貯金できない家計の問題点|貯める方法の基本と盲点【固定費見直しじゃ不十分】

「貯金は大事」分かっちゃいるけどなかなか出来ない。

そんな悩みを抱えてる人はかなりの数いるでしょう。

その証拠に貯金のための様々なテクニックを解説する指南書や記事が絶えずリリースされています。

しかし細かい手法の合う・合わないはあっても、貯金や投資に回す余裕資金を作る方法の基本は変わりません

「投資でお金を作ろう」ブームが起きて久しいですが、あくまでそのタネ銭たる貯金があることが大前提。

まずは限られた収入の中から貯金を作る基本中の基本について解説します。

1 家計簿はやっぱり必要だと思う

家計管理の定番と言えばやっぱり家計簿です。

ぼくは新卒で就職してからずっと家計簿をつけてるので、逆に家計簿無しで家計管理なんて怖くて考えられません。

しかし堅実さより面倒ささを優先してしまう人が圧倒的に多いのが現実です。

1-1 「家計簿の要らない家計管理術」は無意味

最近じゃ「メンドウな家計簿無しで」と銘打った貯金術なども見られますが、正直言って実効性は低いと思います。

「今月いくら使ったかな?」「あといくら使えるかな?」などと暗中模索で頻繁にお金の心配をする方がよっぽど時間と認知リソースの無駄遣いです。

そもそも「見」直すべき家計を可視化するのは当然のこと。少なくともぼくはそう思いますが、どうでしょう?

家計簿を使わない家計管理術はおおまかに以下のような流れです。

予算を決める→全額下ろして項目ごとに分ける→その範囲内で支出する→収まる→余った分は貯金できちゃう!

ツッコミどころは色々ありますが、1つ挙げるならそもそもの「予算」って何を根拠に立てるつもりなんでしょう?

「だいたい毎月これくらいだから」程度だとしたら皆さんが「けしからん!税金の無駄遣いだ」と批判する公務員と同レベルかそれ以下です。

完全に思考停止した前例踏襲だね

「この予算で収まれば〇万円貯金に回せる」って視点でもやはり予算の根拠としては不十分。

これから先行きが不透明な中で「毎月いくら貯金できれば十分」といった額はありません。

どうせ見直すなら徹底的にムダをカットして、滅多に見直しをしなくて済む完璧な予算と仕組みを作るべき。

その方が効率的です。

この後に続く家計の見直し術も全ては、現在の収支を「正確に」把握することが大前提になります。

1-2 クレジットカード明細を家計簿代わりにできるか?

最近では電子マネーやキャッシュレス決済が浸透してきているので、月末のカード明細を家計管理に役立てる方法はどうでしょう?

複数枚のクレジットカードを使って、予算ごとに管理する方法を推奨するFPなどもいます。

結論から言えばクレジットカード明細は家計簿代わりにはしない方がいいというのがぼくの見解です。

というのもクレジットカードでの支払いはシンプルに無駄遣いを助長しやすいからで、これは研究でも確認されています。

MITのMBAコースの学生を対象に、プロバスケットボールリーグの最終戦チケットにいくら支払う意志があるかをサイレントオークション形式で提示してもらった。

(参加者のうち1組は本当にチケットを貰えたので入札額は本気のもの)

支払方法で現金を指定されたグループは提示額の平均が28ドルだったのに対して、クレジットカードグループは倍以上の60ドルだった。

MIND OVER MONEY/クラウディア・ハモンド著

本来なら人間はお金の支払いによって痛みを感じます。脳の反応的に見て本物の痛みと言っても過言じゃありません。

しかしキャッシュレス決済など現金を伴わない支払いは別です。

まだ人の認識が追いついておらず、それをお金と認識できないせいで現金ほど支払いに痛みが起きないと考えられています。

そのせいで支払い意志額は現金の場合よりも圧倒的に高く、高額な買い物も簡単に決断してしまうのです。

その他にもクレジットカード決済にするほど、ジャンクフードなどの不健康な食品を選びやすくなる傾向もあります。

この実験は1991年のクレジットカード草創期に実施されたものなので、当時よりは現金に近い認識をしているかもしれません。

しかし支払いの決断が緩みやすいのは事実であり、家計改善の妨げになることもまた事実です。

現状では代替案はどれも微妙なので、家計簿アプリでも自作のエクセル表でも方法は何でも良いのでとにかく何か用意しましょう。

記録するのがめんどくさいなら、最悪レシートからATMの利用明細、領収書まで漏らさず取っておいて確認するでもOKです。

2 固定費の見直し

毎月決まってかかる固定費・経常的な支出は家計見直しにおいて必須項目です。

単価が高く目につきやすい上、一度見直してしまえば放っておいても余裕が生まれます。

見直し対象として定番のものは以下のようなものです。

住宅費(賃貸料)
スマホ料金
光熱水費
保険料
ストリーミングなどのサブスクリプション(定額)サービス
習い事やジム

既に払っているものを見直すことはもちろんのこと、固定費に含まれる支出の項目を増やさないことも重要です。

モノを所有することにメリットがないことは徐々に認識されつつあります。

しかし、未だに古典的な持ち家信仰は根強く、結婚や子供は一人前の証のような古い価値観を引きずってる人も多い印象です。

マイホームや車などをこれから買おうと思ってる人は本当に必要かじっくり考えましょう。

なお所有することのムダについては別のページで詳しく解説しているので、そちらも参考にしてください。

固定費は見直しのコスパはかなり良いはずですが、こんな簡単なタスクすらめんどくさがる不合理な人が多いよう。

そういう人はマネーに関するリテラシーや意識が低いタイプなので、残念ながらそもそもお金を持つ資質がないってことです。

3 本丸はラテマネー

ラテマネーという言葉を知ってますか?

実はムダの多い固定費と同じか、又はそれ以上に家計を圧迫してるものこそが、このラテマネーなのです。

毎朝出勤前にカフェに立ち寄って買うラテのような支出全般のことを言います。

具体的な特徴は①少額で②習慣化された③特別な喜びも痛みも伴わない出費のことで、ラテ購入に限りません。

準固定費と言い換えても良いでしょう。

ラテマネーの問題点は後から支出の問題点を振り返ろうとしても印象(思い出)に残ってないせいで矢面に上がりにくいことです。

これがいわゆる使途不明金に繋がり、家計の見直しや貯金の実現を阻むことになります。

貯金のためには家計簿が必須なのは、このラテマネーが主な理由と言っても過言ではありません。

月または年単位で積もったチリを目の前に突き付けなければ、そのムダの大きさを実感できないからです。

家計簿がメンドウという人は能動的にラテマネーを洗い出して、習慣自体を断っていくしかないでしょう。

ラテマネーの削減・支出の棚卸の仕方については別のページで詳しく解説しているので、そちらも参考にしてください。

4 ここまで来てやっと予算建て

固定的なムダと、ラテマネーのような準固定費的ななムダを洗い出した後で初めて予算を立てられます。

当初「毎月これくらい使ってる」と思ってた雑な予算よりもだいぶ縮減できてるはずです。

そこから予算を改めて設定していきます。

食費などは誰にでも共通する一方で、被服や娯楽などは生活スタイルによって必要か否かが変わるもの。

どんな支出項目を予算として設定するかを考える意味でも、家計簿で過去の支出傾向を把握するのはやっぱり重要です。

食費以外で万人が設定すべきとぼくが考える予算が「緊急・臨時支出費」の項目。

いつ発生するか分からないが、起きるとそこそこ家計にダメージを与えるような支出に備えるための費用で、以下のようなものが当てはまります。

ご祝儀や香典など冠婚葬祭費
家電の故障による修理、買い替え
病院への通院、入院費
事故などでの弁償や賠償

通院費は人によっては定期的に発生するものかもしれません。

また冠婚葬祭費は結婚の多い若年世代や亡くなる人が増える高齢世代では多くても、その間の世代は必要額が下がるでしょう。

このようにライフステージによって含まれる項目や必要な金額は変わりますが、予測不能なイベントに備えるものなので多めに取っておくのが無難です。

この辺りの変動がある支出傾向を正確に把握するため、ホントは1ヵ月分と言わず1年分、またはもっと長期で傾向を把握することをオススメします。

こうして予算を設定した先にあるのが貯金できる余裕資金になります。

5 貯金は先取り貯蓄で作るべき?

先取り貯蓄は貯金をする上で欠かせない方法であることは間違いありません。

収納がいくら多くても必ずその空間を埋めるようにモノが増えるのと同じく、お金もあるだけ使ってしまうからです。

「あと1万円月収が増えれば…」なんて期待を抱く人は多いですが、結局消費が増えてすぐに消えてしまいます。

この現象についてはパーキンソンの法則という有名な理論が説明しています。

つまり貯めたい分は別にして最初から総量を制限しておかない限り貯金は出来ません。残し貯めはまずムリです。

しかしながら非現実的な額での先取り貯蓄は取り崩しが頻発し、仕組みが崩壊する近道でしかありません。

絶対に歩みたくない近道だね

別口座や財形貯蓄に給与天引きしてしまい、簡単には引き出せないように強制する方法は確かに効果的です。

しかしそれはあくまできっちり予算建てをした上で現実的な額を絞り出した場合に言えること。

引き出せない定期預金に入れてしまったせいで手元の現金が足りなくなり、預金金利より高い利息でキャッシングをするなんてことになれば本末転倒。

予算建てから導いた貯金可能額が不十分と感じるなら、見直しのサイクルの2周目に入るのもいいでしょう。

しかし「これじゃあ目標の年100万円に届かない」などといった焦りは禁物です。

貯金に懸ける熱量が大きく、優先度も最高って人なら良いですが、そうでないなら我慢もすぐに限界が来ます。

そして本当に貯蓄意識や優先度が高い人ならそもそもこんなページを見る必要すらないはずで、見てるあなたは無理しない方がいい人ってことです。

結果的にメンドウだと思っていた家計や予算の見直しを何度もする羽目にもなりかねません。

現実的で無理のない、続けてるなんて意識もしないでいられるレベルで組むことをオススメします。

ちなみに貯金といっても単に貯めるだけではなく、「色」を付けて管理することも重要です。

特に貯金の優先順位が低く、いつも習慣化できずに挫折してしまうタイプには必須と言えます。

その方法については別のページで詳しく解説しているので、そちらも参考にしてください。

まとめ

貯金ができない家計体質の人が余裕を作る方法について解説しました。

まずは現在の収支を正確に把握し、見直しをすることから始まります。

ぼく個人としては家計簿で毎月管理することをオススメしますが、1回でキッチリした予算を立てられる(かつ守れる)なら無しでもいいのかもしれません。

固定費の格安プランへの見直しなどは定番ですが、やれることや捻出できる額は意外と限定的です。

それより多くの家計で根深い問題になっているのがラテマネーで、こちらが本命になります。

巨大な無駄遣いをしてる人なんて大富豪でもない限りほぼいません。

多くの家計を圧迫してる真の犯人は小さなムダの壮大なる積み重ねです。

この見直しが圧倒的に重要になるので、固定費の見直しはカットしてもこちらは必ず見直しましょう。

てなとこで。