長期投資期はリスクが低い?|3つのメリットと安全性に関するよくある勘違い

資産形成を行う上では長期投資が基本と言われています。

投資家と言うと市場が開いている間中ずっとパソコンにかじりついて頻繁な売買をしてるイメージを持つ人もいるかもしれません。

これらはデイトレードやスイングトレードなどと言われる比較的短期で行う投資手法です。

対する長期投資というのは、そういういかにも疲れそうな神経戦的な投資スタイルではないので心理的な負担は軽くなります。

しかし長期投資のメリットはそういう心理的な負担を緩和するだけじゃなく、投資の成否にも大きく影響する部分が多くあるのです。

一方で「長期投資はリスクを低下させる」と言われますが、これは事実なのでしょうか?

事実だとして果たしてどういう理屈で長期投資がリスクを低下させることになるのか。

このページでは長期投資にまつわる事実と誤解の両方について解説します。

長期投資のメリット① ドルコスト平均法

投資において「安く買って高く売る」と言うのは基本中の基本の原則です。

儲けを出したいんだからこんなの当たり前過ぎてわざわざ言うまでもないと思う人もいるかもしれませんが、実はこれが非常に難しいこと。

何故なら今が高いのか安いのか、それは後から振り返ってみないと分からないからです。

チャートで過去の推移と比べてみたところでほとんどの場合では全く当てにはならず、正確なことは分かりません。

過去の水準から見てかなり高くなってるからもう高値だと思ったのに、そのまま下がらず上がる。

逆に相当下がったから底値かと思いきやどんどん下がる。

こんなことが頻繁に起こります。天井、底というのはあくまで事後に付く呼び名でしかないのです。

ちなみにチャートを一生懸命に分析する投資手法をテクニカル分析と一応は確立されてますが、この手法の信者は総じて良い成績は残していません。

このテクニカル分析に向けられる批判として「バックミラーを見ながら車を運転しているようなもの」というものがあり、ぼくのお気に入りです。

やや脱線しましたが、時間的に分散せず一時点に集中して投資することは、高値掴みのリスクが高くなります。

そこで有効になるのがドルコスト平均法で、日本語では単純に定額購入法と呼ばれることもある方法です。

方法は非常にシンプルで、毎月など決まった期間に決まった「金額で」買い増しをしていきます。

こうすることで相対的に高い時期は購入数量が少なく、安い時期は購入数量が多くなり、平均単価を抑えられるのです。

方法を見て分かる通り、ドルコスト平均法は短期で売買を繰り返す投資スタイルには馴染みません。

長期にわたって積み立てるように投資を続けるスタイルでこそ実現できるものです。

長期投資のメリット② 複利の力

投資の最大の敵が自分の心理だとすれば、投資の最大の友は時間と言えます。

ちなみに投資に人間の心理が与える影響については、別のページで詳しく解説してるので参考にしてください。

なぜ時間が投資の味方かと言えば、それは複利の力を最大限に活かすために必須の要素だからです。

複利とは元本だけでなく発生した利息に対しても利息が発生するというもので、その増加速度は元本のみに利息が生じる単利の比になりません。

仮に年利4%で100万円投資したとして、単利の場合は倍の200万円になるまで25年かかります。

しかし利息を全て再投資に回して複利で運用したとすると18年で到達してしまうのです。

ちなみに複利で運用した場合に投資元本が倍になるまでにかかる期間は「72の法則」と言われるもので簡単に分かります。

方法は簡単で、72を利率で割って求められる数が倍になるまでにかかる期間です。

先ほどは年利4%でしたが、これが6%なら72÷6で12年で元本が倍になるってこと。

この利息の再投資、複利の力の強大さは相対性理論で有名な物理学者のアインシュタイン氏も認めているという有名な話もあります。

氏をもって「宇宙で最もパワフルな力」「人類最大の発明」と言わしめたほどです。

逆に言えば長期にわたって投資を行わなければ、この時間や複利の恩恵に与かることはできません。

頻繁に売買を繰り返す短期のトレードはもちろん、「お金が十分貯まるまで…」と先延ばしにすることも資産運用では不利ってこと。

1円でも多く、今すぐに、そして長期的な視点で、というのが力を最大限に利用する投資の鉄則と言えます。

長期投資のメリット③ 適切なリスク許容度

投資は利益を目指すより損を避ける戦い、すなわち敗者のゲームと言われています。

これはチャールズ・エリス氏がテニスの試合を例に解説した有名な投資に関する理論です。

プロテニスの試合の場合、勝つためには良いショットが必要な一方で、アマチュアテニスの試合の場合は相手のミスショットが勝ちに繋がります。

投資とはまさにアマチュアテニスの試合と同じで、勝とうとするよりも負けないことが重要である。

もっと言うと負けないようにする以上のことは無意味どころか、自爆で損失を拡大させるミスショットになりかねないということです。

これを考えると損失回避性を高めること、すなわちリスクを避けることは投資にプラスに働くように思えます。

しかし過度に損失回避性が高まることは投資にとっては大きなマイナスです。

というのも損失回避性が高まり過ぎると必要なリスクすら取りにくくなるからです。

確かに新興市場などギャンブル性の高い商品のリスクは論外ですが、成熟企業の株やインデックスファンドは敗者のゲームの戦術の範囲内です。

どこまで行ってもリスクがゼロになることは絶対にありません

それなのにいたずらにリスクを回避し過ぎてリターンを薄くすることはローリスク・超ローリターンという不利なバランスになるだけ。

そしてこの厄介な損失回避性が何をキッカケに上がるかというと、投資の短期的な成績、特に下落局面を頻繁に目にすることなのです。

どんな株やファンドでも一貫して上昇することも、下落することもなく、上下を繰り返しながら推移していきます。

つまり運用成績を気にして頻繁に確認するほど下落してるタイミングに触れやすく、損失回避性を高めてしまうのです。

短期リターン(日または月単位)を見せられたグループは「プラスが薄い代わりにマイナスも小さい債券メインの商品」を好む傾向がありました。

しかし同じ商品ラインナップを長期リターン(年次以上のスパン)を見せられたグループは、短期で見ると上下幅がやや大きかった株式メインで構成される商品を好んだのです。

また別の実験でも自分の保有ポートフォリオの運用成績を通知される頻度が高い人ほど株式の構成比率が低くなっていました。

最も頻繁にチェックしたグループでは41%だったのに対して、一番頻度の少ないグループでは70%と非常に大きな差が生まれました。

投資で一番大切な20の教え/ハワードマークス著/日本経済新聞社

つまり長期投資と割り切って運用成績も気にせず、放っておけば損失回避性は適正なレベルに収まり結果的に上手くいくってことです。

長期投資の注意点 確実にリスクが低下するとは言えない?

メリットも多く、かつ短期投資に比べると堅実に見えて全面的に支持されているような印象のある長期投資にも注意点はあります。

長期投資についての誤解があるのも事実で、勘違いしたまま手放しでいると資産を減らすことになりかねません。

このページの締めとして注意すべき長期投資によくある勘違いについて解説します。

「短期投資はリスキーで、長期投資ではリスクが下がる」というのが一般的な認識ですが、果たしてこれは正しいのでしょうか?

結論から言うと「部分的には正しいが、必ずしもリスクが低下するとは言い切れない」と言ったところです。

長期投資第1のメリット「ドルコスト平均法」の項目でも説明した通り、長期の投資は投資タイミング(時間)の分散が図れる点で高値掴みリスクは軽減できます。

また長い目で見ると株価指数は上昇傾向にあるため、どっしり構えて短期の下げを無視すれば利益を出せる、すなわち資産減少リスクが低い点でも長期投資は評価されています。

減らさないどころか大きく増やしやすいとも言われてるね

しかしこの「長い目で見ると」というのが曲者で、多くの個人投資家を誤解させる原因になっています。

というのも「長い目」とは、100年・200年単位の超長期で見た場合のことを言っているからです。

個人が生涯で投資できる期間が100年を超えることはほぼなく、大概が20年から長くても60年程度でしょう。

短期投資というと数日から数か月程度のイメージでしょうが、株価指数の一貫した上昇を前提にリスクを語るのであれば20年程度は短期の部類です。

超長期視点で株価の推移を見た場合、20年の取り方によってはまるまる不況期に属し、投資期間の終わりに資産がマイナスということも十分ありえます。

自分が投資してる期間が運悪くこういうタイミングに当たってしまった場合は、むしろ長期投資として持ち続けるほど損が積み重なるわけです。

不況期なら途中に現れる短期での上げを狙って利益を確定していくスタイルの方が資産は増えていきます。

空売りって手もあるけど手軽じゃないね

とはいえ不況期に当たったからといって短期投資に執心して神経をすり減らしたり、投資を完全に諦めてしまう必要はありません。

自分の投資した資産を子や孫の代まで継続して運用していくことを考えれば、超長期での資産運用・投資が可能だからです。

下落局面で買い続ければ平均取得単価はどんどん下がるので、上昇に転じた際には一気に利益を伸ばすこともできます。

自分個人としてだけでなく家族や子孫のためと視野を拡げて考えれば、やはり長期投資が一番優れた手法なのかもしれません。

まとめ

長期投資がオススメされる理由、その利点について解説しました。

長期投資は高値掴みリスクを軽減し、複利(=時間)の力を最大限に活かし、不適切な投資行動に出ることを防止することができます。

しかし一般的な理解とは違い、短期投資よりもリスクが低下するとは断言できません

大局的に見た株価指数の上昇傾向に対すれば、1人の人間が一生で投資できる期間はごくごく短期と言えます。

指数はこれまで一貫して上昇してきたわけではなく、途中で大きな下げ期間を何度も経験してきています。

自分の投資期間がその真っ只中にあるとすれば長期で投資した結果、資産がマイナスになるリスクも十分あるわけです。

「長期投資=ほったらかしで楽々かつ安全」などと慢心せず、年に1回程度のスパンで運用状況を確認し、リバランスや一部の利益確定なども適宜行っていく必要があります。

よく考えてみれば「これだけやれば損なく確実に儲けが出る」なんてうまい話はあるわけないのです。

ここだけ見たらまるで詐欺だよね

それなりの利益を得ようとしたらそれなりのリスクもあるし、それなりに手を入れていく必要もある。言われてみれば至極当然のことでしょう。

てなとこで。