【今日からアイデアマン】脳の機能を活かしたアイデア出しの方法と創造性に関する誤解
変化のスピードが速い現代においては、同じサービスや商品が長く関心を集め続けるのは困難です。
ウケる1つのネタに満足し、それを繰り返すだけに終始する一発屋コメディアン的な戦略で生き残れる時代ではありません。
常に顧客や視聴者などから選ばれ続けるためには不断の努力、新しいアイデアを生み出し続ける創意工夫が必要になります。
日本人は欧米に比べると画期的なアイデア、斬新なアイデアを生み出すタイプの人が少ないイメージがありますが、それは工夫次第で解決可能な問題です。
日本人にアイデアマンが少ないのは、その根底にある思考プロセスの癖がアイデアを生み出す回路に反していることに原因があります。
このページではアイデアを生み出しやすくするテクニック、アイデアに関する勘違い、脱するべき思考法について解説します。
ここで解説する内容は以下の6点です。
①インプット
②メモ
③接続のバリエーション
④無意識の活用
⑤運動
⑥アイデアの思考過程に関する誤解
①アイデアを生む基礎はインプット
「ふとした時に突然アイデアが降ってきた」という成功者のエピソードを耳にしたことがある人も多いでしょう。
これを真に受けてしまってるために、アイデアを天命のようなものと勘違いしてる人も多いと思います。
そしてアイデアが降ってこない自分は神に愛されていない(=創造性や才能がない)と思い込んでしまうわけです。
しかし実際にアイデアを生み出すのは言うまでもなく脳であり、その脳はゼロから1を作り出すことはできません。
アイデアを作り出す材料、ベースとなる基本的な情報や知識が必要になります。
ただしアイデアや商品だけでなく知識も時間の経過とともに陳腐化していきます。
つまり社会人よりはまだ長い時間を学習に充てていた学生時代の蓄積だけでは不十分ということです。
そこで最初に重要になるのが勉強したり本を読んで新しい知識・情報のインプットをすることです。
日本のビジネスパーソンが読書や勉強に割く時間は非常に短いことが知られています。
なんと1週間の学習時間の平均がたったの6分という驚きの低さです。
まずは基本中の基本のインプットの機会を作りましょう。これが無ければ話になりません。
そしてただ勉強や読書をする時間を取るだけではあまり意味がないことにも注意しましょう。
その情報が脳に記憶として定着していなければ、アイデアの材料としては利用されないのです。
せっかく時間をとって読書しても、それが記憶にならなければ読んだ時間もムダになってしまいます。
記憶に定着させる方法も含め、インプットのテクニックについては以下のページで解説してるので参考にしてください。
②アイデアの材料を保管しておく
インプットの項目でも触れたとおり、アイデアはふとした時に降ってきます。
しかしこれが形としてまとまったアイデアであることはほとんどありません。ほとんどはアイデアの一部、断片です。
それ単体では何の役に立つのかも分からないようなものもあります。
多くの人は新商品の画期的なアイデアと思いがちなので、こうした断片をスルーし続けてしまいます。
インプットで手に入れる情報や知識が金属の原子とすると、ふと浮かんでくるアイデアは鉄屑です。
まずはとりあえずこれらの鉄屑を集めておいて、後から全体を見返して使えそうな部品を選んで形にしていくというプロセスを辿ります。
鉄屑って表現が悪いから重要性が伝わりにくいけど、実際はダイヤの原石だよ
そしてこの重要な断片を集めるために重要な習慣がメモです。
作られた思い付きやアイデアの断片は脳のワーキングメモリと言われる領域に出てきて処理されます。
ここのキャパシティは非常に小さく、他の情報が入ってくると既にあった情報は簡単にはじき出されてしまうのです。
このことからふとした思い付きなどは30秒くらいしか持続しないと言われています。
後から思い出そうとしても長期記憶には定着してないので、まず思い出せません。
だからその場で即座に記録するメモの習慣が重要になるのです。
メモの重要性やアイデアを取り逃さない方法について詳しくはこちらのページで解説しています。
③アイデアは断片の繋ぎ合わせから
アイデア出しの方法として最もポピュラーな方法はブレインストーミング(通称ブレスト)でしょう。
欧米の企業が発祥の文化ですが、日本の一部の企業やプロジェクトチーム内で実践するところも増えてきています。
出てきたアイデアに対する評価は一切含めず、ただひたすら思い付きをアウトプットし続けるという方法です。
評価を挟まないというルールが、批判の恐れや実現可能性を考えるというブレーキを緩めてくれるので、一定程度の効果はあります。
しかしただ漠然と「ブレストするぞ」と言ってもそれほど良い結果は生まないことの方が多いですが、原因は手掛かり不足です。
どんな雑多なアイデアだろうと生み出すためには何かしらの取っ掛かり、キッカケが必要になります。
つまり何の手掛かりも無しにオフィスや会議室に籠ってブレストに臨んでも、さほどアイデアは降ってこないのです。
そこで重要なのが、手掛かりとなる情報を目の前に広げることです。
それは先ほどのメモにあるアイデアの断片でも良いし、商品開発なら実際の自社や他社の製品でも良いでしょう。
Googleでは、プロジェクトとは関係のなさそうな単語やイラストを描いたクルーカードをばらまき、それを手掛かりにアイデア出しをするそうです。
こういう視点では、個々人が自分の興味・関心や時事問題などを持ち寄ってノンジャンルの話をする雑談もバカにできないかもしれませんね。
雑談に限らずブレストやアイデア出しは複数人でやると様々な視点・関心が含まれるので、より効果的になります。
チームでの作業を効果的にするための注意点は、個々にアイデアを持ち寄って発想の限界を作るようなことはしないようにすることです。
まさに三人寄れば文殊の知恵だね
④アイデアは意識しないほど降ってくる
これまで何度もアイデアが「降ってくる」という表現をしてきました。
確かに体感としてはそうなのですが、実際には脳内で思考プロセスを踏んで生み出されています。
それが無意識下の処理です。本人が意識していないため急に降って湧いたように感じてるにすぎません。
人は学校での勉強やオフィスでの仕事の習慣から、「考えるぞ」とデスクに向かう時を思考のメインと考えがちです。
しかし先ほども触れた通り、意識下で働くワーキングメモリが扱える情報は非常に少なく、そこまで質の高いアウトプットは生み出せません。
意気込んだブレストがさほど成果を生まないのもこれが理由の1つです。
一方で無意識では脳内にある膨大な量の情報を処理します。
本を読んでる時に仕事の考えがまとまったり、テストが終わった途端に解けなかった問題の答えがひらめくような経験は誰しもあるでしょう。
いずれも意識が仕事やテストなどのメインのタスクから外れ、無意識化のタスクに切り替わったことが理由です。
またデフォルトモードネットワークと言って意識下では動かない脳領域が活性化し、情報の伝達を行うので、斬新な結びつきが生まれやすくもなります。
集中して作業する時間はもちろん重要ですが、意識的・能動的にインプットや思考を止めることも重要なのです。
ただし、単にボーっとするだけでは、自分にとって有益なアイデアとなる情報の結びつきが生まれるとは限りません。
無意識の力や活かし方、それを実践するオススメのタイミングなど詳しくはこちらのページで解説しています。
⑤体を動かすと脳も動き出す
ここでもまた運動か
このように思う人がいても仕方がないくらい運動は様々なシーン・ジャンルに良い影響を及ぼすことが研究でも証明されています。
そして今回のテーマである創造性においても運動は非常に効果が高いのです。
思考プロセスには発散的思考と収束的思考の2つがあり、このうち特に前者の発散的思考のプロセスにおいて運動は効果を発揮します。
つまりブレストなど、とにかく大量のアイデアのタネを生み出すという初期段階に特に有効ということです。
因みに収束的思考っていうのは、共通項で括ったりして散らばった個々の要素をまとめる論理を使うプロセスのこと
運動がアイデア・創造性に効果がある理由として以下の2点が挙げられます。
①前頭葉の発達 ②ドーパミンの分泌
アイデアは脳内の視床というフィルターを通して生まれますが、それを実生活に即した形に活用する役割は前頭葉が担います。
また膨大な情報をフィルタリングする視床の活動を正常に保つにはドーパミンの適切な分泌が必要です。
そして運動には前頭葉の発達とドーパミン分泌の改善の両方に強く貢献することが分かっています。
運動が苦手という人もいると思いますが、決して本格的なスポーツである必要はありません。
むしろハード過ぎる運動は脳の働きを落とすと言われています。
走るのが最も効果的と言われていますが、運動の習慣が無い人はウォーキングからでも十分です。
軽い運動ならボーっと出来るので一石二鳥できて一石二鳥でしょう。
因みに運動の効果は数日程度とあまり長続きしないので、週に2~3回など習慣化するのがオススメです。
⑥ロジカルシンキングでアイデアは生まれない
学校での学習はロジカルシンキングを基本にしているので、非常になじみ深い思考法です。
プレゼンや書籍、研究発表などいずれも起承転結、序論・本論・結論といった形式・順序に則っている方が理解しやすいでしょう。
考え方の基礎としては重要な思考法です。
しかしこの思考プロセスでアイデアを生み出すことはできません。
理由は単純で、これまで説明してきたとおりアイデアは理論の積み重ねの結果ではなく断片として降ってくるものだからです。
無意識化での処理の結果のアウトプットなどは「直観」などと言われたりもし、論理性の欠片もありません。
成功者の本では理論的な発想のプロセスが書いてあるじゃん
このように感じる人も多いでしょう。実際に本に限らずプレゼンでも研究発表でも理論的な思考過程で説明されています。
しかしこれは読んでる人・聞いてる人に理解してもらうために、筋が通るように整理し直しているだけです。
「アイデアが突然降ってきた」なんて書いても本は売れないからね
つまりロジカルシンキングは思考するための手段ではなく、後付けの説明をするための道具ということです。
このことは優れた選手が優れたコーチとは限らず、また逆も然りということの証明でもあります。
直観や感覚が優れていればプレーヤーとして活躍できますが、それをロジカルに説明できなければ他の選手には伝わりません。
逆に自分は実践できなくても、優れたプレーヤーのエッセンスを論理的に言語化する能力があれば優秀なコーチになり得ます。
成功は事前の計画や計算に基づいて1本道を渡って辿り着いたわけではなく、何回も失敗という行き止まりに直面しては引き返し、という泥臭い繰り返しの結果です。
実際の思考プロセスと表に出てくる説明が異なることを理解し、ロジカルシンキングに頼らない自由かつ直観的な思考を大事にしましょう。
後で説明する時になってから、論理的になるように並べ替えればOKです。
ロジカルシンキングの代表たるエビデンス偏重の問題点についてはこちらのページで解説してるので参考にしてください。
まとめ
アイデアを生み出すためのテクニック・思考法について解説しました。
変化の激しい時代において、新しいアイデアをスピード感を持って生み出すことは非常に重要なスキルです。
このページで紹介した5つの内容を改めてまとめると以下のようになります。
①インプット:アイデアのベースになる情報・知識を仕入れる
②メモ:急に降ってくる断片的なアイデアを取り逃さない
③結びつけ:様々なアイデアを組み合わせて形にする
④無意識のパワー:脳を活性化し意識下より膨大な情報を結び付ける
⑤運動:特に有酸素運動はブレストなどの発散的思考の力を高めるし、無意識の時間にもなる
⑥脱・ロジカルシンキング:論理はアイデアを説明する道具であり生み出す手段ではない
アイデアを出そうと意気込んでデスクに向かったり会議室に缶詰になってもアイデアは生まれません。
出そうと思うほど便秘になる、寝ようと思うほど寝付けなくなる、人間の身体とはそんなものです。
忙しいビジネスパーソンほど止まるのが苦手ですが、脳を上手く使う方が質の高いアイデアは生まれます。
沢山インプットしたらたまには休みましょう。
てなとこで。
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