【人は楽が大好き】先延ばしの心理的な原因と対策|コストは言い訳にならない

皆さんはやらなきゃいけないことを先延ばしにする癖はないでしょうか?
手間がかかりそうな仕事、転職活動、副業、資格試験の勉強、ダイエット、禁煙、貯金などなど。
やらなきゃいけないと分かりつつも、なかなか手を付けられずにズルズル行ってしまう人は多いと思います。

〆切のある仕事は緊急性で分類されるので、遅かれ早かれ手を付けなければいけません。
しかしその他の重要だが緊急性はないことは、やらなくても実害がないものがほとんどです。
結果としていつまでも「やらなきゃなー」と思う止まりになってしまいます。
このページでは先延ばしにしてしまう以下の7つの原因とそれに対する考え方、対策について解説します。

①言い訳は無限
②理想の自分を守りたい
③完璧主義
④不毛な達成感
⑤視野が狭い
⑥優柔不断

1 先延ばしの言い訳には困らない

新しい物事をなかなか始めにくい原因は人間の現状維持バイアスという特性にあります。
これはなるべく今と同じ状態を保とうとする脳の性質のことです。
行動や習慣を新たに加えることは往々にしてエネルギー消費が増えることになるため、それに抵抗しようとします。
簡単に言ってしまえば人間は楽が大好きなかなりの怠け者ということです。
つまりこれに逆らおうと能動的にしなければ、新しい行動などできるわけがありません。
しかし世の中には自分が楽をするための言い訳のタネに溢れていて、多くの人は真っ先にそれに飛びついてしまいます。

会社がブラックだからとか、時間がないとか、景気が悪いとか、お金がないとか、子育てで忙しいとかね

こういうもっともらしい言い訳が立てば、自分が怠けてるせいではなく、状況のせいだと自分を正当化することが出来ます。
その結果、「また今年も何も始めることなく終わった」と年末を迎えることになるのです。

この他人や世間のせいにする他責思考の問題は先延ばしに限ったことではなく、ビジネスの成功を阻んだりトラウマを強めたりもします。
こうして幸福感を下げる原因になるので、他責思考には注意しましょう。

多くのそれらしい言い訳は一見すると自分のせいじゃないように見えますが、ほとんどのことは自己責任です。
会社がブラックなら転職すればいいし、時間が無いならやらなくていいことに使う時間を減らせばいい。

SNSとかテレビ観る時間を減らすとか、家事をアウトソースするとかね

このように解決策はいくらでもあります。
結局は捉え方の問題で、やらなくてよくなるから周囲に責任を転嫁してるに過ぎないということです。

2 デキる自分を守るため

先延ばしにしてしまう原因は失敗を恐れているからです。
確かに失敗の経験を重ねると自信を失ってしまうリスクは高まります。

ゴールリングを小さくして練習したバスケチームの成績が顕著に低下した事例とか有名だよね

また失敗が怖くなり、確実に成功する行動だけを取るという行動委縮に陥る可能性もあります。
このように失敗によるリスクというのは行動しない正当な言い訳のように見えるかもしれません。

しかし多くの人が行動しないのは、失敗によるデメリットを意識しているからではなく、可能性を残しておきたいからです。
始めなければ絶対に失敗することはありません。
つまり「やればできるかもしれない」という可能性に浴し続けられるわけです。
しかし言うまでもなく、行動しなければそれは能力が無いも同然です。
本でいくら知識を仕入れても、実際の行動に活きてないなら知らない人と同レベルというのと似ています。

また失敗は必ずしも悪というわけではありません。
失敗が問題になるのは、先の事例のように悪い側面にフォーカスしてしまった場合です。
今回の経験に含まれる「次回の挑戦・改善に繋がる学習面」に着目できれば失敗は有益なモノになり得ます
同じ失態でも成長や学びの機会としてポジティブな側面に着目する方が、「自分はダメだ」などと悲観するよりストレス値が圧倒的に低くなることは研究でも確認されています。

実際に体内のコルチゾール値の上昇が抑えられるんだよね

また成功の実態について知ることも重要でしょう。
テレビなどのメディアで取り上げられる成功者の事例は成功までの道のり・要因がクローズアップされがちです。
しかしたいていの場合、成功の裏にはそれを遥かに上回る数の失敗があります。
成功と失敗は二者択一のように誤解されがちですが、実際は失敗(から得た学び)を積んでいった先に成功があるのです。

分かれ道じゃなくて階段みたいなイメージだね

3 完璧主義

完璧にやるために準備が必要、というのもよくある言い訳の1つです。
真面目な日本人には完璧主義的な思考を持ってる人がかなり多くいます。
「しっかり準備してちゃんとやろう」という意識は大事なことです。
闇雲に手を着けても不足が次々に出てきて効率が低下してしまいます。
取り掛かる前に、どんな作業・プロセスが必要で、それぞれどれくらい時間がかかるのかなどを洗い出す行程は必要でしょう。

しかし起こり得るトラブルなどを完全に想定し、全てに先回りして対応することは不可能です。
この世界に完璧というものは存在しません。これは多くの人が忘れがちでかつ非常に重要な事実です。

じゃなきゃ「想定外」って言葉は存在しないよね

手を着ける前の準備を完璧にしようとする人は、飛行機の離陸前の角度に緻密にこだわるようなものです。
離陸角度を完璧にすれば、目的地まで綺麗な放物線を描いて自動で辿り着ける、なんてことはあり得ません。
気流や天候の影響、他の航空機との航行ルートの関係などに応じて、飛行中の微修正は不可欠です。
滑走路の状況によってはそもそも目的の空港自体が変わる可能性もあります。

準備を入念にやり過ぎたせいで離陸時間ギリギリになってしまえば、途中で軌道修正する余裕がなくなってしまうかもしれません。
仕事に手を着けるのが遅すぎて、期限内に修正やリカバリーする時間がなくなってしまう事例がまさにこれです。
つまり工具の置き忘れ、エンジンなどの点検、乗客の搭乗、目的地。この辺りの最低限のことをしっかり確認したらまず飛び立つべきだと言えます。

4 中身の無い達成感への満足

冒頭でも触れましたが、先延ばしの対象になるのはたいていが「緊急じゃないが重要」なタスクです。
タスクはこれ以外にも山ほどあり、多くの人は緊急性のあるモノを優先し、それに追われていることでしょう。
確かに緊急性も大事ではありますが、些末なことを処理してるだけなのに何かをやった気にさせてしまうという問題があります。
あまり意味を持たないことでも数を熟すだけで偽りの達成感を得られてしまうのです。
「これだけのことはやってるから他のことは出来ない」という言い訳のタネと見ることも出来ます。

処理しやすいタスク、例えばメールの返信や数字の入力作業、完璧主義者が大好きな「準備」などがその典型でしょう。
しかし小さな緊急のタスクというのは、意外と処理する必要がなくなることがあり、かけた時間が丸々ムダになることもあります。
「急ぎで資料を用意して」と上司に言われていたのをすっかり忘れていたが、その後とくに上司から督促も来ず、結局いらなかったというようなパターンです。

逆に重要性の高い大きな課題というのはその裏にさらに重要な問題が隠れていることもよくあります。
「3時間あれば片付く」と目算してて、実際に手を着けてみたら情報が不足していて結局5時間かかってしまったというような感じです。
些末なタスクや問題なら時間が解決してくれることも多いですが、重要な課題の場合はそうはいきません。

やった気になってたら実は全て不要な作業で、実質的に何もやって無いに等しい状態まで一気に転落するなんてことも十分あり得ます。
偽りの達成感に達成感に浸ることなく、重要で本当に意義のあるタスクを優先すべきでしょう。

5 視野の狭さと勘違い

失敗については捉え方次第だと既に解説しました。
それでも多くの人が失敗を恐れるのは、行動の萎縮や精神的なストレス以外にも受けるダメージがあるからでしょう。
最たるものが失敗によるお金の損失で、ありがちな言い訳の1つです。
投資で資産を失ったり、事業で赤字を出したり、転職で年収が今より下がったりといった感じでしょうか?

しかしこれらのリスクを抑える方法はいくらでもあるので、行動しない理由にはなり得ません
投資であれば個人向け国債や利率の高い定期預金、もう少し冒険するなら幅広く分散されたインデックスファンドなどは低リスクで始められます。
何かを販売するにしても実店舗を持たなければいけないなんてルールはなく、テナントを借りるコストも不要です。

自宅で作った和菓子をネット販売してる人が経済番組で特集されてたこともあるね

いきなり独立するのではなく、まずは小さく副業から始めていくという堅実な方法もあります。
とりあえず転職活動してみるだけならノーコストです。
今より給料が上がりそうなのか、条件が良かったら面接を受けてみて次の勤務先が確定してから今の仕事を辞めれば良いだけじゃないでしょうか?

ブログやYouTube、SNSでの情報発信、アフィリエイトならほとんど初期費用なしで始められます
性能の高い高価なカメラやパソコンなど最初から買う必要はありません。ほぼ全ての人が持ってるスマホ1台からでも十分始めることが出来ます。

そもそも多くの人が勘違いしてますが、リスクを取るほど成功に近付くわけではありません。
適切な対策で可能な限りリスク管理をした上で必要最小限のリスクを取るというのが正解です。
何も考え無しに大きなお金を投じた度胸を買って成功が降ってくるなんて甘い世界ではないことは覚えておきましょう。

6 優先順位付けが出来ない

最後に紹介するパターンは行動に進もうとしてるだけ、これまでのタイプよりは救いがあるでしょう。
このタイプの人は色々リサーチをした結果、やるべきことが見つかり過ぎてしまったために動けなくなってしまいます。

今の自分を変えるためには、筋トレをして、食事に気を付けて、睡眠を大切にして、貯金をして、証券口座を開いて投資信託も契約して…といった感じです。
確かにどれも大事なことで、ぼくも取り組んだ方が良いと思いますが、身体は1つで時間も1日24時間と限られています。

今回のような例だと大きな行動変容を伴うので、1つ1つのタスク自体も時間と労力を要します。
一気にやろうとするのは非常に困難で、まとめて手を出した結果としてどれも中途半端になるのがオチです。
優先順位を立てて、1つずつ確実に潰していかなければいけません。
課題を1つに絞るというのは習慣化を実践する上でも非常に重要な視点です。

先の例の場合、ぼくであれば時間がものを言う上に開設にタイムロスがある投資から始めますが、タネ銭が無いならまずは貯金習慣から始めます。
もちろん頭をしっかり働かせるために睡眠習慣から見直すなどもアリです。
何にせよ自分にとって正解となる優先順位を立てることが、行動の開始そして着実な遂行にとって重要になります。

7 先延ばしを防止するために

ここまで先延ばしが起きる原因を様々な角度から紹介してきました。
先延ばし癖がある人にこの全てが当てはまるわけじゃありませんが、いくつか心当たりがあったんじゃないでしょうか?
こういう痛い所を突かれるだけで動き出せる人もいるのですが、たいていの人は「そうなんだよなー」と思いつつやはり動きません。
そこで最後に先延ばしを解消しやすくする以下の2つの対策を紹介します。

①とりあえず始める ②〆切を作る

7-1 始めれば勝手に動く

人間には作業性興奮と言われる心理特性が備わっています。
始める前はとんでもなく面倒くさいと感じていることも、試しにちょっと始めてみるとドンドン作業が乗るようになるのです。

とりあえずやれって言われても何から始めればいいやら…

重要なタスクは遠目から見ると大きな壁のように見えますが、近付いてみると実は山道で、一歩ずつ登っていくことが出来ることが分かります。
つまりまずは必要なプロセスに細分化することから始めるということです。

最初から最後までプロセスを明確にする必要はありません。
こんなことをし始めたらまた完璧主義の罠にハマってしまいます。
前半のプロセスを小さなタスクに細分化して、小さなことから確実に始めていきましょう。

7-2 明日死んでも大丈夫?

「明日死ぬとして今日やることは本当に自分がやりたいことだろうか?」
アップルのスティーブジョブズの朝の習慣として有名な言葉です。

明日死ぬなら今日つまらない仕事に行って良いのか?という趣旨の質問ではありません。
明日死んでも後悔するようなやり残しはないか?という意味です。

まだ人生は長いんだし、これから時間に余裕ができた時に

人間は誰しもいつか死にますが、何となくそれはだいぶ先のことと多くの人が思っています。
だからたいていの人はこんな風に考えてしまうわけです。

しかしいくら昇給しても貯金が増えないのと同様で、時間は作らなければいつまでも生まれません。
これはパーキンソンの法則という有名な法則で、利用できるリソースを目一杯使い切るようタスクや支出は膨張するからです。
逆に期限を設けられるとその範囲内でどうにかしようという意識が働きます。

締切効果ってやつね

「明日死ぬとして…」という問いは〆切を仮想させると同時に、人生が有限であるという当たり前のことを再認識させてくれます
後悔のない人生と言えるか、ぜひ一度考えてみてください。

7-3 意外と後悔しない

失敗した時も学びに変えればそれは進歩になるというのは、既に解説したとおりです。
「でも学びよりも精神的、経済的なダメージが大きい失敗が発生するかもしれない…」
ここまで見てきても相変わらず先延ばしにして行動出来ない人はそう考えているでしょう。
プロスペクト理論と言って人間は得るモノより失うモノの大きさを過大に評価する傾向があるからです。

最後に対策というよりはアドバイスのようなモノを1つ紹介しておきます。
それが人は自分の決断を好きになるものだ、ということです。
これには①自己コントロール感と②合理化という2つの理由があります。

まず人間は誰かによる指示ではなく自分で決定したという感覚に満足感を得ます。
つまり自分で選んだというだけの理由で、その決断が輝いて見えるのです。

また合理化によってどんな失敗をしても自分の現状を正当化する論理を構築します。
この心理作用は自分の精神的なダメージを緩和するためのごく自然な防御機能です。
努力しないと手に入らないモノを「どうせあんなもの」とやらない理由にするのは悪性の合理化と言えます。
しかし「やらなかった後悔より」と思って現状を肯定するのは良性の合理化と言えるでしょう。

こうした作用によって人は自分自身で下した決断を好きになる傾向があるので、失敗した時の後悔やダメージを必要以上に怖がる必要はありません
それでも不安だという人はその感情に適切に対処する必要があります。

まとめ

誰もが経験する先延ばしの心理の原因と対策について解説してきました。
他人や環境のせいにしてやらない言い訳はいくらでも出来ますし、失敗したら出来ない現実を突きつけられてしまいます。
でもそのための準備なら失敗することはありません。しかも何かをしてるという一応の達成感も得られます。

どれもこれも全く生産性はありませんが、こうすることで本当に自分が納得できるなら問題はありません。
しかし多くの人が「やらなきゃなー」と繰り返しているというのが現実です。
つまり取り敢えずアリバイ作りはしてみたものの結局は何の気休めにもなっていないってことですね。
しかも先延ばしにしてるという現状が意外と大きなストレスで、心血管疾患に繋がると言われています。

動き出すための考え方は色々ありますが、ぼく個人としては「とりあえずやってみろ」「いつ死ぬかわかんないぞ」の2つあれば十分です。
いざ始めてモチベーションが上がってくると、必ず「時間がもっと欲しい」「何でもっと早く始めなかったんだ」と後悔します。
時間の重要性を認識していない人が非常に多いですが、時間を過ごすというのは命を削ることとイコールです。
何もしないで命を垂れ流していってる事実を直視できれば、1分たりとも先延ばしには出来ないと思います。
てなとこで。