現代人はキレやすい?|怒りをコントロールする重要性とアンガーマネジメントの方法

「いつもイライラしてしまう」、「カッとなってつい言い過ぎてしまった」
このように感情、特に怒りの感情をコントロール出来ないと悩む人は多いと思います。
「キレやすい若者」とかちょっと前に話題になりましたよね。

周りの人はあんなに穏やかなのに…

このように感情に振り回される自分に対して嫌悪感を抱いてしまう人も少なくないでしょう。
確かに外部からの刺激に対する反応の程度には個人差がありますが、コントロール出来ないものではありません。
むしろコントロールしようとしないことには反応が弱い人でも簡単に感情に振り回されてしまいます

言うまでもないことですが、怒りを含めた「感情」は脳の本能に由来するものです。
「人間は理性的な生き物」と言われますが、理性(主に前頭葉)は後から発達したもので、ベースには本能があります。
つまり感情は意識的にコントロールしようと対策を講じなければいけないということです。
このページでは、感情とくに怒りをコントロールするためのアンガーマネジメントについて解説します。

このページでわかること

・怒りの感情をコントロールしないとどうなるか
・短期的な怒りを鎮める方法
・怒りを感じないようにする根本的なアンガーマネジメント
・アンガーマネジメントに必須の能力

1 怒りをコントロールする必要性

怒りっぽい人を嫌う人は多いですから、ただそれだけでも怒りをコントロールする必要はあります。
しかし問題はそれだけではありません。
怒りの感情をコントロールできないことで思考力が低下してしまうのです。
怒りと思考力の低下には以下の2つの関係があります。

①認知リソースの消耗 ②脳の萎縮

1-1 怒りが脳の体力を削る

脳には思考や判断のための体力があり、認知リソースやウィルパワーと言われています。
認知リソースの重要性について詳しくは以下のページで解説してますが、大小様々な思考や判断で消費されます。

そして感情も認知リソースを消費するものの1つです。
怒りなどの負の感情は消費量が著しく大きいという特徴があります。
既に解説したとおり感情は本能に起因するもので、本能が優先するのは生存や身の安全の確保です。
感情はそのためのセンサーのような役割を果たします。
そのためあらゆる方向に思考を膨張させて消耗してしまうのです。

しかし文明社会において脅威はほとんどなく、感情を膨張させる合理性はさほどありません。
そのせいで高度な思考や集中に割けるリソースが減るとしたら尚更です。
重要な思考にリソースを適切に振り分ける意味で怒りのコントロールが必要になります。

1-2 怒りで脳が萎縮する

認知リソースの低下は短期的な症状で、睡眠などの休息を適切にとれば回復できます。
しかし怒りのコントロール不良は短期的な問題にはとどまりません。
怒りの感情を適切にコントロールしなければ脳の萎縮を起こしてしまうのです。

感情などの本能は主に脳の扁桃体という部分が司っています。
扁桃体が脅威を感じるとストレスホルモンで知られるコルチゾールが分泌されますが、厄介なことにこの現象はループするのです。
つまりコルチゾールに対してストレスを感じてさらにコルチゾールが分泌されるということです。

このコルチゾールの過剰分泌が脳細胞の萎縮を引き起こす原因になります。
特にコルチゾールの影響を強く受けるのが前頭葉海馬です。
前頭葉の萎縮は理性的な判断力を低下させ、海馬の萎縮は記憶力の低下に繋がります。

因みに記憶というとテストなど物事の知識や認知症との関係といったイメージが強いですが、ぼくたちの人柄を作るのも記憶です。
そのため感情をコントロール出来ないと怒りっぽくなるなど性格が変わってしまう可能性もあります。

2 瞬間的なアンガーマネジメント

最も確実なコントロール方法は刺激に触れないことです。
つまりそもそものコントロールすべき感情を起こさないということ。
敵がいなければ戦う必要がない、戦わなければ負けることはありません。

孫氏の兵法みたいな感じだね

ただ怒りとは突発的に発するもので、避け続けていくことはなかなか難しいものです。
常に備えて対策してないといざという時に怒りに任せて衝動的に動いてしまいます
起きてしまった時の対処法を知っておくことで、大惨事にならずに済むはずです。

①物理的に離れる ②別の対象にフォーカス

2-1 物理的に距離を取る

怒りの感情は強力ですが、大きな波があります。
生じた瞬間はかなり強いものの、時間の経過と共に鎮静化していくものです。

怒りの場合は、たった6秒でその強さの大半を失うと言われています。
つまり6秒間だけでも怒りに従って行動しないよう抑えるだけで、気持ちはかなり鎮まるということです。
そのためにはまず自分の怒りを感じたら、いきなり反応するのではなく深呼吸を3回するクセをつけましょう。これだけで6秒は稼げます。

とは言え、目の前で悪びれもせず「何やってんすか?」的な表情を浮かべてる部下の顔を見たら怒りが再燃しかねません。
そこで、目の前から怒りの対象を消し去る、つまり対象から離れてしっかり気持ちを抑える時間を作るのがより効果的です。

2-2 意識を別のところに持っていく

怒りの対象から離れるというのが実践できない状況にある人も多いと思います。
そういう場合は意識だけでも怒りから遠ざける工夫をしましょう。

最も簡単なのは、この後に待つ楽しい予定を想像するという方法です。
「そんなの関係ないだろ」と思うかもしれませんが、これが意外と効果があります。
日頃から小さくてもいいので楽しみを持っておきたいですね。

そんな楽しみな予定がないという人は自分の人生の目的を考えるというのもオススメです。
怒りに従うことによって時間や体力、人間関係を棄損することになります。
それらのマイナスが自分の人生の目的に照らして許容できることなのかを考えるということです。
これを実践するためにも自分なりの生きる目的を常に意識しておくようにしましょう。

3 長期的なアンガーマネジメント

紹介した方法は怒りが生じてしまった時のその場の対策です。
余裕がある時は問題ないですが、いつでも冷静に怒りに対処できるわけじゃありません。
そもそも過剰な怒りが生じないような工夫も必要ということです。
最後に根本的な対策を紹介します。

①他人への過剰な期待を捨てる ②自己肯定感を高める ③寝る

3-1 過剰な期待が怒りを生む

「「普通」こんなことしないだろ!」と言って怒る人は多いと思います。
「これくらい出来て当然」「言われなくてもやるのが当たり前」という自分の考えと相手の行動のギャップが怒りを生むのです。

このことに気付ければ怒りというのがいかに理不尽なものか分かるでしょう。
力量や判断基準は人それぞれで、万人に通じる普通などほぼ存在しません。
あなたの思う「普通」というのは、あくまであなたの定規で測ったものです。
それに従えと言うのは傲慢で、やや自己中心的なことと思えないでしょうか?

または他人に対する期待が高すぎるという見方もできます。
つまり「これくらいのことなら出来るはずだ」と期待し、それを裏切られることで怒りを覚えてしまうということです。
いずれにしても理不尽には変わりありません。期待された相手にしてみれば迷惑な話です。
他人を変えたりコントロールすることはほとんど出来ません。
相手が自分の思うとおりの方法・水準で動いてくれるはずという叶わぬ期待を持たないようにしましょう

3-2 自己肯定感の低さも怒りのもと

怒りは防衛本能に起因する感情です。
「攻撃は最大の防御」と言いますが、自分の弱さを隠すには怒りというアウトプットをすることが最も有効な対策になります。

ではぼくたちは怒りによって自分の何を守ろうとしているのでしょうか?
それは(主観的な)能力の低さや自分の価値観プライドなどといったものです。
つまり自分に対する自信の無さや自己肯定感の低さから怒りが生じていると言えます。

自己肯定感は年を取るごとに高まっていくもので、若いうちほど低い傾向にあるようです。
年を取るのを待つというのも悪くはないですが、自己肯定感は高めることができます。
事実、若い人でも十分に高い水準の人もいます。自己肯定感を高める訓練もしてみましょう。

3-3 寝る

マインドセットも重要ですが、何より怒りのハードルに大きく影響するのは睡眠です。
睡眠不足の日には何となくピリピリして神経が過敏になっている感じがすると思います。
これは睡眠不足になると命の危険を感じ、防衛本能が作動してしまうためです。

睡眠不足を解消すれば怒りを感じなくなるかと言うとそうでもありません。
ストレスによる脳の萎縮で抑制が効きにくくなるのもありますが、怒りのハードルが低い位置に固定される点も問題です。

日頃から些細なことで怒りやすくなるってこと

感情は扁桃体から生じると解説しましたが、これは記憶を司る海馬に非常に近い位置にあり、強く影響を及ぼすと言われています。
そのため怒りという強い感情が伴うと「これに怒った」と記憶されやすいのです。
つまり一時的に下がったハードルが固定されてしまうということです。

このことから「1日くらい」と油断して夜更かししてはいけないことが分かります。
睡眠不足の悪影響は感情のコントロール不良にとどまらないので、常に確保するようにしましょう。

4 アンガーマネジメントとマインドフルネス

マインドフルネスの有効性を謳う書籍や研究が増えてきましたが、アンガーマネジメントもその1つです。
一般的に感情のコントロールとの関係では灰白質、とくに前頭葉の神経細胞の増殖効果に焦点が当たります。

しかしここでより重要なのはメタ認知能力の向上です。
メタ認知とは自分の状態を俯瞰して客観的に見る能力を言います。

怒りが生じた時の対処法を紹介してきましたが、そもそも自分の感情の状態に気付けなければ対策を講じられません
この「自分の怒りに気付く」という最初の段階のためマインドフルネスによるメタ認知能力の向上が重要なのです。

メタ認知が上手くなると「今日はピリピリしてるな」とか「こういう時に怒りやすいのか」などと気付けるようになります。
自分の状態や怒りのパターンに気付ければ、それに応じて適切な対応を講じられるはずです。
マインドフルネスについては以下のページで詳しく解説しています。

まとめ

アンガーマネジメントについて解説しました。
怒りのコントロールは多くの現代人が抱える問題です。
これが出来ないと思考力を短期的にも長期的にも落とすことになります。

マネジメントの方法は生じたその瞬間の対策と、普段から怒りを生じにくくする対策があります。それぞれ以下にまとめます。

〈瞬間の対策〉
・離れる:怒りが落ち着くまでの6秒間を何とかして稼ぐ
・トレードオフ:人生の目的に照らして必要な感情か、逆に足枷にならないか考える

〈マインドセット〉
・期待しない:怒りは相手への過度な期待と現実のギャップが原因。普通は存在しない
・自己肯定感を高める:自分のプライドや弱みを守るために怒りは生じる
・寝る:そもそもの怒りのハードルが下がる原因で、一度でも怒りを感じると固定されてしまう

これらの対策に併せて、マインドフルネスでメタ認知を鍛えることも重要です。
自分の状態を正確にモニタリング出来なければ、対策を講じる必要性も認識できないからです。
自分の怒りがどのタイプかを把握し適切な対策によって精神的に安定した生活を手に入れましょう。
てなとこで。