投資信託とETFは何が違う?|2つの共通点と6つの相違点【どっちが最適?】
庶民の身近な投資手法としてオススメされる投資信託とETF(上場投資信託)があります。
いずれも個別の企業の株式を買うより手軽かつ気軽でリスクも抑えられたものです。
このように個別株との対比で紹介されることが多く名前も似ているので、これら2つの間の相違点についてはよく知らない人も実は多いのではないでしょうか?
投資信託とETFには共通する部分と異なる部分があり、投資の手法に関わるものから適用される制度まであります。
これらの共通点と相違点を押さえることで、それぞれどういう特徴があるものか、自分に向いてるのはどちらかを判断する基準になるはずです。
1 投資信託とETFの2つの共通点
まずは投資信託とETFの2つの共通点から解説します。
1-1 小口資金から始められる
冒頭でも軽く触れた通り、投資初心者でも比較的手軽に始められるという点で一致しています。
日本の株式市場では単元株制という制度を採っており、個別の株を購入する場合は最低でも100株購入しなきゃいけません。
1株たった1,000円の銘柄でも、最低単元で購入するのに10万円ものお金が一括で必要です。
あまり投資に充てられる資金が多くない個人投資家にとっては、なかなかのハードルと言えます。
また価格変動のインパクトが大きい点も初心者向けとは言いにくい部分です。
数円の変化も単元で見れば影響は100倍なので、これはある種のレバレッジ(てこ)とも言えます。
上がれば利益の増加も100倍ですが、それは下落した場合でも同じことで、1点(社)にまとめて資金を投じるのは気が休まりません。
買付け価格1円の差にシビアになって、買い時を逃すなんてこともザラです。
その点で投資信託やETFは購入の単位が小さいので、少ない資金から始められて、金額変動による心理的な負担も小さくできます。
投資信託やETFを投資初心者向けの金融商品かのように記載しましたが、決してそんなことはありません。
中~上級者でも投資信託やETFを中心に据え、個別株は投資資金の一部のみに抑えてる人が結構います。
かく言うぼくもその1人です。
1-2 ドルコスト平均法の活用
いきなり小難しそうなワードが飛び出しましたが、その中身は単純なものです。
日本では定額購入法と言い直されることもあります。
投資に関する用語の中でも基本的でかつ非常に重要な考え方なので、ここで押さえておきましょう。
経済情勢が今後どのように推移するか、もっと近い将来で言えば明日の株価が上向くのか下向くのか、誰にも正確なことは分かりません。
「安く買って高く売る」が投資の鉄則ですが、実は今が安いのか高いのかなんてことは後になって振り返るまで誰にも分らないってことです。
なので安いと思って1点集中で資金を投じたら下落し、高値と思って売ったらまだ上がったなんてことはザラに起こります。
そんな不確実な判断のコストやリスクを減らす方法がドルコスト平均法です。
具体的には「毎月いくら」などと期間と金額を固定し、定期的・機械的に購入を進めていきます。
こうすることで相対的に高い時は少なく、安い時は多く購入することになり、1単元当たりの単価を平準化することができるのです。
個別株でこれをやろうとすると非常に膨大な資金が必要になります。
しかし単価や単元が小さい投資信託やETFなら誰でもこの恩恵に浴せるのです。
ちなみにこの方法の名前が何故ドルコスト平均法なのかという疑問が解消した人は少ないでしょう。
というより多分ゼロだろうね
ぼくもそうでしたが、どうやら購入費用のことをアメリカでドルコストと表現するから、というだけのことみたいです。
そのため同じ方法論をイギリスではポンドコスト平均法と言い、日本では単純に購入費用平均法と言います。
2 投資信託とETFの6つの相違点
続いて投資信託とETFの相違点について解説していきます。
投資信託と同じ構成のETFも存在することが多く、どう違ってどちらが良いのか悩む人も多いはず。
ここで紹介する相違点を参考にすれば、どちらが自分の投資スタイルに向いてるのか判断できるでしょう。
2-1 取り扱いファンドのラインナップ
投資信託は非常に沢山の種類がありますが、それに対応するETFもたいていは存在します。
その全てを網羅してるわけじゃないので、商品ラインナップの幅で見ると投資信託の方が豊富ということです。
ただ選択肢の多さの違いは大した問題ではありません。
というのも投資信託でもETFでも選ぶべきはインデックスファンド一択で、これならどちらでも網羅しているからです。
ファンドマネージャーという一応「プロ」と呼ばれる人が独自の分析やテーマに基づいて運用するアクティブファンドもありますが、これは考える必要はありません。
市場平均という一見すると平凡な利益を目指すのに甘んじるべきなのには理由があります。
これについては投資信託の選び方として別のページで解説してるので、興味のある人はご覧ください。
2-2 手数料
同じ資産クラスや銘柄で構成されている投資信託とETFでも、実はかかる手数料が異なります。
2-2-1 売買にかかる手数料
投資信託もETFも買う時と売る時の両方で手数料がかかりますが、投資信託の場合はこれらの手数料のかからないノーロードが今は一般的です。
一方でETFの場合は株の売買と同じ扱いなので、売買手数料は取引する証券会社によってはかかることがあります。
ネット証券の多くは一定の取引額までは手数料がかからないところが多いので、大抵のETFにも売買手数料はかかりません。
つまり選ぶファンド次第ですが、売買手数料については大きな差が無いと言えます。
ただし最近流行りの米国を含む外国株・ETFについては手数料の取り扱いが国内のものと別になっている証券会社がほとんどです。
一部のメジャーな外国ETFのみ売買手数料フリーという証券会社もあるので、有利なところを探してみてください。
2-2-2 信託報酬・経費率
長期投資においては手数料の中でも特に保有期間中にずっとかかり続けるものが特に重要です。
投資信託の場合は信託報酬と言い、ETFの場合は経費率と言われます。
一般的に同じ指数ならETFの経費率の方が投資信託の信託報酬よりも安く設定されています。ものによってはその差が倍くらいになるものもあるほどです。
つまり売買手数料の条件が同じなら経費率の安いETFの方がコスト面では有利なので、手数料を最重要視するならETFが適してるでしょう。
ただしこの後に紹介するポイントの中には投資信託の方が有利なものもあります。
性急に判断せず、全体像を把握してから慎重に判断することをオススメします。
2-3 NISA区分の違い
NISAとは少額投資非課税制度の略称で、今となっては知らない人の方が少ないかもしれません。
投資利益が非課税になるなど有利な条件が設定されていて、iDeCoとともにNISAをオススメするFPも増えてきました。
(成人向けの)NISAには大まかに①一般NISAと②つみたてNISAの2種類があります。
投資信託はつみたてNISAの対象ですが、一方でETFの場合は個別の株式と同じく一般NISAの対象です。
これら2つのNISA区分は年間の投資金額の上限と非課税になる期間が異なります。
年間で投資に回せる金額や投資スタイルによってどちらが自分にとって有利かは異なるでしょう。
投資資金が多く、非課税になる期間内(比較的短期)に売買するスタイルの場合は一般NISA。
逆に投資資金が少なく、非課税期間中に売買する意志がない場合にはつみたてNISA向きといった感じでしょう。
ちなみに最近の投資やFIREブームで株式ファンドの年率リターンは5%程度と解説されています。
しかしこれはETF・投資信託を単純に保有して得る配当だけじゃとても達成できません。
5%のリターンというのはキャピタルゲイン(値上がり益)も加味したものだからです。
金融資産の増加という点では売買して現金化する必要はありませんが、非課税という利点を活かすなら配当にしか適用しないのは旨味が少ない。
しかも投資信託の場合、配当も基本的には自動で再投資に回されるので、そもそも課税所得は発生しません。
逆に本当の長期投資の後に売却するのであれば、保有期間はNISAはもちろんつみたてNISAの非課税期間よりも長くなります。
NISA口座で積み立ててきても結局は最後、売却時にキャピタルゲインに課税される運命。
違いとして一応は紹介しましたが、長期投資が前提の場合、NISA口座で運用するかどうか自体あまり重要じゃないってことでしょう。
2-4 税金の問題
NISAの枠内のみで運用する場合は関係ありませんが、税金は投資において非常に大きな影響があります。
なにせザックリ儲けの20%近くを持っていかれてしまうんですから。
ちなみに投資利益にかかる税金を安くする方法については別のページで解説しています。
始める前は「NISAの枠内だけ」と思っていても、投資額が徐々に増えてきて税金が関係してくることもあるかもしれません。
投資信託でもETFでも配当が発生しますが、その取り扱い方が違うために税金のかかり方、延いては投資成績にまで影響します。
ETFの場合はトレードによる値上がり益もあり得ますが、長期投資を前提にするなら頻繁な売買は論外なので、配当に限って解説します。
投資信託の場合、ファンドが保有してる株の配当などの利益は振り込ませず、自動的に再投資に回す選択が可能です。
この場合は投資家の手に利益が渡らないため、所得(利益)は実現せず税金は発生しません。
一方でETFの場合は配当がすぐに投資家のものになるので、受け取りの度に税金が発生します。
投資においては時間と複利の力を活かすことが投資成績を大きく左右するため、都度税金がかかる方が後でまとめて払うことになるより不利です。
つまり税金面で見ると投資信託の方が有利と言えるかもしれません。
また外国株のファンドを保有したい場合、ETFの購入には売買手数料のほかに現地税や為替手数料も考える必要があります。
とは言ってもこれらのコストが信託報酬・経費率の間の大きな差を埋めるほどかと言うと怪しいところ。
投資信託とETFにかかるトータルコストの比較・検証については別のページで解説してるので、コストが気になる人は参考にしてください。
2-5 細かい投資額の調整
個別株と比較した場合で見れば、投資信託もETFも購入単価が低いという点で共通です。
しかし投資信託とETFとでも最低購入額の単位は異なり、投資信託の方が細かい調整が出来ます。
ETFの場合、ものによっては1単元が数万円だったり、最低10株単位など、やや単価が高いものがあるのです。
ポートフォリオ(資産の構成)にこういうのが含まれてる場合、投資資金の範囲内で上手く調整する必要があります。
その点、投資信託であれば金額単位での購入ができるので、自分の投資資金に合わせた細かい調整が可能です。
ただしETFの場合でも、購入のタイミング・頻度は自分次第なので、2ヶ月に1回などにして資金とのバランスを調整することもできなくはないでしょう。
2-6 ルールのコントロール
投資に関するページで何度も解説していることですが、投資の成功・失敗を分ける重要なポイントが心理面のコントロールです。
この心理の影響のせいで、多くの投資家が決めたルールを徹底できずに失敗していきます。
投資の成否と心理の関係について詳しくは以下のページで解説しているので参考にしてください。
投資信託とETFには、この心理面の影響とルールのコントロールという点で重要な違いがあります。
投資信託の場合は設定した金額で機械的に購入をしていくので、心理面の影響を挟み込む余地はほとんどありません。
家事や育児、仕事や勉強など、色んなタスクで忙しい現代人にとっては自動化による効率化も1つのメリットと言えるでしょう。
しかしETFの場合は個別株と同様に株式市場で自分のタイミングで購入することになります。
この柔軟性が先ほど解説したようなメリットを生むことは確かですが、一方で心理面の影響を受けやすくなるという点では大きなデメリットです。
下げ始めると保有するのが怖くなって売ってしまったり、上がってくると買い増してしまったりと不合理な行動をとりやすくなります。
また自分で購入するタイミングや金額を決めるので、この決断は全て自己責任です。
必要以上に投資成績が気になったり、後悔が強くなるなど心理的に悪循環に陥りやすいという問題もあります。
この心理的な弱さは初心者に限らないので、自信がある人でも投資信託での運用を考える余地はあるでしょう。
まとめ
一般の投資家に馴染みやすい投資信託とETFの共通点と相違点について解説しました。
少額でコツコツ積み立てていける点では同じです。
その一方で運用にかかるコストや単価の調整、心理面のコントロールなど投資成績に関わる重要なポイントには違いがあります。
どちらが有利かは絶対的なものではなく、自分の投資スタイルなどに大きく左右されるものです。
いずれにしても長期投資が基本になるので、途中でコロコロ方針を変更するのは色んなコストがかかります。
つまりは最初が肝心。生活スタイル・投資スタイル・資金力…と、長期的な視点で考えて慎重に選択するようにしましょう。
てなとこで。
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