【重要か緊急か】正しい優先順位とスケジュールの立て方|過信と挫折の悪循環を抜ける

忙しいビジネスマンならスケジュール管理は必須のスキルです。
でもこのスケジューリング、下手を打つと効率を上げるどころか逆効果になってる可能性があります。
効果的なスケジューリングのためには、ただ小手先のテクニックを取り入れるだけでなく、行動科学など人間の特性について理解しなければいけません

このページでは、スケジュール管理の効果、やりがちなミス、正しいスケジューリングの方法について解説します。
毎日詳細なスケジュールを立てるのがメンドウだと感じる人向けの代替案も紹介してるので、参考にしてください。

1 スケジュール管理の効果・メリット

スケジュール管理で得られること、メリットは多岐にわたります。
具体的には以下の2点です。

①脳のリソースの有効活用
②1日の満足度のアップ

1-1 脳のリソースをムダにしない

言わずもがなですが、スケジュールの最大の目的は次にやるべきことの明確化、すなわち記憶のアウトソースです。
記録する媒体が山ほどある現代において「次に何をやるか?」なんて些末な記憶に脳のリソースを割くのは合理的とは言えません。

また作業と作業の合間に「次は何をするか?」というのを考えることは認知リソースはもちろん時間のムダ遣いでもあります。
1日のタスクの合計が24時間にならず、「時間が消えた」と感じてる人も多いでしょう。
原因は複数ありますが、このタスク間の接続がスムーズにいかないことによるロスもその1つです。

そしてタスクにはそれぞれ適した時間があり、適切に配分しなければ時間もリソースもムダにしてしまいます。
ムダな決断を削減する方法はスケジュール以外にもあり、詳しくはこちらのページを参考にしてください。

1-2 スケジュールで満足度が向上

普段からTo Doリストなどでタスク管理してる人は多くチェックが付くこと達成感を感じているでしょう。
スケジュールも同様で、様々な予定を熟したと実感することで大きな満足感が得られます。

しかし達成感とは別に、自分の人生を自分の意志でコントロールしてるという自己コントロール感を実感できるというのも大きな要因です。
この効果は非常に大きく、スケジュールの設定と達成によってその日感じた充実感が8倍も持続するという研究もあります。

どんなに楽しいことをしても、その喜びは通常1週間くらいしか持続しないんだってよ

仕事の日はスケジュールを立てているが、休日は特に予定を立てていないというケースが多いでしょう。
しかし休日の満足感が平日の仕事のモチベーションに繋がることから、休日こそ綿密なスケジュールをすべきなのです。

2 スケジュールのよくある失敗

会議とか取引先とのアポとか、人との約束はもちろん、自分が今日熟すべきタスクも明確にしといた方が作業効率は上がりやすくなります。
でもこのスケジューリングで多くの人が陥りがちなワナがあり、そこに嵌ってしまうとスケジュールが逆に牙をむくことになりかねないので注意が必要です。

2-1 非現実的なスケジュール

ありがちなミス、それは無謀なスケジュールを組むことです。
満足感・達成感を高めたくて、多量のタスクを課す理想的過ぎるスケジュールを組んでしまう傾向は誰しも持っています。
自分の作業スピード・効率を過信している上に、想定外の事態が起きる可能性も含まれていません。
これは行動科学の分野では「予算の誤謬(ごびゅう)」と言われる現象です。
未来の自分に過度で楽観的な期待を抱いてしまう傾向にはちゃんと科学的に名前がついてるんですね。

明日から本気出す!が実現することはないってね

つまり誰しもこの思考に陥りやすいということです。
この結果として出来上がるスケジュールは、予想というよりは理想・妄想に近い内容と言えます。

2-2 失敗が生む悪循環

そんな感じで立てたスケジュールの通りに進められるってことはまずあり得ません。
そして人間は失敗経験が積み重なるほど委縮して、悪循環に落ちてしまいます。
NBAのとあるバスケットボールチームがオフシーズン中に行った練習の成果がこれを如実に証明しています。
通常よりリングを小さくしたゴールで練習した結果、試合本番で正確性が上がるどころかミスが増えてしまったのです。
練習でのシュートミスの連続がメンタルを削り、自信を無くしてしまった結果です。

失敗は思ってる以上に心理的な負担が大きく、もう2度と失敗したくないという恐れが行動にも制限をかけてしまいます。
それは初めから到底達成できるはずのないスケジュールだったとしても同じことです。
こうしてスケジューリングに挫折してしまうと行き当たりばったりが増えて、満足感どころか効率性すらもガタガタになってしまいます。

3 効果的で現実的なスケジューリングとは?

ここからは正しく効果的なスケジューリングのポイントについて解説します。
ポイントは以下の3点です。

①スケジュールは詳細に
②バッファ
③実力の範囲内

3-1 詳細にスケジュールする

まず第1のポイントはシンプルに「詳細に」立てることです。
よくある勘違いですが、詳細なスケジュールと過密なスケジュールは別物で、後者は失敗が目に見えてます。
正しい方法は前者であり、詳細なスケジュールとは作業の中身や時間を細分化して厳密に立てることです。

例えば「13時~19時 勉強」としてたところを
・13時~14時半:会計の勉強
・14時40分~14時50分:休憩・教材準備
・15時~17時:プログラミングの勉強…
というように中身とか行動を詳細にしていきます。

出来れば達成する目標まで入れましょう。
勉強に限らずシャワーとか食事、昼寝の時間まで1日の行動を出来るだけ細かく入れていきましょう。

3-2 バッファを設ける

第2のポイントは予定にバッファを設けること。
先に紹介した例で勉強と休憩の間に10分ずつ隙間がありますが、これがバッファです。
これがあることによって多少前後の予定がずれ込んでも予定全体が狂うことはなくなります。

このバッファの必要性は自身の体験から実感したものです。
予定が狂い始めた途端その通りにこなすのは絶望的になり、結果スケジュールに従うのを辞めてしまいます。
それを防止する意味で必ず設定しましょう。

このバッファをとる長さは前後のタスクの性質によりけりです。
ボリュームや想定外が起きる可能性、自分でのコントロールのしやすさでフィッティングしていくのがいいでしょう。

3-3 自分の実力を把握する

バッファもさることながら、予定が失敗するかどうかの命運は自分の実力を正確に把握できてるかに掛かっています
スケジュールにズレが出ないように注意すると、意外に1日で出来ることは少ないということに気付きます。
熟すのは自分なのに理想は自分の実力に基づかないっていうのもなかなか面白いですよね。
叶わないからこそ「理想」なんでしょうか。

自分の実力を知るためには、できないことを実感するのが一番の近道なので、短い制限時間を設けてタスクをこなしてみましょう。
こちらのページでそんなメソッドを紹介しているので、参考にしてみてください。

4 アイビーリーメソッド

毎日詳細にスケジュールを立てるのは結構手間がかかります。
スケジューリングに負担を感じる人にオススメしたいのがアイビーリーメソッドです。
ぼくもスケジューリングをするのは休日だけにしています。
それは仕事の時間はコントロールしにくく、バッファがいくらあっても足りないと実感したからです。
そのため仕事の日はシンプルなこちらのメソッドを代わりに使用しています。

4-1 アイビーリーメソッドとは?

アイビーリーメソッドでは、優先順位の高い上位5~6個のタスクを並べたリストを作ります。
そしてそれを上から順に熟すという非常に単純なものです。
その日終わったものをリストから消すと下位に合ったものがランクアップしてきます。
そこに同じ数だけ下にタスクを追加して…を繰り返すのみです。

ここで重要なのは、「終わらなかったタスクを気にしない」ってことです。
今日中に終わらせるべき目標として掲げてるわけじゃなく、単に直近の優先順位を可視化しただけに過ぎません。
「トップの最重要課題が終わったならそれでいいじゃないか」ってスタンスを持つことで不達成感とそのストレスを回避することが出来ます。

また今一番やるべきことが明確なるので、他のタスクのことが気にならずに目の前のことに集中できるという点もメリット。
スケジューリングの代替案としてこちらを試してみるのもオススメです。
因みにアイビーリーメソッドをそのまま適用するのはちょっと微妙なところ。
この点については、以下のページで解説してるので、参考にしてください。

4-2 多くの人は優先順位が出来てない

「優先順位を立てるだけ」と簡単に言いましたが、実は多くの人はここが出来ていません。
タスクは重要性と緊急性の尺度で4つに分類するスティーブン・コヴィー氏のメソッドが有名です。
そしてこの4つの内で最も優先順位が高いのは、重要度・緊急度の両方が高いモノ。

ここまでは良いですが、次に多くの人が優先するのが重要ではないが緊急なことなのです。
緊急性は視野の狭窄も相まって物事を大きく見せるので重要性と混同してしまうのも仕方ないことではありますが、一度冷静に立ち止まって考えましょう。
急ぎと言われて作った資料が結局ほとんど会議で使われることが無かったなんて経験は誰しもあるはずです。
些末な問題は時が勝手に解決してくれることも往々にしてあり、「そのタスクを潰すのに時間を使ってたらムダになってたな」と思うことはよくあります。

しかし重要性はそう簡単には変わりません。だから2番手は緊急じゃないが重要なことを持ってくるようにしましょう。
せめてプライベートくらいはこの順序で処理したいものです。
よほどキモが据わってない限り職場では難しいかもしれませんが、そもそも緊急事態を生まない予防は多少できると思います。
仕事を効率的に進める方法としても解説しましたが、自分のリズムの内で先手を打つことを心掛けましょう。

まとめ

スケジュール管理のよくある失敗と正しいスケジューリングのポイントについて解説しました。
より高い達成感を求め、自分の能力の過信して、想定外の事態が全く考慮されてないスケジュールはほぼ確実に失敗します。
その失敗経験は行動を委縮させ、確実に達成可能な課題しかやらなくなるか、目標を設定すること自体を辞めてしまいます。
自分の実力を把握して予備の時間を設けた、詳細だけど過密ではないスケジュールを立てることが重要です。

ものすごい集中して作業してたとしても、進度以上に時間が経ってることが少なくありません。
自分の本当の実力から目を背けず向き合いましょう。あなただけが遅いのではなく、みんな同じようなものです。
仮に他の人より極端に自分の処理能力が低かったとしても、背伸びすることに意味はありません。
誰かとの比較より、自分の実力を最大限に活かすことを大事にしましょう。

「時間が無い」と感じてる人は多いですが、自分の実力を過大評価することで時間が消えたように錯覚してるだけという可能性もあります
思ってるほどできることは多くないので、実力の把握はかなり重要です。
明日の自分も今日の自分と使える時間、実力ともに全く変わりません。予算の誤謬、未来への多大な期待は禁物です。
限られた時間で意味のあることを処理するためにも優先順位の立て方の基本から見直しておきましょう。

スケジュールの失敗による行動の萎縮や優先順位が出来ないことは、先延ばしの原因でもあります。
多くの人が悩むことだと思うので、その点でもこのページで紹介した内容は大きな意味があるでしょう。
因みに先延ばしの原因はこの2つだけではないので、悩んでいるという人は詳しくはこちらのページをご覧ください。
てなとこで。

参考文献