【○○万円で頭打ち?】人はお金で幸せになるのか|収入・資産と幸福度の関係

主にZ世代などの若年層が中心ですが、最近はバリバリ働いてお金をたくさん稼ぐのがいいって風潮も徐々に薄れつつあります。

何となく「とにかく稼ぎたい!」って価値観は一昔前のものって印象がありますよね。

しかしその一方で幸福度を考える時に「お金を持ってるか」という観点がよぎる人が多いのも現実です。

昔ほどではないにしろ、お金と幸福を結び付けて考える傾向はまだまだ残っています。

では実際にはお金を稼ぐことで幸福度を上げることは出来るのでしょうか?

そんなとこでこのページでは、お金と幸福度の関係について解説していきます。

お金を稼ぐと幸せになるという幻想

皆さんは今よりお金が稼げるようになることで、今以上に幸せになれるって思いますか?

もちろんこれは健康で文化的な最低限度の生活を送れる程度のお金を既に持っていることが前提です。

これを踏まえても多くの人が「イエス」と回答するところでしょう。

お金と幸福度の関係についての研究でも、多くの人がお金が幸福に与える影響を高く評価してることが確認されています。

研究の中で参加者は高所得者の幸福度を高く予測し、低所得者の幸福度を低く予測していました。

しかしこれは客観的な評価の結果で、実際には必ずしもお金が増えるに従って幸福度が上がることを示しているわけではありません。

イメージってこと

この研究では同時に各所得水準の人の主観的な幸福度も測定しています。

その結果は先のイメージには反するものでした。

低所得者の幸福度は他人がイメージで下した評価ほど低くはなく、逆に高所得者の幸福度は周囲のイメージほど高くはなかったのです。

誤解しないで欲しいのは、この結果は「他人が予測するほどお金の影響は大きくない」ということを表しているに過ぎないということ。

幸福度にお金が全く影響しないということではありません。

絶対値で見れば収入が多い人の方が幸福度は高いんだけどね

とは言えお金があればあるほど幸福になるというのは幻想でしかないということです。

日本の場合、年収700~900万円辺りで幸福度の増加は頭打ちになると言われています。

物価や経済状況などによって多少の上下はありますが、収入アップによる幸福度の増加に限界があることは日本に限ったことではありません。

これは世界共通の事実です。

お金は交換手段 使えば幸福度は上がる?

お金があればもっと幸せになれると多くの人が思うのは消費・生活水準を上げられるからでしょう。

お金は交換の手段であって、何か商品やサービスに変えて初めて価値が生まれるので、これは当然の考えです。

お金を持っていれば広い大豪邸に住めますし、高級車を何台も所有できます。

家具や家電を新調したり、洋服やカバン、時計なども今よりいいモノを買う余裕が生まれるでしょう。

「月収が5万円増えたらどうする?」なんていくらでも妄想は膨らむし、想像してるだけで楽しくなっちゃうよね

ただしこのような物質的な幸福には問題もあります。

高級品に限らず、買った瞬間や届くまでの期間が幸福(魅力)の最高潮で、そこからは下がる一方という経験は誰しもあるはずです。

このようにモノの消費によって得た幸福感は長くは続きません。これを快楽適応(ヘドニックアダプテーション)と言います。

それなりのグレードのモノで満たしていく過程で幸福度は増加しますが、その効果は一時的です。

そして満ちてしまえばお金が増えても物質的な消費対象が無いので、こうした幸福度の増加は享受しにくくなります。

飽きる度に買い直してたら即破産だしね

またお金やモノは地位財と呼ばれる性質があることも関係しています。

地位財:他人との比較によって良し悪しが相対的に判断される財(年収・家・車など)

年収1,000万円の人も年収1億円の人には見劣りしますし、庭付きの豪邸もプール付きの大豪邸には見劣りします。

上には上がいるので、どこまで行っても終わりのない軍拡競争であり、待っているのは勝利ではなく精神的・経済的な疲弊のみです。

一般に「お金持ち」と言われる水準に達することで自意識が変化し、この不幸な軍拡競争の参加者になってしまうことも幸福度に上限がある要因かもしれません。

しかしこの項の冒頭でも触れた通り、お金は使うことによって価値が生まれます。

そしてその使い方によっては長期的に幸福度は増加させることが出来るのです。

お金で買えるモノ、お金の使い道は何も物質的なモノを買うことだけじゃありません。

幸福度という視点で見た時にコスパの良いお金の使い方について、詳しくは別のページで解説します。

お金それ自体がもたらす幸福

お金はあくまでも交換の手段でしかないので、具体的な何かと交換しなければただのちょっと良質な四角い紙でしかありません。

「収入が増えたら○○を買って、どこそこに行って」と所得水準の上昇は消費水準の上昇の手段として考えるのが一般的です。

しかしお金を使うことでしか幸福度を変化させられないかというとそうではありません。

実はお金それ自体を持つことによっても幸福度をアップすることが出来ます。

ここまでの話は主に「収入」と幸福度の関係でした。

この関係においては一定の水準以上はお金が増えても幸福度には影響しないというのは事実です。

しかしお金を収入ではなく「資産」で見た場合はどうかというと、なんとこちらは増えるほど幸福度が上がると言われています。

つまりフローで見た場合は上限が低いですが、ストックに関しては上限が高く、おおよそ1億円くらいまでは幸福度も増すのです。

一番分かりやすい理由は何と言っても安心感の増加でしょう。

老後など実現していない不安は過大になりやすく、そうした不安は幸福度を大きく毀損します。

そういう漠然として実体のない不安を払拭することが出来る点で資産の増加は幸福度に寄与するのです。

因みに不安全般の対策について詳しくはこちらのページで。

また資産を増やして経済的に自立することでお金のために働くという選択が不要になり、自由に時間を使える点も大きいでしょう。

収入の場合は働き続けることが前提なので、この選択の自由による幸福というのは資産家だけが享受できる恩恵です。

収入については仕事の種類などで差が付いてしまいますが、資産に関しては生活(支出)水準のコントロールでいかようにも出来ます。

貯金体質を作ることは幸福度を上げる上でも非常に重要ってことですね。

お金で失う幸せにも注意

お金によって幸福度を上げることが出来るという点について解説してきましたが、注意点もあります。

というのもお金を得るごとにお金で得られる価値を幸せに結びつけやすくなるからです。

自分の得意な分野が幸福の実現や人生において有利に働くと考えたいのはお金持ちに限った話じゃありません。

自分の長所の影響は過大に評価し、短所は過小評価したいと考えるものです。

その方が精神的な健康を保てるからね

紹介したように物質的な消費を続けるか、資産を増やすことで幸福度を上げることができるのは事実です。

最初の項でも紹介した研究のとおり、生活全体の幸福度を聞かれた場合、さほどお金の多さや個別のモノは影響しません。

その一方でお金やモノに意識を向けられた場合、幸福度はこれらの多寡に影響を受けます。

これはフォーカシングイリュージョン(焦点効果)と言われる現象です。

つまり自分の資産状態や買ったモノを日常的に意識していれば、その影響で幸福度は高くなると言えます。

しかしこのような物質主義の代償として、人間関係を軽視しやすくなることには注意が必要です。

人はお金の画像を見せられたり考えたりするだけで、人に親切にしにくくなるという研究があります。

プライミング効果ってやつね

お金のかからない細やかな幸せやプライスレスな幸せに価値を見出しにくくなります

パートナーと河川敷に腰掛けて川を眺めながら話したり、家族と公園でピクニックしたりといったいわゆる庶民的な経験で幸福を感じられなくなってしまうのです。

お金がかかるけど持続しない幸福の代わりに、お金がかからず満たされる幸福を失うってことで、しかもこの価値観はお金を失ってしまったとしても元には戻りません

十分稼いでるはずのお金持ちは、ビジネスを辞めないのではなく辞められないのかもしれませんね。

もちろんそれ自体が楽しくてって人もいるだろうけどね

まとめ

お金と幸せの関係について解説しました。

お金と幸福度の関係が頻繁に議論される一方で、人間関係や時間と幸福度の関係を気にする人はほとんどいません。

それは恐らく議論の余地があるかないかの違いだと思います。

議論が起きるということは、賛成と反対の両陣営にそれぞれ一定数の人、そしてそれなりの主張があることが前提です。

収入が幸福度に与える影響はイメージほど大きくないですし、収入アップによる幸福度の上昇には限界があります。

最初は楽しい物質消費からも徐々に喜びを感じなくなります。終わりのない軍拡競争に参加してしまう点でも不幸です。

とは言えぼく個人としてはお金は必要だし大方の問題を解決することが出来ると考えています。

その必要性を否定して「お金では幸せになれない」という考えはお金を遠ざけるためオススメしません。

視点をお金に移すことで、焦点効果が生じて幸福度が高まるということもあります。

しかしお金があることで得られるモノがあると同時に失うモノ(プライスレスな幸せ)もあるのもまた事実です。

特に人間関係は人生において非常に重要な要素で、これを軽視してしまうと孤独な大富豪になってしまいます。

つまりある部分の幸福に資する一方で、ある部分の幸福は棄損するということです。

お金は大事だけど傾倒し過ぎない。これくらいの適切な距離感を保つことが重要でしょう。

てなとこで。

参考文献

エリザベス・ダン/マイケル・ノートン(著) 角川書店