中に夜食を食べるような生活をしていると、そこを基準にリセットしてしまうのです。
このことからも夜は軽くでOKなので適当な時間に食べておくようにしましょう。

夜中の0時に食べるとしたら昼ごはんから12時間も空いちゃってるからね

3-2 タンパク質を欠かさない

朝食べることをオススメする食品はタンパク質を豊富に含む食材です。
睡眠に関わるホルモンであるセロトニンはトリプトファンというアミノ酸の一種から作られます。
つまり朝セロトニンをしっかり生成するためには、タンパク質を摂取する必要があるということです。
なお睡眠の質におけるセロトニンの重要性についてはこちらのページで解説しています。

またタンパク質の摂取は食事の満足度とも関係していて、朝十分な量のタンパク質を摂ると、その日1日の食欲を抑えられるという研究もあります。
つまりダイエットの観点からもオススメです。

朝から肉食べるとかちょっとキツくない?

タンパク質を含む食品は重いモノが多いので、朝からキツイと感じる人は豆腐や味噌汁などの豆製品や乳製品・プロテインで代用するのもアリでしょう。

あとバナナもトリプトファンが多いよ

3-3 魚を食べる

タンパク質を含む食品の中でも特にオススメなのが魚です。
魚にはEPA(エイコサペンタイン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)という良質な脂質が豊富に含まれています。
EPA・DHAを含むオメガ3脂肪酸は現代人が特に不足しやすい脂質です。
思考の活性化や、体脂肪の代謝促進、オメガ6脂肪酸の摂取で発生した炎症の緩和など様々な効果があります。

そしてあまり知られていないのが、体内時計の調整機能です。
朝食自体が体内時計の調整の目的があると解説しましたが、EPAやDHAは特にこの作用が強力だと言われています。

とは言え朝から魚を焼く余裕がある人も、刺身を食べる気になる人も少ないでしょう。
そこで個人的にオススメなのが、サバ缶です。手軽で美味しくなんと言っても安いのが魅力。
色んな種類の魚の缶詰がありますが、中でもサバをオススメするのはEPA・DHAが特に豊富だからです。
脂質を気にする人がいますが、朝食は消化能力や栄養素の代謝の余力が十分なので、むしろ「脂質を摂るなら朝」と言えます。

4 昼食や夕食で食べるものも大事

睡眠の質においては特に朝食の重要性は高いですが、昼食や夕食で食べるものも重要です。
多くの人がやりがちなメニュー選びのミスとオススメのメニューを以下で解説します。

朝食と合わせてかなりのボリュームになったから、ページの最後で一挙にまとめてるよ

4-1 昼食のNGパターン

まず昼食では、高糖質な食事はなるべく控えましょう。
あまりに多量の糖質を摂取すると血糖値スパイクを起こし、過剰に血糖値が下がってしまいます。
甘いモノを食べた後のボーっとするのはシュガークラッシュと言われる現象で、これは血糖値の急上昇が原因です。

午後の眠気の原因は、体温や午前中の疲れや消化など様々ですが、昼食の内容による影響もあることを認識しておきましょう。
昼間から眠気を感じてしまうと、日中の覚醒レベルが落ちてしまう上に、帰りの電車で寝落ちして体温リズムを乱してしまうリスクもあります。

また脂質の多い食事も消化負荷が高く、午後のパフォーマンスを落とす原因になります。
睡眠の質の観点からも、ビジネスパーソンの自己管理としてもカレーライスやラーメンは最悪のランチなので避けましょう。

4-2 夕食のNGパターン

夕食は前の項目で解説したとおり、体内時計を強力にリセットしてしまうため、魚類はなるべく避けるようにしましょう。
また消化に時間がかかることから脂質もなるべく控えることをオススメします。

糖質制限の流行りの影響、また「あとは寝るだけだからエネルギーは不要」という考えから夕食で糖質を控える人が多いかもしれません。
しかし既に解説した血糖値のコントロールの観点から一定量の糖質は摂取しておくべきです。

言うまでもなくカフェインの摂取はNGです。
コーヒーやエナジードリンクを避ける人は多いと思いますが、お茶やお菓子、薬にも含まれているので注意しましょう。
辛い食べ物も「刺激物」の名のとおり、神経を刺激し興奮させてしまう作用があるので、夕食にはあまりオススメしません。

そして夜と言えばアルコールを忘れてはいけません。
寝付きが良くなると言う人もいますが実は誤解で、泥のように眠れる気がするのは気絶に近いからです。
アルコールから発生するアセトアルデヒドという有毒物質の分解で身体が常に活動するため、深い睡眠に入ることが出来ません。
そのためお酒が好きという人も1日の量を抑え、かつ就寝の2時間前くらいまでには飲み終えましょう。

逆に夕飯にオススメなのが、キウイフルーツ、甲殻類、食物繊維を多く含む食品です。
特にキウイは睡眠の質を改善する効果が高いという強いエビデンスがあります。
また甲殻類には深部体温を下げる効果のあるグリシンが豊富に含まれているので、オススメです。

5 睡眠のためのサプリメント摂取の是非

睡眠にトラブルを抱える人は多く眠りをサポートするサプリメントが色々発売されています。
以下でオススメのサプリメントとあまりオススメしないサプリメントを紹介します。

5-1 オススメのサプリメント

その中でもオススメなのが以下の5種類です。

①グリシン
②GABA
③アルギニン
④トリプトファン
⑤オメガ3・フィッシュオイルサプリメント
⑥プレバイオティクスサプリ

グリシンは睡眠導入剤などにも含まれているので聞いたことがあるかもしれません。
夕食でオススメしている甲殻類にも豊富に含まれています。
これは就寝時間の1~2時間前に摂取するようにしましょう。マイプロテインやアイハーブなどのサイトで購入できます。

またGABAも「ストレス社会で戦うあなたに」で有名な成分なので目にしたことがある人も多いでしょう。
GABAは日中に摂取することでストレス値を下げ、夜間に睡眠を阻害するコルチゾールの分泌を抑制できます。
また成長ホルモンの分泌を促す効果が確認されており、二重の意味で睡眠に効果的です。
但しこのストレス緩和効果は脳の変化を抑えることによって得られるため、脳の成長という観点では摂り過ぎは毒かもしれません。

そしてアルギニンには成長ホルモンの分泌効果が認められています。
成長ホルモンもまた睡眠の質において非常に重要なファクターです。
詳しくは以下のページで解説しています。

トリプトファンについては既に解説したとおり、セロトニン及びメラトニンの分泌に必要な成分です。
タンパク質を含む食品の摂取で十分なので、わざわざサプリメントで摂取しなくてもOKですが、食べるのが難しい人にとっては1つの手段になります。

また魚が苦手という人にはオメガ3やフィッシュオイルなどのサプリもオススメです。
ただし脂質サプリメントは特に酸化が進みやすいので、信頼できるショップから短期間で飲み切れる分を購入するようにしましょう。

セールでのまとめ買いはあんまオススメしないよ

プレバイオティクス(食物繊維)も食事だけでは必要量を摂取するのが難しいという人がいると思います。
そういう人はイヌリンや難消化性デキストリンといったサプリメントを試してみましょう。

5-2 メラトニンサプリはアリか?

トリプトファンじゃなくて直接メラトニンを摂ればいいんじゃない?

メラトニンは睡眠に関係する非常に重要なホルモンなので、これを摂取できるサプリメントも実は発売されています。
ではこのメラトニンサプリの摂取はアリなのか?個人的にはあまりオススメはしません。
それはメラトニンが栄養素ではなく本来は体内で合成されるはずのホルモンだからです。
メラトニンに限らず、体内で合成できるはずのモノを外部から十分な量取り入れてしまうと身体の合成作用が鈍ると言われています。
つまり正常なメラトニン合成が行われている人が、外部から取り入れてしまうと、合成力を弱めることになりかねないということです。
体内で合成できてないと診断を受けるなど、摂取前は医師の判断を仰いだ方が良いでしょう。

まとめ

睡眠の質を高める食事法について解説しました。
就寝前は食事を食べてはいけないことは広く認知されていますが、同時に夕食の完全カットもあまりオススメはできません。
またあまり意識されていませんが、朝食をしっかり摂ることは体内時計の調整、そしてホルモンの分泌の観点から非常に重要です。
単に朝食べる食事が重要なのではなく、長い空腹の末に食べる食事こそが重要ということを覚えておきましょう。

夜更かししながらダラダラ食べてると朝ごはん食べてもリセットがかからないよ

また昼食や夕食で食べるモノにもなるべく配慮するようにしましょう。
以下に各食事でのOKパターンとNGパターンをまとめます。

<朝食にオススメ>
・タンパク質:とくに大豆製品、バナナ、卵、乳製品、ホエイプロテイン(トリプトファンが豊富)
・魚:鯖、サケ、マグロ、ブリやフィッシュオイルサプリ(DHA・EPAが体内時計を調整)
<朝食のNG>
・朝食抜き
・過剰な糖質摂取(朝から頭がボーっとする原因)
<昼食のNG>
・糖質と脂質の多い食品(午後の眠気の原因)
<夕食にオススメ>
・キウイ
・甲殻類:カニ、エビ、イカ、タコなど(グリシンが豊富)
・プレバイオティクス:全粒穀物、サツマイモ、ゴボウ、キャベツ、ブロッコリー、イヌリンサプリなど
<夕食のNG>
・カフェイン(コーヒー以外にも要注意)
・刺激物
・アルコール

そして食事が基本なのは睡眠においても同様で、サプリメントはあくまで次善の策というスタンスで付き合うことをオススメします。
食事が日常の楽しみという人も多いので、神経質になり過ぎるのは心に毒です。
少し配慮するくらいから徐々に習慣にしていきましょう。
てなとこで。