【買い物の行動経済学】判断ミスを引き起こす人間の心理的な弱点6選
将来への不安に備えて、日頃から貯金をしようと努力してる人は多いと思います。
貯金をする上で非常に重要な支出のコントロールを実践する具体的な方法についても以下ページで解説しました。
しかしこうした工夫をしても財布の紐を締めることが出来ないという人も多いんじゃないでしょうか?
それは売り手側が商品やサービスを買わせようと躍起になっているからです。
しかもただ強引に売り込むのではなく、人間の心理的な弱さを巧みに利用しているので、なかなか抗うことが出来ません。
「ムダ遣いをしてないのに何故かお金に余裕がない」という人は非常に多いです。
ミステリーのように感じてるかもしれませんが、お金に余裕がない人はほぼ間違いなくムダな買い物をしています。
ただムダな買い物を必要な買い物と誤認させられていて、そのことに気付いてないだけです。
そしてその誤認を生むのもまた、先の心理を逆手に取ったマーケティング手法なのです。
何も知らなければ抵抗することなく簡単に財布を開いてしまいますが、知っていれば一旦立ち止まって冷静に考えることが出来るようになります。
このページでは、以下に掲げる6つの判断が狂わされやすいポイント・人間の心理的な弱点について解説します。
①比較しないと考えられない
②損失が怖い
③金銭感覚が異なる財布
④いい感じの数の選択肢
⑤寝る前みんな弱い
⑥お金の悩みを抱えてる
①絶対的な判断が苦手
何かを評価する時、他のものや人と比べて判断することが多いと思いんじゃないでしょうか?
このように比較や比率などで物事を把握しようとする傾向を相対思考と言います。
これは脳の負担を軽くするショートカット機能の1つです。
全ての物事に対して絶対的な判断を下そうとすると、脳のエネルギーはもちろん時間も非常にかかり、非常に非効率になります。
判断を効率的に行う上で便利な思考ですが、これに頼り過ぎてしまうのも考え物です。
自分で判断する習慣を失い、相対思考を逆手に取ったマーケティング手法にハマりやすくなる危険があります。
相対思考が買い物に表れる最も分かりやすい例がセールです。
本来はモノにそれだけお金を払う価値があるか、つまり価格と価値の比較で判断しなければいけません。
しかし多くの人はそれをサボって元値と割引価格の比較でお買い得かを判断してしまいます。
また人気商品、ランキング、レビューなどを参考にするのも相対思考の表れです。
自分にとって必要かという絶対的な判断をすべきところを、他人の評価に任せてしまっており、買い物の失敗や不要なモノを買う原因になります。
これらを含め相対思考をターゲットにしたマーケティング手法について、詳しくはこちらのページで解説しています。
②「損する」と思うと冷静さを失う
脳は報酬に反応しやすいと言われますが、実は損の方により強く反応し、これを損失回避性と言います。
500円の得で感じる喜びの大きさと、500円の損で感じる悲しみの大きさは同じではありません。
損失は利益の倍近い大きさであり、これが損失への反応の強さに繋がっています。
これだけ過剰に反応してくれるならマーケティングとして利用しない手はありません。
そして実際に様々な角度でこの損失回避性が利用されています。
最も分かりやすく損失を強調した販売手法の例が危機感を煽り安全や安心を売る商売です。
保険やセキュリティといった商品を扱う場合によく利用されます。
また損失とは身の安全やお金などの資産を失うことだけではありません。
メンタル面での損失も同様で、買い物の失敗を避けようとする心理もまた損失回避性の現れです。
そしてこうした心理もまた売り手側は上手く利用し、「納得のいく買い物が出来た」と消費者に上手く思い込ませています。
表面的には全く損失の存在をチラつかせることなく焦りや不安を煽り、購買行動に繋げさせる方法もあるので気を付けなければいけません。
そうしたものも含めてこちらのページで詳しく解説しています。
③心の中での予算分け
人間は無意識のうちに心の中に複数の財布を持って使い分けを行っていて、心理会計またはメンタルアカウンティングなどと言われています。
予算建ては健全な家計管理の基本なので、自動で予算分けをしてくれると言うと良いことのように思えるかもしれません。
しかし実際にはこれが多くの人の浪費を生む原因になっています。
心理会計の問題点は金銭感覚や判断基準が財布ごとに異なっているということです。
そのせいで、ある場面では合理的な判断が出来るのに、別の場面では不合理な判断をしてしまうということが起こります。
分かりやすい例が日用品費とレジャー費です。
日頃は10円の節約のためにスーパーをはしごして、「ハーゲンダッツなんて高くて買えない!」って言ってる人が、旅行先ではただのソフトクリームに500円とか出したりします。
企業側としてはレジャー費・特別費などのように金銭感覚が狂ってる費目は非常にありがたい存在と言えます。
値下げ競争などの消耗戦を繰り広げずとも、ここに分類されるように商品を位置づけるだけで割高な商品でも簡単に買わせることが出来るからです。
逆に必需品や日用品に分類されることにもメリットがあります。
上記のような贅沢品は不景気になると削られてしまう一方で、必要経費はなかなか削減の対象になりません。
本来は贅沢な支出にも関わらず、必需品・日用品の立場を確立した分かりやすい例がマイカーです。
タクシーは贅沢費に分類されるため使うのが躊躇われますが、それより大きなコストのかかるマイカーはそう思われません。
このように一度当たり前という立場になってしまえば、どれだけ生活を圧迫しててもその立場を脅かされることなく長く居座ることが出来ます。
ニンジンを買うのでも、旅行をするのでもお金は同じお金であり、シーンによって価値が変わることはありません。
そのことをしっかり念頭に置いておくようにしましょう。
④適量の選択肢
人間は選択肢を与えられるとその中から選ばないといけないと思い込む性質があります。
これもまた脳の省エネ戦略の1つです。
同じジャンルの商品Aと商品Bの良し悪し、どちらを買うかという選択は比較的かんたんに行えます。
しかしその2つの商品の比較に比べると、それを「買わない」という選択肢は異質で比較が困難です。
脳のエネルギーを節約しようとすれば、簡単に比較できる方を選ぶことになるでしょう。
様々なグレードの商品を取りそろえるのは、買わないという選択肢に意識が流れるのを防ぐ効果もあるということです。
一方で選択肢が多過ぎると、買わないという選択をしやすくなります。
これは選択のパラドックスという有名な現象です。
一見すると豊富なバリエーションを用意した方が、より幅広い人のニーズを満たせて売上が上がるように思えます。
しかし商品の種類があまりに膨大になると、それぞれを比較検討するために相当な思考力を使わなければいけません。
これらを全て検討するよりは、買わないという選択の方が楽なので購入を辞めてしまうのです。
売り手サイドは消費者に買わせるためには適正な数に商品ラインナップを抑えなければいけません。
逆に消費者はメーカー、値段、バリエーションなど出来るだけ多くの候補に触れて、検討するのをめんどくさく感じる状態に持っていけば買わなくて済むでしょう。
⑤人間が最も弱い時間
寝る直前は脳の疲労もピークに達しており、ほとんど正常な判断力は残っていません。
そのため紹介した心理的な弱点も露呈しておりワナに引っかかりやすいですし、勝手に自爆もします。
夜遅くに買い物をして失敗したり余計なモノを買ってしまったことがある人はかなりいるでしょう。
あとで冷静に読んだらめちゃめちゃ恥ずかしい赤裸々なメールを送るのとかもいい例だね
このことが分かっているため、大手のネットショッピングサイトの大規模セールは夜に始まり夜に終わることが多いです。
開始のタイミングと終わりがけの駆け込みでサイトを訪れる人は多いと思います。
そのタイミングを判断力の鈍った時間に当てることで売り上げが伸びているのでしょう
特に金曜日の夜など休日の前日は翌日への期待で気分が高揚し、判断が甘くなりやすい傾向にあります。
機嫌が良い時に頼まれごとの安請け合いして、後悔するという経験は誰しもあるでしょう。
そんなイメージです。
また夜に限らずとも寝不足であったり、思考力をムダ遣いしてれば日中でも判断力は低下してしまいます。
思考力が弱ってる時間に判断を行わないようにすることはもちろん、思考力を鈍らせないように注意することも必要です。
なお思考力を維持する重要性は買い物の判断に限りません。そのことについてはこちらのページで解説しています。
⑥お金の心配は強力
思考力を浪費するものの代表例がストレスや不安といったネガティブな感情で、中でもお金の心配は買い物の判断を狂わせる重大な要因です。
他の心配事や不安からは抜け出せても、お金の心配から抜け出すのは簡単ではありません。
文明社会を生きる上でお金と無縁で生活できる人は皆無だからです。
それだけに絶大な影響力を持っていて、その悩みはワーキングメモリを大幅に占拠します。
つまりお金の心配がある人は、いくらしっかり寝て睡眠不足を解消しようとも常に判断が普通の人より鈍くなるってことです。
判断力が鈍った状態で営業マンと話をすれば、間違いなく心理的なトリックにも引っ掛かりやすくなります。
そうしたムダな買い物がさらに思考力を圧迫し、次の買い物の判断を間違えさせるという悪循環を生んでしまうのです。
こうした悪循環は欠乏マインドのワナと言われており、詳しくは以下のページで解説しています。
お金周りはワナばかり
お金の心配があると、目先の金策を優先し長期的な視野に立った合理的な選択ができなくなってしまうという点も問題です。
スキルアップや資格取得といった将来の収入アップに繋がる自己投資にもお金を使うのを躊躇うようになってしまいます。
お金を使って失うだけでなく、同時に入ってくるお金を失ってしまうのです。
まとめ
買物の判断が狂いやすいポイントについて解説しました。
このページで紹介した判断力が低下してしまう人間の弱点は以下の6点です。
①相対思考:何かとの比較で判断してしまう
②損失回避性:「損をする」と言われると敏感に反応してしまう
③心理会計:金銭感覚が異なる複数の財布を持っていて合理的な判断が出来ない
④選択肢のワナ:選択肢があると選択してしまう
⑤夜:脳の疲労もピークで自制心が働かず、適切な判断も出来ない
⑥欠乏:お金の心配が常に思考力を圧迫し、正常な判断力を失う
相対思考と損失回避性については別のページで個別に解説してることからも分かるとおり、この2つを利用したマーケティング手法は特に多く、大きな弱点と言えます。
ただし、もちろんこうした心理的な弱点を把握しておくことは重要ですが、それに対処するための思考力を減らさない根本的な対策の方がもっと重要です。
お金の心配は重大な悪循環を生むので特に気を付けなければいけません。
てなとこで。
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