一度上げたら最後?生活水準が下げられない理由【授かり効果】

収入が増えたらまずは貯蓄に回す額を確保するというのは貯金術の定番。

生活水準を一旦上げると元に戻すのは難しいとよく言われているからです。

「後で必要になった時に貯金に回せばいい」と思いがちですが、実際は削りどころが思いつかず上手く進みません。

何となくなら感覚的に分かりそうな気もします。

しかし実際に上げてみないと何がそんなに難しいのか実感はなかなか伴わないでしょう。

このページでは、一度挙上がった生活水準が元に戻せない理由について、研究等でも確認されている心理的な特性を基に解説します。

授かり効果(保有効果)とは?

授かり効果というのは、自分が所有したものの価値を高く見積もってしまうという心理特性です。

これが具体的にどのような影響を及ぼし、また判断を狂わせるのか、様々な研究が行われています。

子供を対象にした実験

子供を対象に、2種類のおもちゃを提示し、どちらが欲しいかを尋ねた後でランダムに配布します。

欲しかったおもちゃを貰えなかった子供に、欲しかった方との交換を持ち掛けても7割が交換に応じませんでした。

一度自分のものになると、そんなに欲しくなかったものでも魅力的に見えてしまい手放すのが惜しく感じられるのです。

元々欲しいと思っていたモノ以上に強い魅力を感じるというのが面白く、かつ威力の大きさを物語っています。

大人を対象にした実験

授かり効果の影響は子供だけでなく大人を対象にした実験でも確認されています。

バスケットボールの人気の試合のチケットの抽選に漏れた学生に「最大いくらまでチケット購入に出せるか」と聞くと平均は175ドルであった。

一方で同じチケットに当選した学生に「最低いくらでなら売却するか」と聞くと平均で2700ドルとかなりの高額を提示した。

オークションやフリマアプリで売り手が提示する価格が相場を無視したふっかけ価格になりやすいのも授かり効果の影響です。

このように自分の持ち物の価値を高く評価する授かり効果は、大人か子供かに関わらず誰もが影響を受けます。

人間は損失が嫌いな生き物

この授かり効果は人間の最も根元的かつシンプルな心理で説明できます。

それが損失回避性と言われるもので、読んで字のごとく損失を嫌う性質のことです。

これはプロスペクト理論とも言われ、人間は損失を利益の2倍近くとかなり過大に評価します。

つまり1000円の損の心の穴を埋めるには2000円の利益がないといけないということです。

一度手に入れたモノを手放すことも金銭を失うことと同じように損失と捉え、過剰に反応してしまいます。

これが授かり効果のメカニズムです。

「魅力が強くなった」と説明しましたが、正確には失う代わりに大きな補償を求めてるに過ぎません。

つまり最初に紹介した交換の研究も、プロスペクト理論に基づき価格や魅力が倍以上のモノとの交換を持ち掛けたら応じる人が増える可能性もあります。

極端だけどルービックキューブとSwitchの交換なら応じそうだよね

授かり効果はモノに限らない

そしてこの授かり効果はモノだけでなく、生活という形のないものにも同じく働きます。

冒頭で触れた「生活水準を上げてはいけない」の理由です。

各所得水準の人がどのくらい幸福度を感じるか、という予想を様々な所得水準の人にさせる実験があります。

人は収入の増加による幸福度の上昇を高く見積もるが、実際にはさほど影響がない、ということを検証するのが目的でした。

実際にその事も確認されましたが、授かり効果の視点でも興味深い傾向が現れてるとぼくは思います。

それは高所得者が低所得者の幸福度を過剰に低く見積もった、ということです。

高所得者はお金で高い生活水準を手にしています。

広い家や高級車、高級レストランでのディナーやビジネスクラスでの快適な旅行、海辺でのバカンスなどモノからサービスまで様々。

低所得者の幸福度を予測するに当たり、それらを失うことを想像し、非常に大きな損失と捉えたということです。

失うという方向で想像すると、それを手に入れられない実際の不幸より過大に評価されたというのは人が損失を恐れていることの証拠。

そして漠然とした全体の生活水準というものにも授かり効果が生じるということが分かります。

お試しキャンペーンの罠

一定期間お試しで無料のキャンペーンを見掛けることが増えましたが、これには注意しましょう。

これは授かり効果を利用(悪用)した上手い仕掛けの罠だからです。

お試しとは言え、仮にも一度それを体験すると自分のものになったと錯覚して授かり効果が発動します。

つまり生活水準の上昇です。

すると今度はそれを手放すことが非常に大きな損失に感じられ、結果として本契約に移りやすくなります。

テレビショッピングの健康食品が先駆けで、今ではアマプラなどのストリーミングサービスやその他のサブスク、スマホのデータ容量まで様々です。

世の中新たなサービスやグレードアップに溢れています。

本当にいい商品やサービスに出会うチャンスでもあるので全くデメリットばかりじゃないですが、むやみなお試しは気を付けましょう。

まとめ

上がった生活水準を戻すのは難しいという話でした。

自分の持ち物の価値を過剰に高く見積もってしまう授かり効果がその原因です。

損失を恐れる人間の基本的な性質が、その根底には潜んでいます。

サンプルやお試し期間のように、仮に手にした生活水準であっても人は自分のものになったと認識してしまうもの。

つまりむやみやたらに無料だからと手を出すと、いつしか後戻り出来なくなってる可能性もあります。

昔からよく言う「ただより高いものはない」ってやつです。

自分は大丈夫などと過信せず、大して必要のないものまで手を出すようなことはしないようにしましょう。

収入が増えたらまず貯蓄に回す。これをぜひとも念頭に。

てなとこで。