「お金持ちになるには一流に近付く」は正しい?|よくある哲学の科学的問題点
お金持ちなりたかったらお金持ちに近付くのがいいと言われます。
何となく自分の方が稼いでる人と比べててもお金持ちにはなれそうもありません。
単なるイメージ論的な側面もないこともないですが、こういう個人の経験に基づく哲学というのも案外バカには出来ないモノです。
このページでは「お金持ちになりたければお金持ちに近付く」という哲学の真偽、メリットとデメリットの両面について解説します。
メリット1 認識を変えるには環境を変える
お金持ちになるための行動も含め、これまでの習慣や考え方を変えるのに最も即効性のある方法は環境を変えることです。
類は友を呼ぶと言いますが、基本的に似た考えや価値観を持った人と一緒にいる方が心理的には安定し安心感を得ます。
言葉を選ばなければぬるま湯ってことね
そして近くにいる人、自分が重要と思う人の好みや価値観を良いモノと思い込みやすいので、結果的にそうした価値観が強化されがちです。
このような傾向を社会的証明と言います。
行動の強化・継続のためにはコミットメント、つまり宣言が役立ちますが、環境によってはあまり効果を発揮しません。
人間はなるべく一貫性を保ちたいと思ってますし、周囲からも有言不実行な人間とは見られたくありません。
コミットメントにはそうした周囲の監視の目を作り出す効果があります。
しかし新たな行動目標が既存のコミュニティの価値観に反する場合、その重要性を理解して真剣に監視し、不実行を諫めてくれることはないでしょう。
例えばラーメンにハンバーガー、アルコール大好きなグループの中でダイエットやジム通いを宣言しても「へーがんばってー(白目)」くらいの反応のはず。
そして挫折しても「やっぱりねーこっちの方が楽しいんだよー」と帰還(?)を歓迎されるだけだと思います。
つまりこれまでと同じ環境に身を置いた状態で自分の考えや行動を大きく変えるのは難しいということで、お金持ちになる場合も同じことです。
因みに「マインドでお金持ちになれるの?」と思う人もいるでしょうが、これが意外と重要で大きく左右します。
このことについてはこちらのページで。
メリット2 成功者から学ぶのが最速
誰もが成功するための方法を知りたいと思うでしょうが、そのためには実際に成功した人から聞くのが効率的です。
また成功は失敗と二者択一のモノではなく、失敗の先にあります。
そのため成功した人というのは成功するまでに膨大な失敗をしているものです。
多くの人は成功した方法を聞きたいと思うことでしょう。
しかし成功までの道のりや経験談は表に出てくるので、わざわざ近くに行く必要はありません。
むしろあまり大っぴらには語られない失敗経験を聞くことにこそ意義があります。
ここで注意しなければいけないのが成功の要因や失敗の原因はパーソナライズされたものということです。
つまり人には個性や特性、得意・不得意、そしてタイミングの問題もあり、全く同じ方法を実践したからといって必ずしも成功するわけではありません。
例えば「新興市場の小型株に資産全額ぶっこんで大儲けした」と聞いたとします。
小型株の乱高下を受け流すメンタルを持ち合わせてない人は、いくら勉強や分析をしていようが下げに耐えきれず売ってしまい失敗するかもしれません。
重要なのは成功や失敗の根幹にあるマインドやエッセンスの部分です。
それこそ先の例で得た「自分の苦手な方法で努力しても上手くいかない」というのも失敗を回避する上で重要なエッセンスですね。
デメリット1 相対性 比べる対象で評価が変わる
ここまではお金持ちや成功者に近付くことで成功に近付くと考えられる理由について紹介しました。
しかしお金持ちに近付くことにはデメリットも存在します。
それはお金持ちに近付くことで相対性によって自分が劣って見えてしまうということです。
有名なエビングハウス錯視というのを用いると分かりやすいです(下のイラスト参照)。
同じ大きさの円(収入)でもより大きな円(高収入)に囲まれている方が、小さな円(低収入)に囲まれているより小さく見えます。
お金は特に地位財と言われますが、これは自分が満たされているかを同一の環境にいる人との比較によって判断するものです。
つまり自分がそれなりに稼いでいたとしても、近くにいる人が比にならないほどの大富豪だと自分がしょぼく見え、それがストレスになってしまいます。
そんな大富豪も環境によっては低収入扱いであり、この戦いは終わりのない軍拡競争みたいなものです。
年収1,000万の世間的に見れば高給取りの人も年収数億の人の集まりでは肩身が狭い思いをするみたいね
もちろんそういう環境を逆境として向上心に繋がる人もいるかもしれません。
しかし大きな差があるほど悪性嫉妬と言われる好ましくない精神状態に陥りがちです。
お金持ちの悪い側面などに目が行きやすく、批判的な視点を持ってしまいやすくなります。
これは合理化という心理作用で、願望と叶わない現実の間のギャップを埋めるために願望の方を否定するというもの。
これは精神を守るための防御反応ですが、「金持ちは性格が~」とか「世の中にはお金で買えないものが~」とか思い出したら悪い兆候です。
自分よりお金を持ってない人といれば、逆に優位に立てるのでこういったことは起こりません。
悪く言えば現状維持や向上心の無さですが、プラスに考えれば充分・満足に達したと言えます。
現状維持も意外と捨てたもんじゃないってことはこちらのページで解説しました。
逆に上を目指すのは向上心・前進であると同時に、常に不満足の状態とも言えるでしょう。
結局はどちらが自分の性格に合ってるかということになります。合わない環境に居続けるのは苦痛が大きいので、見極めが重要です。
デメリット2 お金と幸福が結びつきやすい
高所得者はお金が幸福に結びついていて、お金で幸福を計る傾向が強いと言われています。
自分の得意分野で戦おうとするのは自然ちゃ自然だよね
価値観は自分が所属する組織や集団の影響を色濃く受けることは既に解説しました。
お金持ちになるため、そのためにそのマインドを身に付けることを目的に近付いたので願ったり叶ったりに思えますが、問題が大きく2つあります。
まず1つ目が幸福に上限ができてしまうということです。
お金と幸福に関する研究は沢山ありますが、どの研究でも年収がある水準まで到達すると、それ以上は幸福度に影響しなくなると結論づけられています。
ちなみに幸福感が上がらなくなる水準は国によって多少は異なりますが、概ね年収700万~1,000万円程度で頭打ちです。
これは意外と身近な数字ですよね。
ここに到達した以降も幸福=お金と考え続けるので、つまり幸福感が頭打ちになってしまうのです。
もう1つがフラストレーションの問題です。
より多くのお金を稼ぐことはそう簡単に実現できるものじゃありません。
強くお金を意識してなければ、その他の快楽ややりがいといった尺度でも幸福を計ることができます。
しかし「お金こそが幸福の源泉だ」と考えていると、幸福を得る手段がお金しか無くなってしまいます。
そしてそのお金を上手く稼げないとなると幸福感をアップさせることが出来なくなってしまうのです。
多少稼げたとしても周りにいるのはもっとお金を持ってる幸せな(そう見える)人たちです。
お金と幸福が結びついてしまうと、相対的に劣る環境では幸福度まで劣って見えてしまいます。
本当は周りのお金持ちもそれほど幸せじゃないかもしれないんだけどね
先程のエビングハウス錯視の例の左の環境に移れば相対的に強者になる上に、お金と幸福が結びついていない可能性が高いので、幸福の尺度をお金で計らなくて済みます。
精神的にはかなり健全な状態を保てるでしょう。
分が生活する環境をコントロールすることによって何を尺度に幸福を計るかを判断することができるということです。
隣の億万長者じゃないですが、高級住宅地に住まず質素な生活を心掛けてる「隠れお金持ち」はこうした側面を知っていて闘いから離れてると考えられます。
お金持ちになりたいのか幸福度を高めたいのか、その目的や価値観にも依るので、結局は自分のスタンスを明確にすることですね。
近付くにしても物質主義者にならないよう、自分の価値観・軸をブラさない姿勢が必要になります。
解決策としての読書
読書の魅力やその効果的な方法については別のページで解説していますが、この問題の解決策としても読書は有効です。
お金持ちに近付くことの最大のメリットは成功・失敗という貴重な経験について学べることにあるとぼくは考えています。
昔なら社交の場などで直接会わない限りこうした話を聞くことは出来なかったでしょう。
しかし現代は本やYouTube、テレビなど様々なメディアが発達していて、直接接触しなくても十分に貴重な情報を得ることが出来ます。
つまりわざわざ近くに行ってデメリットまで同時に食らうのではなく、離れたところから要点だけ学び取るという作戦です。
実際に近付こうと思ってもそんなに簡単なことじゃなく、かけた労力や時間に見合うだけのメリットを享受できるかは怪しいところ。
本なら1,000円から高くても3,000円程度の低コストですぐに手に入りますし、マインドが合わないと感じれば別の成功者に簡単に鞍替え出来ます。
既に伝手がある人はさておき、これから行動しようという人はこちらに視点を移した方が合理的かもしれません。
まとめ
「お金持ちになりたかったらお金持ちに近付くこと」についての考察でした。
一流の価値観や生活を知ることで学びとモチベーションになる点で有効な手段だと言われているものです。
行動やマインドを変えるには環境を変えるのが特効薬になることは間違いないので、この点においては正しいと言えるでしょう。
しかしただ乗ってるだけでステップアップできるエスカレーターのような楽な環境ということではありません。
その環境が適していて上手く戦えるかは性格や目標に大きく左右されます。
自分が弱者に見える環境を逆境や課題と捉えられる人には有効です。
一方で「常に上を目指せ」的なマインドが苦手な人にとっては相当に苦痛な環境でしかありません。
また幸福=お金という価値観を内包するのもあまり良いことじゃないです。
本来幸福感を得る手段は多様なはずですが、自ら「お金のみ」と絞ってしまうのは自ら首を絞めているようなもの。
まず押さえておくべきはお金は幸福の一部でしかないってことです。
お金と幸福の関係についてはこちらのページで詳しく解説しています。
それを踏まえた上でもお金持ちになりたいって人は上流階級の世界に飛び込んでみてもいいかもしれません。
てなとこで。
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