現金配当のETFは投資信託より不利か?VOOとSBIバンガードS&P500【税金コスト考察】
似ているようで結構違う投資信託とETF(Exchange Trade Funds)の比較については別のページで解説しました。
そこで分かったことは、どちらが有利かということではなく、あくまで個人の投資スタイルや重視するポイントによるということです。
特にETFは信託報酬や購入金額など、金銭的なコストを重視する投資家に向いてると言えます。
しかし投資したい商品タイプや運用期間によっては、「コスト面でETFが不利になる」という指摘があるのです。
そのポイントになるのが配当金。
このページでは配当金にかかる税金を踏まえた投資信託とETFのコストについて解説します。
1 配当金の受け取り方がポイント
投資信託でもETFでもファンドの運用成績によって定期的に配当金が支払われますが、その配当金の受け取り方が投資信託とETFとでは異なるのです。
投資信託の場合には、現金で支払われるタイプもありますが、基本的には自動で再投資に回され、投資信託の追加購入に充てられます。
これがETFとの比較において投資信託最大のメリットになると言っても過言じゃありません。
配当金の支払われ方は購入方法によって決まるので、投資信託購入時によく確認しましょう。
一方でETFの場合は通常の個別株の配当金と同様に現金での受け取り一択になります。
実はこの違いが長期的に運用した際のトータルリターンに響くという指摘があるのです。
2 配当金を受け取るETFに特有のコスト
信託報酬や購入タイミングの柔軟性など、コスト面に強いと思われているETFですが、実は投資信託にはないコストが発生します。
それが配当にかかる税金です。
また長期投資で複利の効果を最大化するためには、配当も再投資するのが基本なので、配当が現金で支払われてしまうETFには以下のようなコストもかかります。
①追加で購入する手間
②購入単位
(③為替コスト)
2-1 税金コストはバカにならない
投資信託でも配当金は出ますが、ぼくたちの手に渡ることはなく、ファンドの中に追加されていくので基本的に税金は発生しません。
もちろん積立の仕方によっては配当が再投資されなくなるから税金はかかるけどね
一方でETFの場合は配当金に対してザックリ20%近い税金がかかってしまうのです。
同じだけの配当を受けても毎回2割持っていかれてしまうのはかなり大きなダメージと言えるでしょう。
当然、投資信託でも最終的に売却した際には投資元本との差額に対して同じ率の税金がかかります。
しかし長期運用の複利効果とは、今まさに運用できる金額が多いほど有利になるものです。
つまり今税金で取られるのと、将来まとめて取られるのはイコールじゃないってこと
このことを考えると、多少信託報酬や購入金額が高くついても、将来のリターンで見れば、投資信託の方が優っているのではないかという話です。
2-2 その他のコスト
複利効果の観点から、配当金にかかる税金だけでも十分マイナスのインパクトは大きいですが、さらに細かいコストがついて回ります。
まず複利を活かすためには貰った配当金を再度同じETFの購入に充てなければいけません。
しかしこれが自動化できないので、購入タイミングを毎回自分で判断する時間的コストと心理的負担がかかります。
さらに投資信託の場合は金額指定で柔軟に資産を追加できますが、ETFの場合は個別株と同じ。単元価格分のお金がなければ買えません。
それなりに大きな額の配当を得ていれば問題ないですが、少額の投資の場合、配当だけでは最低投資額に届かず、ただ寝かせてしまうことにもなり得ます。
これは時間を味方に付けるべき投資にとって大きなマイナスです。
さらに外国株のETFの場合は為替コストがかかりますが、証券会社によっては配当金が強制的に円貨決済されてしまうところもあります。
米国株を買うために円で支払われた配当を再度ドルに換金しなければいけないので、往復で為替手数料がかかってしまうことになるのです。
外国株については証券会社によるからあくまでカッコ書きだけどね
3 実際のところ税金はどれくらい響くのか?
では本当に配当金を現金で受け取った時にかかる税金のコストは、ETFの経費率のメリットを無にしてしまうほど大きいのでしょうか?
そこで上記のETF特有のコストが発生する例で考えてみましょう。
米国株のインデックス投資の定番であるバンガード・S&P500・ETF(ティッカーVOO)とSBI・バンガード・S&P500の比較です。
いずれも米国株の代表的な指標であるS&P500に連動するインデックス運用の投資商品です。
VOOがETFでSBIバンガードS&P500はVOOの保有を通して間接的にS&P500を追う投資信託ね
それぞれのコストに関するデータをザックリ見ておきましょう。
ちなみに主要なネット証券ではVOOは手数料なしのフリーETFであり、SBIバンガードS&P500もノーロードなので、いずれも購入手数料はかかりません。
VOOにかかるコスト
経費率:0.03%/年
為替手数料1ドル当たり:25銭
配当に対する現地税:10%
配当に対する国内税:20.315%
SBIバンガードS&P500にかかるコスト
信託報酬:0.0938%/年
隠れコスト:?
為替手数料:0
配当に対する現地税:0%
配当に対する国内税:0%
VOOはさすがインデックスファンドのETFだけあって、経費率は最安クラスになっています。
また為替手数料については標準的な1ドル当たり25銭と仮定。
一方のSBIバンガードS&P500も投資信託としてはかなり低コストな信託報酬となっています。
そして日本円で投資するため、表面上は為替手数料はかかりません。
隠れコストが気になるところですが、こちらを含めても年率0.1138%程度になると予想されています。
なお隠れコストについては投資信託の選び方についてのページで解説しているので、併せてご覧ください。
投資信託にしてこの信託報酬で済むとなれば、ETFのコストが一見するとかなり高く映ってしまうかもしれません。
4 ETFにかかるコストの試算
大きなウェイトを占める経費率/信託報酬や税金が毎年かかるものであることから、年間でのコストで比較してみます。
10,000ドルを投資 1ドル105円 配当利率3% 長期運用を前提に20年保有とすると、VOOの購入にかかる経費はどうなるか。
4-1 為替手数料
まず為替手数料は10,000(ドル)×0.25(円)÷20(年)=125(円)
つまり1年あたり125円で、10,000ドル=105万円に対する比で見ると約0.0012%。
もちろん保有する期間が20年より短ければ比率は高まりますが、経費率/信託報酬に比べるとかなり些末なものです。
購入のタイミングにしかかからない固定費だから長期運用に与える影響は小さいんだよね
因みにドルを円貨に換金し直す場合には同じく1ドル当たり25銭かかるので、比率は約0.0024%になります。
日本人は円貨信仰が強く、円で保有したいと思ってしまいがちですが、正直その発想は微妙なところです。
「経済大国」「安全資産の円」などと言われますが、日本円は国内でしか通用しないもの。
そして韓国などの途上国にも平均賃金が劣るほど生産性の低い国であり、経済的なプレゼンスが高い国という地位も怪しくなっています。
そんな先行きの怪しい国でしか通用しない通貨しか持たないことの方が大きなリスクでしょう。
だいぶ脱線したけど、投資を機会にドルに換金したなら一部はそのままでもいいかもねって話
4-2 税金
米国株(ETF)の場合、キャピタルゲイン(値上がり益)に対しては非課税ですが、配当に対しては10%が課税されます。
そのため3%=300ドルの配当に対して10%の税金がかかるので、現地税は30ドル。投資額に対して0.003%。
そして特に何も対策をしなかった場合には、標準的な値として国内でも再度20.315%の課税がされるので、60.945ドル。
投資額に対して約0.0061%のコストになります。
5 最終的な年間コストは?
SBIバンガードS&P500の隠れコストを含めた年間のコストが0.1138%。
これに対して上記の条件でVOOを保有した場合の年間コストは以下のようになります。
経費率0.03% + 為替手数料(往復)0.0024% + 米国税0.003% + 日本税0.0061% = 0.0415%
結果は投資信託の信託報酬の半分以下でした。
様々なコストがのしかかるように見え、税率10%や20.315%は一見大きなコストに見えますが、元本の数%の配当にかかるものと考えれば意外と小さい。
しかも税金の項目で触れた通り、これは「何も税金対策をしなかった」場合です。
配当金に対する二重課税を防ぐための減税措置や、確定申告の方法によっては国内での課税率を下げられます。
また為替手数料についても最安の証券会社を使えば、この約10分の1まで抑えられ、ほぼ無いに等しいと言える水準まで下がります。
詳しい方法についてはそれぞれ別のページで解説しますが、年間コストを投資信託でかかるものの半分程度で済ませることも可能です。
もちろん配当利率が高くなれば税金コストも上がりますが、例え配当が3倍の9%になったとしてもトータルコストは0.0597%。
やっと半分強といったところですね。
まとめ やっぱりETFの方が優れてるのか?
S&P500の代表的なETFであるVOOとそれに投資するSBIバンガードS&P500のコスト比較を行いました。
結果としてコストについてはやはりVOO(ETF)の圧勝。
税金や為替手数料という見逃しがちなコストを含めても半分以下で済むのであれば、手元に残るオカネが多いVOOの方が有利に思えます。
確かに投資の金銭的コストに徹底的に拘るスタイルは非常に重要ですが、運用全体にかかるコストはお金だけではありません。
その他のコストとして紹介した、再投資の手間や資金を有効活用出来ない時間的なロスも金銭換算は出来ませんが十分コストと言えます。
日常の仕事や家事、プライベートなど様々なタスクに囲まれている中、どれだけこうした手間を掛けることができるか。
場合によっては全てを自動化してしまえる投資信託を選ぶ方が合理的な判断となる場合もあるでしょう。
結局はこの金銭的なコストの差を許容できるか、それぞれの投資スタイルによって変わる。これに尽きるのでしょう。
投資信託を検討していた人にとっては差が縮まることで後押しに、ETF派にとってみればやはりコスト面で有利なのだという確信になったと思います。
投資に割ける時間や資金などと相談して自分に合った方を選んで貰えればいいのでは無いでしょうか?
ちなみに他にもETFと同じ指数に投資する投資信託はあるので、このページの方法でコスト比較を行ってみるのもオススメです。
投資信託がここまでETFにコスト面で善戦する例はあんまりないけどね
てなとこで。
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