【サンクコストバイアスとは?】過去の投資は何も生まない|懐古主義が原因で生じるムダ

皆さんは常に投資をしていて、その投じたリソースに常に思考や行動を制限されています。
このように言われても「株なんかやってない」と思う人も多いでしょう。
もちろんこのサンクコストバイアスという心理が顕著に現れるのは金融投資のシーンです。

しかしこのバイアスが生じるのは株式投資に限ったことではありません。
多くの人が日常のあらゆる場面で過去の投資に引きずられてしまっています。
このページでは日常に潜むサンクコストバイアス(埋没費用)の問題点とその対策について解説します。

金融投資の大損失を生む

株式投資をすると、買った時の値段より上がることもあるし、当然下がることもあります。
投資をするに当たって大事なのは勝つことより負けないこと。引き分けと勝ちだけを狙うのが鉄則です。
でもこの定石が分かっててもなかなか上手くできないのが人間の心理というもの。ここにサンクコストバイアスが隠れています。
因みに人間の心理的な弱さが投資の失敗に繋がるということについて、詳しくはこちらのページで解説しています。

「買った値段より何パーセント下がったら売ってしまう」という(いわゆる損切り)ラインを決めたら機械的に実行すべきです。
これに従えないと、いかに分析やロジカルに考えても全てがムダになってしまいます。
しかし多くの人は「上がるかもしれない…」とルールを破って持ち続け、完全に手遅れになったタイミングで売るという行動に出てしまうのです。
このように根拠なく下がった株を持ち続けることを塩漬けといい、大損になってから耐えられずに売ることを狼狽売りと言います。

そしてルール通りに行動できない理由の1つがまさにサンクコストバイアスです。
小さくても損失を出して離脱するということは、そのお金だけでなく投資をするまでにかけたリサーチの労力や時間もムダだったと結論することになります。
しかしこのまま持ち続けることで上がれば、それらをムダにすることもなくなるというわけです。

株式の分析手法にテクニカル分析というお手軽テクニックがありますが、これは過去の推移をベースに今後の株価の推移を予想します。
しかしこれから株価が上がるか下がるかは、過去の推移とは無関係に決まるもので、正確に予測することは出来ません。

これと同じで過去にどれだけのお金や時間を投じていたとしても、その後の推移は無関係です。
投資をしてる人はサンクコストバイアスに気を付けて、これまでのお金や時間を惜しむより、これから先を失わないように考えるようにしましょう。

ギャンブルもサンクコストの代表

株式投資がピンとこない場合はギャンブルの方が分かりやすいかもしれません。
ギャンブルでも同じように過去に投下したお金や時間について同じようなことを考えてしまいます。
なかなか当たりが来なくても、「今止めたらこれまで打った分が…」とか「この後席に着いた奴にすぐ当たりが来たら…」なんて考えてしまうのです。
負けが込むほどに引くに引けなくなってしまうのはギャンブラーに典型的な思考であり、これにもサンクコストバイアスが関係しています。

しかしギャンブル好きな人(リスク選好、割引現在価値が高い)人ばかりをバカにしてもいられません。
「表、表、表ときたからそろそろ裏のはず…」なんて考えはギャンブラーじゃなくてもあるあるだと思います。
言うまでもなくコインの裏表の結果は独立で前回の結果には全く影響されません。
確かに4回連続表になる確率は16分の1ですが、次のコインが表の確率はあくまで2分の1です。
これはコインに限らず、パチンコのこれまで打った数もそうだし、投資のテクニカル分析にも同じことが言えます。

いくら打とうが次に当たりが来るかはそのパチンコ玉だけに依存し、これまで打った玉数や時間は関係ありません。
投資のことで解説したことと同じで、これまでの損を惜しむ寄り、これから先の損を出さないように考えることが重要です。

日常に潜むサンクコスト

投資やギャンブルとは無縁で生活してる人も多いはずで、これまでの例は想像しにくかったかもしれません。
しかし一般の人でも想像しやすく、かつ多くの人が経験しているサンクコストが存在します。
それがテレビの視聴時間、飲み会などのシーンです。

30分くらい観て「あんま面白くないかもな…」って思うこともありますが、惰性でそのまま最後まで観ることが多いのではないでしょうか?
実はこれも今まで観た分の時間の投資に引きずられるサンクコストの現れなのです。
テレビの場合は無料なのでコストは時間だけですが、映画館や読書などはお金を払っている分、より見切りをつけにくくなります。

また会費を惜しんでつまらない飲み会に居続けるのも同様です。
しょっちゅう似たようなメンバーでいると話の内容も似たり寄ったりで新鮮な刺激や得るモノはほとんどありません。
ドライに思われるかもしれませんが、そこから数時間もムダにすることを考えたら帰った方が生産的です。
人間関係を気にする向きもあるかもしれませんが、そもそもさして満足度の高くない人間関係なら無くても問題ありません

愚痴ばっか言ってる人と一緒にいるとか害の方が大きいしね

ブログやnote、YouTubeなどでもこれまでかけた労力が惜しくて質の低いコンテンツでも消しにくくなるという経験もしています。
どうにか良くならないかとリライトを繰り返しますが、根本のテーマが悪ければ改善は見込めません。
あれこれやってみるために時間もかかりますし、SEO的に他の良質なコンテンツの足を引っ張るだけです。

このように投資家やギャンブラーに限らず、テレビ視聴から人間関係まで日常の様々なシーンにサンクコストは潜んでいます。
直感的に得るものが何もないと感じたら、そのまま続けていてもまず得るものはありません。
これまで投じたリソースは何も生まない、そしてこのまま続ければより多くのリソースを失う
このことを常に念頭に置いておきましょう。

サービス利用時に気を付けたいサンクコスト

また様々なサービスにおいて、このサンクコストバイアスを悪用しているケースがあるため、騙されないよう注意が必要です。
代表的な例として格安航空(Low Cost Carrier)のブッキング手続きがあります。
LCCは旅行費用を安価に抑える上で非常にありがたいシステムですが、意外と安くならない場合があるので要注意です。

航空券のブッキング手続きってやたら長い行程がある気がしませんか?
セキュリティのため正確な情報を得る必要もあるでしょうが、一部にこの時間の埋没費用の考え方の応用(悪用)も含まれているのです。
航空券の比較サイトなどで提示される金額は安いのに、手続きの最後に謎の加算が発生して一気に代金がアップすることがあると思います。

かなり騙されたような気がしますし、料金も決して安くないのですが、渋々そのまま払ってしまう人が多いと思います。
既に最安の航空会社を探すのに時間をかけてる上に、長いブッキング手続きにも時間がかかっているからです。
これをキャンセルして、また航空会社のサイト選びから始めるとなると相当な時間のロスになってしまいますからね。

確かに時給思考で考えれば、選び直す時間が節約できるコストに比して高くつくということもあるでしょう。
しかし時給で考えたからと言って誰もがその浮いた時間を使って給料を自在に増やせるわけではありません。
ムダなお金を払わないようにすることは、ムダに働く時間を減らすことに繋がります。

ほかのLCCでも同じようなコストが発生する場合もあるんだけどね

こうした手続きに時間をかけさせ、引き返しにくくする手法は不動産契約など様々なサービスに隠れています。
繰り返しになりますが、そのまま進んでも過去の損失は損失のまです。進むことでさらに傷口を拡げることにならないかよく考えましょう。

まとめ

過去の投資を過大に評価し、惜しむ心理を作る埋没費用(サンクコストバイアス)についてでした。
お金の埋没費用はけっこう有名な話なので、何となく知ってたって人も多いかもしれません。

しかし時間の方はお金と違って具体性やトレードオフの関係が分かりにくいので見過ごされやすい傾向にあります。
お金の例は株式投資やギャンブルなど一部にしか関係ない話ですが、時間は誰もが経験する共通の事象です。
お金にしても時間にしてもサンクコストの威力は想像してるより遥かに大きく、避けるのが難しい厄介な存在です。

しかも更に厄介なことに、サンクコストバイアスにはあまり効果的な対策がありません。
そもそもコストを発生させないようお金や時間の使い方の選択に注意することが肝心です。
またゼロベースで考えて「今から改めてそれに時間やお金を使うか?」と自問することも有効な対策になります。
その答えがノーならそのまま続ける価値はありません。

最後に紹介したLCCのブッキングや不動産の契約など手続きに時間をかけさせ、サンクコストを生み出す手法が沢山あります。
そういうモノに触れた時、このバイアスの存在を知っていれば上記のような自問をし、適切に対処することが出来るはずです。
世の中はあなたの財布からお金や時間を奪おうと躍起になっています。ぜひとも警戒心を常に高く持って生活してください。

てなとこで。