【考えるだけムダ】不安感情の大きな問題点|無視すべき理由と5つの対策

不安や悩みを一切抱えずに生活できる人はほぼ皆無です。
負の感情を持つことは人間の心理的な特性からして、自然なことなので「ネガティブなせいだ」「ポジティブにならなきゃ」などと考える必要はありません。

しかしこれは不安をそのまま放っておいていいという意味ではないので注意してください。
不安や悩みをそのままにしておくと問題がどんどん大きくなっていってしまいます。
放っておくでもなく、考え込むでもなく適切に対処することが重要です。
このページでは、不安などの負の感情の手軽で効果的な対策法について解説します。

1 不安という感情の問題点

不安の一番の問題点は認知負荷が高く、日常の思考や自制心に影響を及ぼすことです。
認知負荷とは認知リソースの消費量のこと。
そして認知リソースとは頭(脳)の体力に相当するもので、日常の様々な思考や感情で消耗します。
生産性を高めたり、ダイエットや禁煙などの課題をやり遂げる上でも認知リソースのマネジメントは非常に重要です。

ダイエット中にストレスでやけ食いとかキレ食いするのは認知リソースの枯渇が原因だよ

不安などのネガティブなの認知負荷が高いのはその思考が膨張しやすいからです。
人間は放っておくとネガティブな思考を拡大させていく傾向があります。
これは本能的な反応で、自然界ではポジティブでいるよりネガティブな想像をして警戒心を上げた方が生き残りやすかったことが理由です。
しかし不安はリソースを圧迫し、思考の低下で起きた失敗などが新たな不安やストレスを生む負のループに陥ることにもなります。

毎日適切な睡眠をとることで認知リソースを回復することは可能です。
しかし不安が常態化してると回復した端から削られていくので、いくら回復しても焼け石に水状態になってしまいます。
つまり不安そのものに対処しなければ認知リソースを有効に使うことは出来ないのです。

また不安という感情が先行することで、多くの人が悩むある問題の原因になると言われています。
それが先延ばし癖です。
先延ばしは単に何も達成できないだけでなく、先延ばしをしてるという現実がストレスを生み、心臓に負担をかけるとも言われています。
不安でストレスがかかり、先延ばしでまたストレスがかかりと踏んだり蹴ったりですね。
先延ばしの原因や対策について、詳しくはこちらのページで解説しています。

2 不安は考える意味がない

不安、心配、気掛かりなどは似たような意味で用いられます。
これらの共通点は未だ起きていない、将来起きる「かもしれない」ことについて期待とも恐怖ともつかない漠然とした状態を指します。

2-1 考える意味があること・意味がないこと

不安は特に悪いことが起きる可能性があるときに使われることが多いですが、どちらにしても不確実なことです。
何か悪いことが起きてしまった場合には可能な限りの対策を施すのは必要です。

しかし未だ起きてもいないことに対して予防する以上の対策は出来ません。
出来ることがあるなら可能な限り対策すべきですが、出来ることが無いのに頭を悩ませても何も生み出さないことは認識しておきましょう。
実現してないことに対して出来ることはほとんどないということに加えてもう1つ、不安に頭を悩ませるのが無意味な理由があります。

2-2 不安はほとんど実現しない

それは不安の9割以上は実現しないということです。
研究によると、抱えていた不安・心配事がその後に実際に現実のものとなってしまった割合は何とたったの4%でした。

発端となった小さな不安のタネは確かに現実となる可能性が高いものかもしれません。
しかしそこから先には根拠がなく、派生して生まれた単なる妄想です。
不安のタネが全体の4%になるほどの量と考えると、いかに負の感情が膨張しやすいか分かります。

そしてこの事実を知ることで、不安に頭を悩ませて時間や労力を消費することがいかにムダなことであるか理解できるでしょう。
不安とは、その多くが自分のネガティブに傾きやすい人間の心理特性が生み出した幻影みたいなものです。

2-3 不安は止められない

とは言え「考えてもムダ」と言われるだけで不安が無くなることはありません。
これは人間の本能的な反応だからです。
既に解説したとおり、進化の過程ではあらゆる危険や最悪の事態を想定しなければ命を落とす危険がありました。
なので「基本的にネガティブな想定をする傾向や特性が生き残ってきた」というのが進化心理学的な見方です。
つまり不安やストレスなどを浮かぶのを止めようと考えるのは無謀で、それらに対処する方法を考える方が合理的と言えます。
以下で解説する不安の効果的な対策は以下の5点です。

①可視化する ②細分化する ③先を見ない ④暇を無くす ⑤寝る

対策1 抱えてる不安を書き出す

既に解説したとおり、負の感情は放っておくと無限に膨張していきます。
頭の中に留まっていることで膨張を加速してしまうので、そういうことは書き出して可視化しましょう。
可視化することで膨張が収まり、無限でないことも実感できるので、落ち着いて対策を検討しやすくなります。
因みにこれは仕事の量でも同じことです。
膨大な仕事を抱えてるように思えてもいざ書き出してみると片手で数え切れる程度ということはよくあります。

因みに不安を書き出す時は手書きよりスマホやPCなどのタイピングにした方が良いでしょう。
手書きでは脳のブローカ野が活性化し、記憶に残りやすいことが研究でも確認されているからです。
そのため嫌なことをアウトプットする方法として手書きは不向きと言えます。
忙しい中で書き出すことは手間と時間のムダに感じるかもしれませんが、過大評価しながら進めるより効率的だと思います。

ぼくはEvernoteに「不安・考え事リスト」を作って可視化し、対策が出来るものと考えるだけムダなものとを区別しています。
そして解決できるものは先延ばしにせずすぐに対処してしまいましょう。

因みに考えるだけムダなモノもリストに残しておくことをオススメします。
後々見返すとそのほとんどを時が解決してくれてたり、どうでもよくなっていたりします。
不安のほとんどは実現しない、考えるだけ無意味ということを実感する意味でもリスト化は有効なテクニックです。

対策2 チェックポイントを作る

遥か彼方、かなり遠い将来のことだと、単に可視化しただけではなかなか不安が取り除けないのが現実です。
可視化したところで今その不安の対象に直接的な影響を及ぼすことが出来ないからです。
そういう時はそのゴールまでの間に細かくチェックポイントを設けましょう。
チェックポイントを作ることは以下の2つのメリットがあります。

①漠然としたものが現実的なモノになる
②対策できることとできないことの区別が明確になる

高い山に登るとき、単に「麓から山頂まで6時間です」とだけ言われると果てしなく感じて萎えてしまいます。
これが単に不安やタスクを可視化した状態です。

しかし「分岐まで30分」「次の小屋まで1時間」と区切ると現実的な目標ができて、それを辿ってる内に気付いたら6時間の道のりを踏破できてしまいます。
だいぶ先の気掛かりなことや遠い目標があるならプロセス、To Doを細かく区切って達成具合を確認できるようにする
こうすることで不安が漠然としたものでなくなります。

またザックリとした不安を書き出しただけでは不確定・解決不能な要素が一部含まれているだけでまるまる解決不可と判断してしまいがちです。
人間の基本性質は怠け者なので、「自分じゃどうにもできない」と簡単に責任を放り出してしまいます。

会社とか上司とか政治とか育ちとかのせいにしてね

段階・要素に細分化すると、「ここまでは対策できること」「ここからは考えることがムダなこと」という区別が明確になります。
こういう意味でもメリットがあるのでぜひ細分化してみましょう。

対策3 山頂を見ないという方法も

アドラー心理学の考え方によると、不安という感情は今に最大限集中できていないことが原因とされています。
未来は現在の延長にあると考えるのが一般的ですが、実際には明確な道は無く、どこに向かって歩くかは決まってませんし、先も見えていません。
スポットライトを遠くから当てて自分を中心に周囲(過去と未来)がうっすら見えている(ような気がしている)だけです。
なまじ先が見えてるような気がするから不安に苛まれてしまうのです。

これは足元を見ずに常に山頂だけを見つめて歩き続けるようなもので、山頂に辿り着く前に足元の木の根に躓いてしまいます。
今に集中するというのは、チェックポイントを最大限に細かく設定して、一歩先しか見ないような感じです。
そうすれば今自分がすべきこと目を向けるべきことが1つになり、自ずと不安に思うことはなくなります。というより不安の対象(未来)に目を向ける余地がなくなります。

その今をどう生きるかと言えば、自分が今思うように生きる。従う指針は自分の価値観他者への貢献のみということです。
この「今に集中する」という思考を獲得するにはマインドフルネスがとても有効なので、ぜひ試してみてください。
信じられないくらい多岐にわたるマインドフルネスのメリットや基本的な方法については以下のページで解説しています。

全然スピリチュアルじゃないから安心して!

対策4 とりあえず暇を無くせ

とは言え「今に集中するようにしよう」と思ってもなかなか出来るものじゃありません。
「意識する」みたいな具体性のないことは実用性に乏しいからです。

マインドフルネスは脳を構造的に変えて思考に影響するし、色んな事に気付けるから是非やって欲しいけど

そのため今に集中できる具体的な対策・行動も必要になります。
具体性を持たせるという点でオススメしたいのは何か熱中できる趣味を見つけることです。
不安などの負の感情は思考を占拠して認知リソースを浪費しやすいと解説しましたが、夢中になれることはそれを凌ぎます。

脳は同時に複数のことを処理することは出来ず、スポーツでも音楽でもゲームでも、何かに熱中してる瞬間だけは不安やストレスを感じないはずです。
不安のような負の感情というのはふとした時、つまり簡単に言えば暇な時に湧き上がってきます。

「悩むのは暇だから」ってよく言うよね

マインドフルネスを実践してみると実感しますが、脳は同時に複数のことが処理できないのと同時に何も考えないことも出来ません
つまり考えることや熱中する対象がないからこそ、その隙を突いてネガティブな思考を始めてしまうということです。
既に説明したとおり、進化の過程からネガティブな想定が優先されやすいので、これは仕方ありません。
浮かばないように抑えるのではなく、そもそも考える余地を与えないことこそが重要です。

「今に集中」などと漠然と考えるより、具体的な「何かに集中」すること、そんな対象を見付けることをオススメします。
人間は身体を動かしながらネガティブなことを考えるのが苦手だと言われてるので、受動的なメディアやジッと考えるタイプのものより、能動的な活動が適してるでしょう。
特に運動はそれ自体にもストレスや不安などネガティブな感情を軽減する効果があるので一石二鳥です。

つまり「健全な精神は健全な肉体に宿る」ってこと

対策5 寝る

不安に限らず人生全体の基本中の基本ですが、最後に紹介する不安対策は寝ることです。
人間とは不思議なもので、不安を膨張させやすいくせに、一方で睡眠中にはネガティブな感情を整理し消去します
恐らくは、生き残るために考える必要のない対象になったと判断されてしまったら、認知負荷の高い負の感情は重荷でしかないからでしょう。

ここまで紹介してきたような可視化や他の対象への熱中によって、なるべく不安を意識の外に出しておくようにすると、脳に不要な感情・記憶であると認識されやすくなります。
そこでしっかりとした睡眠をとれば、スムーズに記憶の消去が行われ、不安に苛まれ続ける心配も要らなくなるのです。

これまで紹介した対策を講じた上で、ということが前提ですが、「嫌なことは寝て忘れよう!」くらいのマインドでも十分でしょう。
因みに言うまでもなく睡眠の重要性は不安の対処だけではありません。このことについて詳しくはこちらのページで解説しています。

まとめ

不安のデメリットと効果的な対策について解説しました。
不安は認知負荷が高く日常の思考に悪影響を及ぼすので、なるべく解消しなければいけません。
今回紹介した対策は以下の5点です。

①不安を書き出して可視化する
②対象までの道のりにチェックポイントを作り細分化する
③先のことは見ず、目の前のことに集中する
④熱中できる趣味などの対象を見付ける
⑤寝て忘れる

頭の中だけで考えているとネガティブ思考が悪さをして、不安をドンドン膨張させてしまうため、少なくとも可視化だけは確実にすべきです。
そしてそれでも不安が拭えないなら、それを解決するまでのチェックポイント・ロードマップを作りましょう。

対策3のアドラー心理学の考え方は吸収するまで年齢の半分の期間を要すると言われてるので、即効性はありません。
アドラーは心理学と言うよりやや哲学的な要素が強いですが、1つの考え方としてマインドを身に付ける価値はあると思います。

何より簡単で実用的な対策は何か夢中になれることを見付けることです。
これは決して生産的な活動である必要はないとぼくは思います。
現代人は何か価値や意義があるものだけを重視する傾向がありますが、そのせいで不安に襲われるくらいならゲームでも漫画でも好きなことをやった方が断然マシです。

因みにお金に関する心配や不安は特に認知負荷が大きく、しかもこれは可視化してもどうにもならないことが多いです。
お金に関する不安や心配は個別に対策を講じるしかありません。お金の心配への対処法についてはこちらのページで解説しています。
てなとこで。

参考文献

嫌われる勇気 岸見一郎/古賀史健 ダイヤモンド社