分散投資か集中投資か|利益とリスクの適性なバランスとは?

投資をめぐる議論でなかなか結論が出ないテーマの1つが分散投資集中投資のどちらが有利かというものです。

幅広い資産に分散することで資産が一気に0になるのを予防する、守り重視の姿勢が分散投資。

対する「これは上がる」という自信のある銘柄に絞って資産を注ぎ込み、大きな値上がり効果を狙う、攻め重視の姿勢が集中投資。

ザックリ分類するとこんな感じでしょうか。

こう言ってしまうと元も子もないですが、狙い・重視するものが違うので、そもそも同じ土俵に立たせて戦わせること自体にあまり意味はありません。

つまりリスク許容度、儲けと損失のどちらを取るかという個人の投資スタイルによって正解は変わるってことです。

とはいえ自分のスタンスを自信をもって明確にできている人もそんなに多くないかもしれません。

このページではそれぞれの立場の主張の要旨、そしてそのメリット・デメリットについて解説します。

投資スタンスを決定する参考になれば幸いです。

1 分散投資の格言「卵は1つのカゴに盛るな」

投資の初心者に対して推奨される基本スタンスは分散投資です。

1-1 分散投資の基本的な考え方とメリット

その要旨を端的に表したもはや古典とも言える有名な格言が「卵は1つのカゴに盛るな」というもの。

卵を全て同じカゴに盛ってしまうと、落とした時に一気に全てを失うことになります。

しかし複数のカゴに分けておけば、うち1つか2つのカゴを落とすことがあっても、いきなり全てを失うようなことにはなりません。

これと同じように投資資金を全て同じ銘柄に注ぎ込むのはリスクが大きく、暴落や倒産などがあった時には全財産を一気に失う可能性もあります。

またこの方針は銘柄の数だけでなく、同時に時間的な分散の必要性についても説いているものです。

「安く買って高く売る」は投資の基本ですが、今が高値か安値かは後になって振り返らないと分かりません。

つまり「今が安値だ!」とまとめて資金を投下したところが実は高値で、直後に下落なんてことが絶対に起こらない保証はないのです。

その点、積み立てるように時期を分散して購入すれば、高値掴みのリスクを緩和することができます。

1-2 分散投資の問題点・デメリット

ただ分散投資も良いことばかりじゃありません。分散投資には以下のようなデメリットもあります。

1-2-1 利益の幅が小さくなる

まず単なるメリットの裏返しですが、損失幅が抑制されるってことは同時に利益幅も制限されることになります。

10個の銘柄に10万円ずつ分散投資し、うち1つが大きく値上がりしたら、その1つに集中投資した場合に比べて単純に利益は10分の1です。

分散投資はリスク重視の投資スタンスで、損失を大きくしない代わりに利益も大きくは狙えない方法と言えます。

もちろん10個の銘柄に1000万円ずつ分散投資すれば、例えその内の1つの銘柄しか上がらなくても利益(額)はそれなりのモノ。

そういう点で分散投資はそれなりの投資資金力を持つ金持ちにとってのみ効果的な戦略と言えるかもしれません。

大多数の資金力のない個人投資家にとってはいたずらに儲けを薄くしかねない諸刃の剣ということです。

とはいえ人間は損失を利益の倍近く重視する傾向がある(プロスペクト理論)ので、ここはさほど大きな問題にはならないって人がいても不思議はありません。

しかしもう1つ、リスク管理の面でも分散投資はデメリットを負っています。

1-2-2 どこまで分散してもリスクは着いてくる

しかし分散の仕方によってはそもそも分散投資のメリットすら得られない可能性もあるというもっと大きな問題もあります。

業種の利益や成長を左右する外部要因は同じなので、例えばA銀行・B銀行…Z銀行と26銘柄に分散したとしても、多少の内部要因の影響による差はあっても株価の動きはほぼ同じです。

こんな風に分散投資のつもりが実質的には集中投資になってしまっている例は意外と多くあります。

なら銀行だけじゃなくて、電機メーカーや飲食業の株も購入すればOKかというとそれでも未だ怪しいところ…。

こういう方法なら先ほどのパターンより多少の分散効果はありますが、全て日本という船の上に乗っている点では同じです。

つまり為替変動や景気後退、金利水準に災害など、日本の広い範囲に影響する事柄が起きた際には皆揃って下落します。

なら海外も…とやっていっても結局は同じ事。金融危機やテロ、紛争・戦争などの影響は広く世界に及びます。

これと同時に時間的な分散をしようものなら、十分な分散効果が現れるより先に投資余力が尽きるのはほぼ明白です。

そもそもどこまで分散すれば十分、という明確な基準すらありません。

つまりここは個人のリスク許容度しだいということです。

1-2-3 管理に手間がかかりすぎる

もう1つ分散投資で問題になるのが、分散しすぎて管理に手間がかかり過ぎる点です。

国内外に広く分散し、20も30も銘柄を保有してると、株価動向に財務情報、IR情報、国際情勢、為替、関連ニュースに…とチェックするのにいくら時間があっても足りません。

結果どれも中途半端なマークになり、あちこちでガタガタと損失を出していってしまうという別のリスクが発生します。

これを先ほどの卵とカゴの例えで言うと、「手に持ち切れないほどのカゴに卵を分けて、結局すべてのカゴを落としてしまう」といった感じです。

いくら分散しても思うようなリスク分散効果が得られないにも関わらず、管理コストばかりが徒にかさんでしまうというのが分散投資の最大の問題でしょう。

こと日本人はバランス信仰が過剰なので、分散投資はその気質に合った方法と言え、好む人も多いはず。

しかしバランスと中途半端は紙一重

どんなものでも表と裏、メリットとデメリットを抱えている。そのことだけは念頭に置いておくべきでしょう。

2 集中投資の格言「卵を1つのカゴに盛って徹底的に見張れ」

分散投資に対するは集中投資です。

2-1 集中投資の基本的な考え方とメリット

冒頭で簡単に解説した通り、損失リスクよりも利益の増加を重視する投資手法というのが一般的な認識でしょう。

だから「一攫千金」「生きるか死ぬか一世一代の大勝負」というギャンブル的な印象を与え、これが投資=危険という誤解を与える元凶にもなっています。

しかし分散投資との対比で考えると、集中投資にも評価できる点があるというのが新たな認識です。

投資対象を限るということは、それだけ1つの資産の精査にかけられるリソースが増えるとも考えられます。

徹底的に分析し、確信を持てた少数の銘柄に集中して資産を投資し、その後の動向もしっかりマークし続けるということです。

卵とカゴの例で言えば「卵を1つのカゴに持って徹底的に見張れ」といったところ。

従来の見方では、ただ「1つのカゴに盛るだけ」でしたが、見張りやすいという点に利を見出だしたと言えます。

集中して資産を投下することになるので、否応にも適当な企業分析を行うようなこともできなくなるはずです。

分析により利益の見込みと安全性(財務健全性)の双方を確認した資産に資金を集中することで、利益の拡大と同時に損失リスクの低減も狙えます。

ろくに財務分析もせずに「上がりそうだから」という根拠のない自信だけで全財産を1つの銘柄に突っ込むような従来のイメージはかなり解消されたんじゃないでしょうか?

ちなみに例えでは1つのカゴと言っていますが、管理できる現実的な範囲に収めれば1つの銘柄に絞り込む必要はありません

2-2 集中投資の問題点・デメリット

しかし万能そうに見えるこの方法にも問題がないわけではありません。

その最大の問題点が財務分析の限界です。

まず企業の財務分析が高度なこと、他の投資家と差をつけるポイントのように思ったかもしれません。

しかし実際はこれも基本中の基本で、論外の投機家(単なるギャンブラー)を除いて皆やっています。

特にファンドマネージャーなど一応プロと呼ばれてる人たちは、個人投資家と同等かそれ以上のスピード・量で情報を得て分析しているのです。

しかし誰もが投資で成功してるわけじゃありません。むしろその大半の人が失敗してます。

どれだけ詳細な情報が手元にあったとしても分析できるのは過去の実績だけで、企業の今後の動向、そしてそれが株価に与える影響はあくまで推測でしかないからです。

たまたまなら当てられるでしょうが、ずっと当て続ける自信がある人などいないと思います。

逆にどんなビジネスが当たるのか、全財産をかけるほどの自信があるなら自分でビジネスを起こした方がよっぽど確実かつ大きく稼げるのでは?

つまりどれだけ詳細に分析したところで、利益も損失回避も全く約束されるわけじゃないってこと。

さらにおまけで問題点を挙げるなら、徹底的にカゴを見張るほど投資で失敗しやすくなるという問題もあります。

投資における最大の敵は自分の心理であり、これがコントロールできなければ投資での成功はまず望めません。

そして投資を失敗に招く心理は、投資について考えるほどに首をもたげてくるのです。

このことについてはリンク先の記事で解説してるので、興味のある人こちらもご覧ください。

3 第3の道 卵を1つのカゴに持って「忘れろ」

分散投資も集中投資もダメなら結局は何が正解なのでしょう?それについて最後に解説します。

正解というと「必ず儲かる」的なニュアンスを含み不適切なので、現状での最適解・妥協案とでも言っておきましょう。

どんな資産クラスに資金を置いたとしてもリスクをゼロにする方法はありません。これは現金預金だろうと同じです。

つまりこの点について考えることはムダなので、それ以外の分散投資・集中投資における問題点について考えます。

3-1 分散投資の問題点 資金と保有資産管理

1つの企業から、複数企業、複数セクター、国内外の企業という風に範囲を広げるほど、資産全体を脅かす事象の規模は大きく、かつ発生確率の低いものになります。

企業業績の悪化 → 金利や為替の変動 → 大規模災害 → 世界金融危機や大規模テロ → 宇宙戦争

つまり分散によってゼロとまではいかないまでも、損失を被るリスクの低減を図ることは可能です。

しかしそれには膨大な資金が必要になります。個人の投資余力で宇宙戦争以外の心配がないレベルまで分散することはまず無理でしょう。

さらに分散すればするほど管理が難しくなり、何1つ適切な売買ができなくなってしまうことも問題です。

肝心の利益や損失の確定ができないようでは、何のために投資してるのか分かりません。

3-2 集中投資の問題点 先行きの予測の限界と投資家心理

一方の集中投資の問題点はまず財務分析に絶大の信頼を置くことのリスクです。

膨大な勤務時間の他、時には睡眠時間も捧げてるプロですら上手くいかない分析や予測に基づいて、集中的に資金をつぎ込むことはやはり危険。

丁寧に分析してきても最後の最後、肝心要の今後の業績が単なる予想でしかないなら結局はギャンブルと言っても過言じゃありません。

そして資金のほとんどを投資してるのだから、「徹底的に見張れ」など言われなくても株価チャートや四季報、経済ニュースに釘付けになるはずです。

そういう行動が判断を誤らせる危険な心理にも繋がり、結局は失敗します。

3-3 最適解 分散して忘れる

利益が約束されることがない以上、リスクの低減を主眼に行動する方が合理的と言えます。

限られた投資資金で広く国内外の複数の資産に分散し、かつ管理の手間がかからないシンプルな方法が最適解。

それが投資信託というたった1つのカゴです。外から見れば集中投資だが、中身を見れば分散投資という優れものです。

管理の手間や資金は心配せずにリスクを低減できる、つまり分散投資と集中投資の両方の利点を手にすることができます。

投資信託には非常に多くの商品がありますが、運用成績など気にせず安心して忘れられる性質のものにすべきでしょう。

投資信託の選び方・選ぶ際のポイントについては別のページで詳しく解説していますが、結論だけ言ってしまえばインデックスファンド1択です。

株価指数に連動する機械的な運用なので運用成績など気になることもなく、カゴごと金庫か屋根裏など目につかないとこに安心してしまっておけます。

予測などするだけムダ、なるようにしかならないというある種の達観したスタンスです。

あとはどこまで分散を拡げるかだけ考えればよく、それが日本株なのか米国株なのか、ヨーロッパや新興国を含む世界全体なのか。

この辺りは個人のリスク許容度などによって決めればいいところですが、米国が無難でしょう。

というのも世界全体に分散したファンドとして信託報酬などのコストがやや高くなる割に、結局は大半がアメリカ株で構成されているからです。

気になる人は各ファンドのページを見てみてください。どれも構成銘柄の上位はほぼ同じアメリカの大企業で占められてるはずです。

企業の規模・時価総額が大きいから仕方ないんだよね

まとめ

投資手法に関する議論の定番である分散投資と集中投資について解説しました。

それぞれ重視するポイントが違うので、2つを並べてどちらが優れているかを議論することにあまり意味はありません

利益と損失、どちらを自分は重視するのかで選択するのが合理的です。

ここで解説した内容は、投資に対するスタンスが定まっていない人が今のところ無難とされる方法について理解・納得し、実行する手助けという位置づけでしょう。

リスク回避を狙う分散投資は資金と管理の問題があり、かつどこまで行ってもリスクはゼロにはならないというデメリット。

利益の拡大を狙う集中投資は、財務分析に信頼を寄せるが実態は予想でしかなく心許ない上に、投資心理を悪化させるというデメリットがある。

これら双方が抱えるデメリットを「緩和」する(解消ではない)方法として、分散されたインデックスファンドに集中投資して、放っておくというのが妥協案的な最適解です。

インデックスファンドと言っても調べてみると色んな証券会社から色んな条件で販売されていてどれにすれば良いか悩みます。

投資信託を選ぶ際のポイントを押さえ、国内なのか、米国なのか、先進国なのか、世界なのか、自分の好みに合わせたファンドを選択しましょう。

そして投資してることなんか忘れてしまいましょう。

てなとこで。