iDeCoとつみたてNISA|どっちが優先?両者の違いを解説

老後2000万円問題や新型コロナウイルスをきっかけに一般の人にも身近なものと認識されるようになった投資。

莫大な資金力がある人はさておき、今から投資を始めようと思い立った人にまずオススメされるのがiDeCoNISAでの運用です。

※iDeCoの運用対象は投資信託なので、条件を揃えて同様の商品を扱うつみたてNISAを念頭に解説します。

いずれも税金面で優遇措置のある方法ですが、資金が限られてる人の場合はどちらを優先した方が良いのでしょうか?

優先順位は人により異なりますが、その判断のためには両者の違いについて知る必要があります。

このページではiDeCoとつみたてNISAの相違点について解説するので、どちらから始めるか、その判断に役立てていただければと思います。

1 税制面のメリット

まず投資の手始めにiDeCoやNISAがオススメされる最大の理由は税金の優遇措置があるからです。

しかし一口に税優遇と言っても、その方法はiDeCoとNISAとでそれぞれ異なります。

1-1 積立額が所得控除の対象になるのはiDeCoだけ

NISAにはないiDeCo特有かつ最大の違いでかつ最大のメリットと言えるのが、積み立てた金額が所得控除の対象になることです。

所得は所得税や住民税の計算のもとになっているので、iDeCoで拠出することによりこれらが還付されます。

還付される割合は個人の所得水準によって変わりますが、単純に以下の簡単な式で得られる額が返ってくるので計算してみてください。

毎月の拠出金額 × 12 × (所得税率 + 住民税率) = 還付額

例えば月1万円拠出し、所得税・住民税率がともに10%の場合は以下のとおりです。

10,000円 × 12 × (0.1 + 0.1) = 24,000円

運用せずに定期預金にしておくだけでもこれだけの還付を毎年受けられるので、利息と考えればなかなかのメリットです。

資産運用や投資にギャンブルのようなイメージや苦手意識を持ってる人にとっては非常に魅力的なんじゃないでしょうか?

ただし美味しいばかりじゃないのが世の常です。具体的には運用期間後の税金の取り扱い。

そのことについて以下で解説します。

1-2 税金計算の対象になる金額が違う

iDeCoもNISAも非課税になるのは運用期間中のみというのは同じです。

しかし適用期間が終了した後、どのように課税されるかという点が異なります。

1-2-1 iDeCoの場合

iDeCoで積み立て運用したお金を受け取る際には、その総額が課税計算の対象になります。

受け取り方によって適用される計算式は異なりますが、ポイントは拠出した元本も含めて計算される点。

このことを指して「iDeCoは単なる税金の先送り」と解説されることもあるのです。

もし単なる税金の先送りにしかならないなら、iDeCo最大のメリットとされる所得控除が実は全くメリットじゃない可能性も出てきます。

実際のところ、この所得控除がどれほどのメリットをもたらすかは人によって大きく異なります。

iDeCoの受け取り時の税金計算の方法、そして先送り説については別のページで詳しく解説してるので参考にしてください。

1-2-2 NISAの場合

NISAの場合、期間中の分配金はもちろんのこと、期間内に売却してしまえば値上がりで利益が発生したとしても税金はかかりません。

また期間後に売却したとしても課税対象になるのは期間終了時の価格から値上がりした部分のみです。

2020年中に40万円積み立て、期間満了を迎える2040年に60万円になっていた場合、売却時に税金が発生するのは60万円からの値上がり部分になります。

40万円から60万円までの値上がり益(20万円)は期間終了後も課税対象にならないということです。

つみたてNISAの20年という非課税期間は長期投資と呼ぶには短いので、売却するシーンはさほど多くありません。

しかし期間中の値上がりをカウントされないので、課税口座に移行したとしてもメリットは生き続けます。

ただし値下がりしてた場合、課税口座(一般や特定)で運用するより多く課税されることになる点には注意が必要です。

期間満了時の評価額が30万円になってたら、ここからの値上がり益に税金がかかるよ

2 投資にかかる手数料

iDeCoにもNISAにも手数料は存在しますが、かかり方は両者で大きく異なります。

まずNISAの場合はシンプルに投資信託にかかる手数料がそのままかかるだけです。

具体的には以下の2つ。

①購入時の手数料と
②運用期間中の信託報酬(+隠れコスト)

今は購入時手数料が無料の(ノーロード)ファンドが一般的で、特にNISA口座での取引手数料を無料にしてる証券会社が多くあります。

しっかり比較してこういう証券会社を選択すれば、かかるのは信託報酬のみと考えて差し支えありません。

一方のiDeCoは運用期間中の信託報酬はもちろんのこと、その他に信託銀行や運用機関などに払う様々な手数料が毎月発生します。

iDeCoの対象となる金融商品は全て購入時手数料がかかりませんが、NISAの方でもノーロードファンドが一般的なので、もはやメリットとは言えません。

ちなみにiDeCoは開始時に払う事務手数料もあるので、運用開始が遅くなりトータルの期間が短くなるほど月当たりのコストは高くなることに…。

NISAもiDeCoも口座開設からとなるとそれなりの期間を要しますが、iDeCoは特に注意が必要です。

iDeCoの場合、口座開設のために職場の承認印が必要で、会社の規模によっては貰えるまでけっこうな時間がかかります。

このことも一応覚えておきましょう。

iDeCoにかかる手数料については別のページにまとめているので、そちらも参考にしてください。

3 投資できる金額の上限

iDeCoとNISA、いずれの制度も無際限に投資できるわけじゃありません。

それぞれ年間の拠出上限額が設定されています。

まずつみたてNISAの場合ですが、こちらは全員共通で年間40万円です。

いわゆる一般NISAとは二者択一で、どちらかの制度しか適用を受けることはできません。

NISA枠でETFや個別株を購入してしまうと、その年はつみたてNISAとして投資信託を購入することはできないので注意しましょう。

一方でiDeCoは人によって上限金額が異なり、具体的な額は雇用形態(自営業・サラリーマン・公務員など)や企業型確定拠出年金の有無などによって決まります。

給与天引きや口座からの自動引き落としで払い込むのが普通なので、あまり気にする必要はありませんが、過払いに対するペナルティ(手数料)もあるので一応気にしておきましょう。

そのこともiDeCoの手数料について解説したページに記載しています。

やや話が逸れましたが、毎月家計から投資に回せる金額の大きさを基準に制度を選ぶというのも1つの選択です。

4 流動性 現金化できる安心感

iDeCoの最大の特徴は拠出額の全額所得控除ですが、もう1つの大きな特徴が流動性の低さです。

流動性とは簡単に言ってしまえば、現金化の簡単さのことを言います。

金融商品で運用していたお金を定期預金に変更することは可能ですが、そのお金を引き出すことは(※原則)60歳まではできません。

(※ 障害の認定や本人が亡くなった場合には給付が受けられます)

つまり一度iDeCoに拠出してしまったお金は緊急の必要があっても使えないってことです。

一方でNISAで運用している資産の売買は自由。つまり何時でも好きな時に現金化することができます。

もし値下がりしてたら損失を確定することにはなるけどね

急なお金の要りようにも柔軟に対応できるのはNISAということです。

予想できない生活の変化は誰にもあり得ることで、そうした心配がある以上は安全策で流動性を確保したいと思う気持ちも分かります。

しかし運用の基本は長期投資、お金が必要になる度に現金化してるようでは一生実現できません。

ある程度はライフイベントの見通しを立て、確実に投資を継続できる金額を設定すれば心配する必要はないはずです。

安全第一で行きたいって人にとっては重要なポイントかもしれませんが、iDeCoのメリットを考えると過度な流動性志向も考え物かと。

ちなみにiDeCoの最低投資額は5,000円です。これくらいなら換金できなくしても問題ないのでは?

まとめ

税優遇措置のある2つの制度、iDeCoとNISAの2つを比較してみました。

かかる手数料はiDeCoの方が圧倒的に多いですが、拠出金額の全額所得控除という大きなメリットを喰うほどじゃありません。

所帯を持つ人にとっては流動性の低さが大きなデメリットに見える一方で、気楽な独身者やDINKS(子なし共働き夫婦)にとっては大した問題じゃないでしょう。

金額の問題さえクリアすれば売買のタイミングや運用成績を気にせず、60歳までほったらかしでOKというのもメリットかもしれません。

というのも投資の運用成績は気にするほど悪くなっていくものだからです。

この投資と心理の関係については以下のページで解説しています。

何となくiDeCo寄りの意見が多くなりましたが、NISAにもメリットはあります。

雇用区分にも拠りますが、上限額はNISAの方が大きく余計な手数料もかかりません。

流動性も高いしね

結局は何を重視するか、どんな投資スタイルを選択するか、投資に回せる資金がいくらあるかなど、個人によって正解は異なるってことです。

それなりに資金があるなら、iDeCoで長期投資をしつつ一般NISAで個別株の売買益を上げるといった使い分けも考えられます。

いずれにしても自分の投資環境や考え方をしっかり整理することが肝心です。

そして投資は時間が命。かけた時間がものを言う世界なので、一刻も早く取り組むことをオススメします。

てなとこで。