宝くじ当選者は幸せになるか?|自主納税者たちの悲しい末路

年末はセール、クリスマス、お歳暮など何かと要り用で「もう少しお金があれば…」って心理に陥りやすい時期。

そんなタイミングを見計らっての年末ジャンボ宝くじ、何とも狡猾な戦略ですね。

みんな何億円もの高額当選での一発逆転とその後の潤った生活を夢見て宝くじを購入します。

しかし実際にそんな高額が当選した人たちは当初の見立て通りバラ色の人生になるのでしょうか?

そんなとこで今回は、宝くじ当選で幸せになれるのかというお話です。

1 宝くじに当たっても幸せにはならない

結論先出しで行くと宝くじ当選で幸せになるのはほぼ無理です。

宝くじ当選者をめぐる事件は世界中で後を絶ちません。

親類縁者、友人からたかられるとか、投資銀行から怪しい投資までしつこい誘いが立て続けに来る、命を狙われるなんてデメリットはよく知られています。

しかし宝くじに当たっても幸せになれないというのは単にそういうデメリットがあるからじゃありません。

幸せは定量的な指標じゃないので、お金みたいに目に見える指標に頼りがちになります。

事実お金を持ってる人ほど幸福をお金の量と結び付けて考えやすい傾向があるようです。

宝くじを買う人の動機も「今より余裕のある生活」を夢見てるので、持たざる者も少なからず「幸せ=お金」と考えてると言えます。

もちろん個人差や国による違いは多少ありますが、ある一定ライン以上はお金を持っても幸福度にほとんど影響しません。

なので宝くじでかなりの高額に当選したとしても思ってるほど幸福度は上がらないのです。

2 宝くじ当選者が行き着く先

高額な宝くじ当選者が幸福になれないのは、お金から得られる幸福度に上限があるからだけではありません。

彼らが行き着く先が幸福な心理状態ではないからです。

これに関しては実際にその状況になってみないと実感できないでしょうが、本当にこれからも宝くじを買うか考える上で知っておく必要はあります。

宝くじ当選者が行き着く不幸な終着駅は以下の3つです。

①金銭感覚の変化
②幸福度が増加しなくなる
③虚無感

それぞれ順番に解説していきます。

2-1 悪銭はやっぱり身に付かない

現在、慎ましい生活を送ってる人であれば、「ほとんどは貯蓄に回して、毎月少しだけ贅沢するくらいにして…」と当選後の生活を想像します。

湯水の如くパーっと溶かしてしまうことなんて自分はしないと思うでしょう。それはあなただけじゃありません。みんな同じです。

でも実際ほとんどの人はそうなりません。というのも他の性格なんかに比べると金銭感覚は割と簡単に変わりやすい価値観だからです。

当たる前は「堅実に」と思っててもその通りに実行できる人はまずほとんどいません。

そうなると生活水準は否応なしに、しかも一気に上がります。

日常のささやかな幸せやプライスレスな幸せを手放して一気に物質主義(多いほど幸せって価値観)の世界へ入って行ってしまうのです。

2-2 慣れとともに幸せは消える

最初は贅沢な生活に心躍るかもしれませんが、高水準の生活にもすぐに慣れてしまいます。

ヘドニックアダプテーション(快楽適応)といって、いい状況にも悪い状況にもいずれ順応して、喜びも苦痛も感じにくくなるという心理特性があるからです。

高所得者が更なる金儲けを目指すのは、同じ水準ではいずれ慣れが生じて幸せを感じにくくなるからです。

もちろんビジネスそれ自体が楽しくて、たまたまお金がついてくるだけって人もいるけどね

自力でお金を稼ぐ実力の伴った実業家ならこれができるから救われます。

しかし宝くじ当選者の苦しいところは、その高額なお金に実力が一切伴ってないことです。

だから宝くじ当選者は自力で収入の水準を上げてくことが全くできません。

慣れるに従って幸せが逓減していって、最終的には幸せを全く感じなくなります。

我々一般人から見れば金持ちで幸せそうに見えますが、それは慣れてしまうまでの話です。

傍から見てるより本人たちは精神的に苦しい生活を強いられてることでしょう。

2-3 完全な自由は虚無感しか生まない

ただ働かなくても良いってだけで十分幸せじゃんか

物質主義になろうが金銭感覚が狂おうが、働かなくていいという自由だけで十分と考える人も多いでしょう。

しかし自由というのは相対的なもので、制限(仕事)があって初めてありがたみを実感します。

自由が嬉しいのは最初だけ、永続的に幸福度や満足度を提供してはくれません。楽しめる目標や目的が必要です。

アメリカ発祥のFIREブームを受けて、早期リタイアを目指す人が増えてきましたが、明確にやりたいことや人生の目的がないなら同じ理由でオススメはしません。

人生の多くの時間を仕事に費やしているため、盲目的に「仕事=人生の目的」になってる人がほとんどです。

そのため、いきなりそこから解き放たれても途方に暮れてしまいます。

FIREは達成に向かう途上でそれに気付き考える余裕がありますが、宝くじの場合はそれがありません。

そういう意味でFIREとは異なり不幸な虚無感に陥る可能性が非常に高いと言えます。

4 宝くじは国営だから公正?

ここまでは高額当選を果たしても幸せにはなれないってことを説明してきました。

そもそも宝くじで当選する可能性自体が低いので、お金の使い方として合理的とはとうてい言えません。

同じギャンブルでも競馬とかパチンコって何か怪しい感じなのに比べると国営宝くじってさも公正な感じがしますよね?

でも仕組みを見るとそうとも言えません。

4-1 パチンコの方が断然マシ

ところで「この事業は宝くじの収益の一部が使われています」っていうCM広告を見たことがあるでしょうか?

宝くじのお金で運用益が出てるわけでもないのに何故こんなお金ができるのでしょう?

実はお金が増えているわけではありません。

購入代金で集まったお金の50%近くを胴元が差し引いて作ってるお金です。

宝くじの仕組みはみんながプールしたお金をそのまま分け合うのではなく、半分を持ってかれた残りを買ったみんなで取り合っています。

期待利得で計算すれば単純に50%以下。つまり300円の宝くじは買った瞬間に半額の150円の価値しかなくなるってことです。

パチンコとか競馬の場合は期待利得が70~80%なので、一見すると怪しいこっちの方がまだマシです。

早朝からパチンコ屋の列に並ぶ人をバカにしてる人もいるかもしれませんが、彼らから見れば宝くじを買ってる人の方が算数のできないおバカさん。

ギャンブルを全くやらないぼくからすれば目くそ鼻くそだけどね

4-2 みんな税金って好きだったっけ?

ちなみに宝くじが公営と聞いてピンと来た人もいるかもしれませんが、性質的にはかなり税金に近いモノです。

橋や道路などのインフラ整備に充てられているので、用途もまさに税金そのもの

でも全員が払うわけじゃありません。期待値の計算もできない算数の苦手な人だけが払わなければいけない税金です。

そのため宝くじは「愚か者への税金」と呼ばれています。

ここで不思議に思うのが、世の中の大抵の人は「税金が高い!」と文句言ってなかったっけ?ということです。

税率50%なんて超高所得者でない限り課されることのない税率です。

それよりはるかに低い税率でも不満なのに、自ら進んで半分が国に取られる商品を買うのは何とも不合理なこと。

手取りになる時点で既に課税されたお金に、さらに高い税率を掛けることを許すのは愚の骨頂と言えます。

これまでは実態を知らなかった人も、これを知ったからには買いたくなくなってくれたんじゃないでしょうか?

しかし数字を書いた紙を売るだけで、売値の半額がそのまま懐に入るってボロイ商売ですよね…。

かかってるコストと言えば紙代と印刷代くらいのものです。ぼくもやりたい。

まとめ

季節柄、宝くじに関する不都合な真実について解説してみました。

どれくらいの利益が期待できるかを考えると競馬やパチンコより遥かに不利な闘いをしてると言えます。

100万円分買っても統計的には50万円しか戻ってこない計算です。

そんな過酷な条件の中、たまたま幸運にも高額当選を果たせたごく一部の人も幸せになることは出来ません。

幸せ=お金と考えてしまう。悪銭は身につかない。追加的なお金を自力で稼ぐことは出来ない。そして虚しさしかない。

ほとんど良いことはありません。

宝くじの実態を知らずにいる人は大嫌いなはずの税金を自ら喜んで払ってることにも気付きません。

まさに「無知はコスト」の言葉の通りですね。

愚か者だけに課される税金とはまさに言い得て妙。個人的にかなりお気に入りのフレーズです。

「宝くじは夢を買う」なんて言う人もいますが、そうやって夢を提供してもらわないといけないってのも何だか既に貧しい感じがします。

そういう人はそもそも幸せになる素質が無いのかもしれません。ちょっと毒づきました(笑)

幸せを自分で探したり見つけたりする力が無いってこと

てなとこで。

参考文献

センディル・ムッライタナン/エルダー・シャフィール(著) 早川書房